次世代の産業を担う【中小企業】初めて明かされる秘話
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ソルテック工業株式会社 ‐『モノづくりはヒトづくり』を地で行く情熱の源とは?

 

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ソルテック工業株式会社 ‐ 『モノづくりはヒトづくり』を地で行く情熱の源とは?

◆取材:姜英之 (編集局長・拓殖大学客員教授)

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ソルテック工業株式会社 (1)ソルテック工業株式会社/代表取締役社長 髙塩吉治(たかしお・きちじ)氏…1948年7月20日栃木県生まれ。1964年地元中学卒業後に上京、印刷機メーカー入社。8年間に技術と知識を培う。1972年高塩製作所を設立、翌年有限会社高塩技研工業へ社名変更および組織変更。1990年販売会社であるソルテック工業株式会社を創業。1992年高塩技研工業を株式会社に組織変更。現在、ソルテック工業株式会社および高塩技研工業株式会社の代表取締役社長を務める。
ソルテック工業株式会社 (2)出荷前の同社の装置

中小企業における人材不足は、いま始まったことではない。後継者を育てることも重要だが、企業のモノづくりを支える社員の人材確保と育成も重要なテーマだ。本誌2010年5月号に登場したソルテック工業株式会社では、数年前から地元高校生のインターンシップ(就業体験)を受け入れている。今回はその経緯を含め、『モノづくりはヒトづくり』という髙塩社長の真意を探った。

まずはモノづくりのドキドキ感を味わってもらいたい

印刷されたラベルを自動でカットする機械開発で、海外からも注目を集めているソルテック工業株式会社は、髙塩吉治氏が25歳の時に創業した。もともと中学卒業後、東京にあるラベル印刷機を製造する恩田製作所に勤務していた髙塩氏。ラベルのカットが手仕事から機械に移行する時代に「自分でも作れないかな」と思い立ち、地元にUターンしてシール印刷用連動カッター機を開発しはじめたのだ。

以来、ハイペースで新製品を開発していき、紙、フィルム等のシートを切る機械をはじめとして、これまで同社が開発した機械の数は200種類を超えるという。後継者問題については、三人の子どもたちに引き継ぐことで目処がついた現在、インターンシップ制度を取り入れたきっかけは何だったのだろうか。

「まずは学校からの依頼です。インターンシップ制度が始まった当初は、怪我の心配のない現場で簡単な作業をやってもらっていました。生徒からしてみれば簡単な仕事なだけに退屈だったと思います」

 

最近では、せっかく仕事に来てくれるのだから感動を味わってもらいたいと思うようになり、プログラムを変更したそうだ。

「それは制御の基本を学ぶのに最適と考える、手製のモーター制御板を教材に使うことです。制御盤の配線を工夫し配線図なしにモーターを回転させるのが課題」

髙塩氏が社会人になって間もない頃にモーターが回らなくなったボール盤を直した経験があり、その時味わったドキドキ感やワクワクした気持ちを感じてもらえるような研修方法にしたのだ。

「回路のありようを考えて工夫し、モーターが回った瞬間、喜びを感じる。生徒たちの目の輝きがキラキラしてたまらないです。その喜びを感じるか感じないかというのが、生徒がもともと持っているモノづくりに対する素質によって違ってきます」

つまり、こんなことは分かっていると思う生徒は感激しない。モノづくりに興味がある生徒でも、回ったときの感動の度合いによって仕事に対する関心の持ち方に差が出るという。

「今のところインターンシップ制度によって、就職した生徒さんはいないのですが、地道に続けていこうと思います。『ヒトづくり』は時間がかかるものですから」

 

