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T.N.G.テクノロジーズ株式会社 佐々木耕司|特許の〝不都合な真実〟

 

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特許の不都合な真実

日本の発明家を救うために、その男は立ち上がった!!

T.N.G.テクノロジーズ株式会社 代表取締役 佐々木耕司氏

◆取材・文:加藤 俊

 佐々木耕司(ささき・こうじ) 氏…1963年広島県生まれ。1989年3月 京都大学工学部卒業後、同年4月情報通信関連ベンチャーを創業。携帯電話用の直感的情報検索機能の提供サービスを軸に事業を展開。1996年4月 株式会社ジェイデータに組織変更。2008年6月 T.N.Gテクノロジーズ株式会社を設立して、代表取締役として現在に至る。

元アメリカ副大統領アル・ゴア氏の『不都合な真実』を目にしたことがきっかけだった。「温暖化を防止したい」その思いに突き動かされて、佐々木 耕司氏は環境関連の技術を持ったベンチャーをサポートするT.N.G.テクノロジーズ株式会社を設立した。ところが、ベンチャーをサポートしようにも、日本の特許ビジネスの環境は、ゴア氏が警鐘を鳴らした温暖化問題さながらな〝不都合な真実〟に取り巻かれていたのだった……。

ベンチャーをサポートする仕組みがなかった

基盤

佐々木氏が京都大学卒業後すぐに立ち上げた会社が、株式会社ジェイデータだ。現在もソフト開発会社として、携帯電話大手サムスン電子に自社ソフトを供給している。サムスン電子の携帯、累計3億台に佐々木氏の発明した技術が搭載されている。契約上名前を出せないそうだが、同社には海外の非常に高名な方が顧問に就任している。

 

そんなやり手の経営者であり、且つ自身が発明家でもある佐々木氏の元には、多くの発明家が技術を見てほしいと、依頼が持込まれるそうだ。ところが、凄い技術であっても全く商売になっていない場合が多かった。何故なのか調べていくと、そもそも技術系のベンチャーをサポートする仕組みが日本にないことがわかった。

 

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「本当に発明家には不利な環境です。例えば、資金を投じてくれる国内のVC(ベンチャーキャピタル)ですが、面白い技術が発明されたとして、彼等は数億円までは出資してくれるんです。ただ技術系のメーカーに成ろうとすると、必要な資金は一つ桁を超えていきます。場合によっては数十億、数百億というお金が必要になってきます。
しかし国内のVCにそこまで出資できる資金力はありません。だったら、この自分が、海外にソフトを供給しているノウハウを活かして、良い技術があれば、海外に繋げるサポートをしようと思ったのです」(佐々木氏、以下同)

 

自身発明家である佐々木氏は、環境が整ってないために、日の目を見ることができない技術の存在をどうしても何とかしたかった。それほど国内の特許技術を取巻く状況が抱える〝不都合な真実〟には目に余るものがあった。最たるものを二例上げる。

 

 

不都合な真実その一:日本だけの特許は食い物にされている

実は特許制度は各国独立している。日本で特許を取得したとしても、その効力は国内だけでの話。海外では通用しない。つまり多くの企業にとっては、特許権を複数国で取得する必要があるのだ。

 

「問題なのは取得費用が嵩むことです。多くのベンチャーは巨額の費用を捻出できません。アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国各国に海外出願するとなると、それだけで5百~6百万円かかります。そのため一つの技術で複数の特許を取得するとしたら、2千万円前後かかってしまうんです。どこの中小企業がそんな金額を出せますか。結果、多くのベンチャーが国内出願しかできないのです。この現状を変えないといけません。外国出願や国際出願の費用をサポートする仕組みを早急に整えないと」

その仕組みがないため、実際にとんでもない事態が起きているのだ。国内特許のデータベースに海外からのアクセスがなぜか集中しているらしい。

……これが意味することが本当に怖い。実は、日本でしか出ていない特許を探して、海外で勝手に事業化することをビジネスにしている連中がいるのだ。そうやって日本でしか出願されていない特許が食い物にされている〝不都合な真実〟があるのだった。

 

 

特許の不都合な真実その二:特許はビジネスにならない

お金 画像

もう一つの〝不都合な真実〟は、国内では特許ビジネスが成立しにくいことだ。つまり特許はお金にならないのだ。そもそも特許ビジネスには、特許自体を売買する方法以外にも、ライセンス料をとるという方法がある。

ただ、実際に技術を使いうる国内の大企業には、そもそもライセンス事業部がない。外部技術を導入するための事業部が存在しないのだ。国内の大企業は戦後、研究開発は自前主義でやってきて、それで成功しているので、今もってその成功体験から抜け出せないのだ。そのため現場はどうしようもないことになっている。ライセンス事業部がないために、大企業の窓口に立つのが、同じ分野にいる企業の研究者になるのだ。これが不幸そのもの。

応対する研究者にとってみたら、自分の研究分野と被る提案をされるわけだから、心中穏やかではいられない。結果良い技術でも採用されないで終わってしまう。外部技術を受け入れるには、あまりにも心理的ハードルが高すぎるのだ。

ただこの状況はライセンス事業部を設けさえすれば、変わると佐々木氏は言う。

 

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「ライセンス事業部を設ければ良いのです。同じ分野の研究者としては外部技術を認められなかった人でも、ライセンスを受け入れるために判断する人という立場に変われば、色眼鏡を外して技術そのものを見ることができるようになります。外部の良い技術を取り入れ、それを育てれば、その人の実績になるな仕組みが必要です」

 

 

結果海外に目を向けるしかない現実

以上のような特許を取り巻く〝不都合な真実〟があるため、海外での特許出願や交渉に、多少のノウハウのある佐々木氏自身が、海外との橋渡しのサポートをするために、T.N.Gテクノロジーズ株式会社を設立したのである。

実際、佐々木氏が支援している企業には、レアアースを必要としないEV(電気自動車)用モーター技術を有する「i-Motor株式会社」や、※ボンディングワイヤ、電磁石の巻線やケーブルなどの強化目的に使える現存する素材中、常温で最も抵抗の低い電線である特殊銀線の「株式会社J.S.Wire」などがある。

 ※半導体に使われるICチップのアルミチップのアルミ電極とリード電極を接続するワイヤ

日本で発明された技術が、海外でしか評価されないのは悲しい気もするが、現状の発明家に不利な状況を考えれば、むしろ海外だろうが、発明家の技術が報われる環境があるだけでも救いだ。

◆◆◆

ここにきて明るい材料も少しずつ出始めてきている。7月5日付の日本経済新聞で、官民ファンドの産業革新機構パナソニック三井物産が、この7月中に300億円規模の知的財産ファンドを共同でつくることを報じている。国内の特許ビジネスを後押しするための、待ちに待った大きな一歩だ。

国内の特許ビジネスが活況を呈してくれば、〝海外との橋渡し〟という佐々木氏の役どころも、今まで以上に大きな意味を持ってくる。佐々木氏の本懐である環境関連ビジネスを推進できる日もそう遠くはないかもしれない。

 

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町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年8月号の記事より

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