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ケイテック株式会社 – 安くてエコなLPガス車を酒田から全国、海外へ。

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ケイテック株式会社 – 安くてエコなLPガス車を酒田から全国、海外へ。

◆取材:綿抜幹夫 /文:渡辺友樹

オビ ヒューマンドキュメント

ケイテック株式会社01代表取締役 小松 豊 ケイテック株式会社02 福島県いわき市のタクシー会社に納車され、ジャンボタクシーとして毎日成田空港まで往復送迎している(左下に写っているのが、取り付けられたLPガスのボンベ)。 ケイテック株式会社03 提携販売店に出庫するためにKITは1台1台チェックする。 ケイテック株式会社04 車両代の高いハイブリッド車より、価格の安いベース車両でLPG HYBRID車に改造した方が車両経費と燃料代を節約できるとして、タクシー業界に旋風を巻き起こしている。 ケイテック株式会社05 軽自動車用も豊富にラインナップ。ミライースはLPガス1L¥95で約20kmの走行が可能。また、LPガスとガソリンの両方を使用して走行した場合は約700km以上、無給油走行が可能となる。 ケイテック株式会社06 ミャンマーで製作・運行中の車両。

「整備工場に仕事をと考えたら、やはりモノづくりしかない」─。

ガソリンに比べて燃料費を4割ほど削減でき、排気ガスもきれいなLPガス車。LPガスは東日本大震災時にも供給が途切れなかった、災害にも強い燃料だ。山形県酒田市のケイテック株式会社は日本で唯一、自社オリジナルのLPガス改造キットを製造している。同社を率いる小松豊社長に聞いた。

LPガスとの出会い

 2004年から、個人事業として自動車整備用工具の販売を行っていた同氏。輸入工具を中心に商品をトラックに積み、整備工場を回ってメカニックに売っていた。そんな同氏に、輸入業者が「工具ではないが、売ってみないか」と持ち込んだのが、海外製のLPガス改造キットだった。

 今からおよそ5年前のその頃、ガソリン代は高騰を続けており、代替燃料に関する話も聞かれるようになっていた。同氏は、「外国ではLPガス車が広まっていて、知らないのは日本人だけと知りました。キットの取扱説明書も英語で面白いと思い、試しに取り付けてみたんです」と振り返る。LPガス改造キットは、イタリアや韓国、タイ、フランスなどにメーカーがある。そのとき持ち込まれたものもイタリア製で、外車に合うように作られていたため、はじめはエンジンがスムーズに吹け上がらなかったり、スピードが出なかったり、エンストしたりと不具合が多かったという。同氏は試行錯誤しながら改良を加え、最も問題があったコンピューター部分も、オーダーメイドで日本車に合うものに替えた。こうして事業として手がけることを決めたが、日本でLPガス車への改造を行っている業者は現在でも6社、そのうちオリジナルのキットを製造しているのは同社のみだという。

 

LPガスの特徴

 LPガスは、日本でもタクシーで広く利用されているが、キットを取り付ければタクシーに限らず、LPガスで走らせることができるようになる。キットを取り付けた車はガソリンとLPガスのどちらでも走れる状態になり、通常は単価の安いLPガスを使う。燃費はガソリンとほぼ同じだが、1リットルあたりの価格は、LPガスは約90円、ガソリンは約150円と、燃料費を約4割削減できる。メリットは燃料費だけではない。排気ガスがプロパンガスなため、環境にも優しいのだ。CO(一酸化炭素)の排出量は70%~90%も減少するという。営業車が活躍する企業やタクシー会社にとっては、コスト削減と環境対策が同時にできる優れものだ。

 LPガス車への改造費用は1台50~60万円ほどで、LPガスの充填についても、タクシーなどが使っていた既存の充填場を使えるほか、新たに建てる場合でも1千万円ほどで済むという。

 

苦しむ整備工場に仕事を

 同氏はLPガス車を普及させることで、自動車整備工場の減少に歯止めをかけたいと考えている。技術者や後継者の不足により、整備工場は閉鎖が進んでいる。自動車整備もIT化が進んだ現在、パソコンを触れる整備工のいない高齢化した整備工場は事業を畳むしかなく、さらに、チェーン店が車検を丸抱えして安く行っていることも、整備工場には逆風となっている。

 工具販売で整備工場を回り、こうした状況を目の当たりにしてきた同氏はこう語る。

 「彼らに何か仕事を、と考えると、それはやっぱりモノづくりしかない。LPガス車への改造は、車体を切ったり、LPガスのボンベを取り付けたりと、整備士が技術力を発揮できる。LPガス車の普及は、彼らの商売にも繋がるんじゃないかと思ったんです」

 同社では、LPガス車事業をフランチャイズ展開しており、販売店にしかキットを卸していない。さらに、提携するのは整備工場に限定している。複雑な申請や書類作成などを同社が行い、実際の組み立ては整備工場のメカニックが行う体制だ。現在、全国で15社と販売店契約を結んでいる。

 