モノづくり企業こそ、継続して育てる『ヒトづくり』が必要

昔は見て覚える…という教育の仕方が多かったモノづくりの現場。ソルテック工業ではどうしているのだろう。

「うちでは、あまり決め込まないで本人の意思を尊重するというか、本人も自覚していないような可能性を引き出していくようにしています」

たとえば、工業大学を卒業した社員がいる。この社員には設計を任せてみたが、上手くいかない。それなら大学でCADぐらい勉強してきているのだろうと聞くと、CADはできない、という。そこでCADのソフトを勉強してもらうことにした。

「一カ月間、彼は時間外に勉強しましてね。自分でモノを作るための想像力を駆使することは苦手なんですが、できたものをトレースして図ってCADで書く、さらに説明書を作ったりするのは上手い。何年かたったらCADの操作はすごく上達していた。その社員はもう今ではCADの達人と評価していますよ。彼がいないと、うちの新しい機械の取扱い説明書を作るのはもっともっと大変だったでしょう」

雇用した企業側の責任もある。

「やたらにその社員が仕事が出来ないと言って、首にしていると会社自体の信頼性がなくなりますでしょ(笑い)。反面、社員も会社に入れば組織の中に入って働くわけですから、いちいち社長と喧嘩していたらこれは社員ではいられなくなるわけです。議論はいいですよ、多少は。ただ礼義は大切です。例えば上司に楯ついたり、社長にきつく言われたから簡単に辞めてしまうというのは、社員の資格もないと思います」

 

髙塩氏が考える雇用のあり方はシンプルだ。

「会社というのは、自分では全てができないから他の人に手伝ってもらう。みんなで仕事を分け合ってやって、利益を出す。そこから生活の糧を得る。それが会社なのです。しかも会社が安定すれば自分の生活も安定する。人が増えて組織になる。だから会社にとって一番大切な事は雇用なんです」

言い換えれば、ヒトづくりが重要だということだ。

 

ただ、ここ20年ほどの間に転職の自由や契約社員、派遣社員の問題など雇用に関わる考え方が大きく転換してきた。

「『職業選択の自由ウフ・フゥン』をお題目にした契約社員や人材派遣などは、私から見れば異文化のような気がします。自分たちの経営哲学とはちょっと違うなと思います」と話す。なぜなら、技術職の仕事は継続することが大事だからだ。

「アルバイトや契約社員ではなかなか勤まらないのが私たちの仕事です。それには会社がきちんと雇用する。例えばリーマンショックで赤字になったとする、その時に社員に簡単にやめてくれと言えない。また忙しくなったときにどうするか。替わりの人材を育てるためには時間がかかりますよね。だから会社としては大きな借金をしたとしても社員に給料を払わなければいけない。それが雇用の責任で、そうやって今後生き残っていくのが本来の日本の中小企業です」

終身雇用という日本的雇用制度は大分崩れてきたが、大手企業はいざ知らず、「中小企業では技術の継承という点からも、社員には継続して勤務してもらいたい。社員を大事に育てたい」という髙塩氏の強い気持ちが伝わってくる。

今の世の中はパソコン、テレビなど工業製品に人々は豊かさを求めるが、それを支えているのは中小企業だ。ちなみに同社の機械を使用して加工される商品は、食品等のラベルや携帯・スマートフォンの液晶画面に使用されるなど、身近に溢れている。だから、中小企業で働いている人たちの存在・モノづくりをする人たちが脚光を浴びて評価されなければならない。

 

最後に中小企業でいい人材を確保するためのカギについて聞いた。

「会社としての魅力が必要です。それは高い技術力とともに、その技術を活かして加工される製品が社会的な貢献をしている、加えて将来の社会においても欠かせない会社であるということ。それらをきちんと世の中に知らしめていかなければいけないですね」ときっぱり。

先進の技術と確かな信頼をもって歩んできたソルテック工業。そこに『モノづくりはヒトづくり』を実践しているからこその自信が見て取れた。

 

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ソルテック工業株式会社

〈本社・工場〉
〒329-2811 栃木県那須塩原市下田野532-166

TEL 0287-35-4048

http://www.solutech.co.jp/

 

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