 LPガス事業を始めたとき3名だった同社の社員数は現在8名に増えたが、それでも事業内容に比べれば小規模だ。「小規模で低コストに行っていくためにフランチャイズ展開という方法を採った」といい、販売店や提携している工場を合わせると、同社のLPガス事業に関わる人数は100名を越える。「販売店のおかげ」と語る同氏は、「売れなければ誰もやってくれませんから。売れると見込んでもらって、実際に売ってもらっています」と販売店への感謝を口にする。

 

順調な普及と、規制の厳しさ

 現在5期目のLPガス事業だが、3期目まではキットの改良や書類の作成に費やし、販売は特注のみだった。その後、本格的に販売を始めてからの2年間で200~300台を出荷しているが、これは当初の予想よりも早いペースだという。

 順調な一方で、普及にあたってネックとなっているのが、規制の重さだ。書類を作成して1車種ごとに認可を受ける必要があり、排気ガスについても、東京の検査場で道路交通法で定められた排気ガスの基準を満たしているかどうかの検査を受けなければならない。LPガス車の排気ガスはきれいなため間違いなく合格するのだが、排気ガスの検査費用だけで23万円だ。認可後も、1台作るのに部品を起こして書類を作ってと、前述のように50~60万円がかかる。同氏は「規制が緩和されれば、さらに手軽に、安く提供できる」と歯がゆさを滲ませる。

 この初期費用を考えると、長距離を走る車でないと元が取れないため、現状では営業車やタクシーなどにしか取り付けていないのだという。おおよその基準としては、約10万キロは走る車でないと割高になる計算だ。環境への配慮を除いてコスト削減という側面だけをみれば、走行距離が10万キロに満たず、5万キロで買い換えるような場合は無意味になってしまう。

 こうした重い規制があるのは日本だけで、海外ではカーナビやカーオーディオなどと同じ感覚で気軽に取り付けられるという。日本でも、自動車メーカーがLPガス車を製造する場合は規制が緩く、メーカー以外の事業者が行う場合には「改造」として厳しくなる。同社は車種ごとにパッケージングしたキットを販売店に卸しているが、1車種につき10セットは販売しないと利益が出ないという。

 

 重い規制に苦しめられる一方で、図らずもLPガス車の普及が進むきっかけとなったのが東日本大震災だ。震災直後、ガソリンの供給ラインは止まったが、LPガスの供給は安定していたのだ。津波による泥に飲まれてしまった地域では一時的に止まったが、それも1週間後には回復したという。災害に強い燃料としてLPガスに注目が集まった結果、同社にもNHKはじめメディアからの取材が相次ぎ、問い合わせも増加したが、当時は月産5~6台という自社生産のみだったため、思わぬ需要の増加に対応しきれなかった。フランチャイズ展開を始めたのは、こうした経緯もあったという。

 

今後の展望

 同氏は、LPガスは今後まだまだ伸びると予想している。現在、LPガスは中東やロシア、カナダなどから輸入しているが、今後はさらにシェールガスも入ってくる。シェールガスはLPガスにとっての「原油」のようなものであるため、「シェールLPガス」が出回ることで、現在1リットルあたり90円のLPガス価格がさらに安価になる可能性があるのだ。いかに円安が進んでも150円どまりであるガソリン車を尻目に、LPガス車が1リットル50円で走るようになれば、自ずと普及は加速するだろう。規制緩和によって初期費用が下がることへの期待と合わせて、今後が楽しみな事業というわけだ。

 

 同社としての今後は、コスト削減と環境対策の二点をアピールして販促に努め、5年後を目標に現在15店舗の販売店をまずは47都道府県に広げて、アフターフォローが行き届くようにしたいという。さらに、海外進出も視野に入れている。海外でも、走っているのはほぼ日本車であるため、日本の技術を持っていって日本車を改造すれば済むのだ。同社としては対象国や地域を限定していないが、環境に優しく燃料費も削減できるLPガス車へのニーズは、環境汚染が深刻でガソリン代も高い新興国に多いという。既にミャンマーには組み立てを行う整備工場があり、2014年に同氏自ら5回ほど現地に行き、取り付け方などを教えたという。このほか、ロシアへの進出も考えている。北海道とウラジオストックとの経済交流の中で、LPガス車と天然ガス車を普及する試みがあり、ここに同社も関わっているのだ。視察のために来日したロシアのガス関連企業に対してデモ走行をする機会もあり、こうした動きを足がかりに極東への展開を狙っている。

 いまなお厳しい規制は存在するが、自民党政権になってから改造に補助金が出るようになったという。年間予算の中で約2千台の枠しかないとはいえ、改造費の約半額にあたる25万円の補助金が出るのは、同社には嬉しい。地方の中小企業を応援する政策は、日本経済の再浮上に必須であり、LPガスのように社会貢献度の高い事業であれば、なおのこと積極的に規制緩和すべきだろう。

 ともあれ、全国の、そして海外の道を、酒田発のLPガス車が走り回る日が楽しみだ。

 

オビ ヒューマンドキュメント

●ケイテック株式会社

〒998-0824 山形県酒田市大宮町1-4-10

TEL 0234-23-5066

http://k-techcorp.com

 

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