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大和合金株式会社 三芳合金工業株式会社|大和発進!! モノづくり日本人の瞬発力と品格を背に 百年企業に向けて魂(こころ)の承継も着々

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大和合金株式会社 三芳合金工業株式会社

大和発進!! モノづくり日本人の瞬発力と品格を背に 百年企業に向けて魂(こころ)の承継も着々

◆取材:綿抜 幹夫

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Minolta DSC大和合金株式会社/三芳合金工業株式会社 写真左:取締役会長 萩野茂雄氏  写真右:代表取締役社長 萩野源次郎氏

剣は心なり(島田虎之助)というが、その伝でいけば企業経営もまた心なりである。心正しからざれば経営また正しからずで、そんな企業が70年も続くわけがない─。いつものことだが、筆者はこの会社を訪れるたびに、あらためてそのことを痛感してならない。とにかく心があるのだ。心は〝魂〟に置き換えてもいい。

特殊銅合金の知る人ぞ知るトップメーカー、大和合金(東京板橋区。埼玉県入間の三芳合金工業とは事実上の一体企業)である。その大和合金が、このほど約30年ぶりにトップ交代を果たした。新社長に就いたのは、前社長萩野茂雄氏(現会長)の次男、萩野源次郎氏だ。さっそくその源次郎氏を直撃取材した。テーマは祖父から父へと受け継がれてきた文字通りの〝大和魂〟を、今後どこへ向けてどう発進させるか─、である。

石を投げたら工学博士に当たる!?

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まずはその人となりから、簡単に紹介しておこう。 詳しくは後述するが、あの高杉晋作と遠山の金さんを足して、吉田茂で割ったような気質の先代とは打って変わり、風貌も物腰も、44歳の若さとは思えないほど温厚で物静かである。それでいてやることは、すばしっこく、しかもスケールが大きい。

上智大学から同大学院を経て花王に入社したが、本当は世界を股に掛けた仕事のできる大手プラントメーカーに入りたかったそうだ。しかし根がポジティブなのだろう。花王で身に付けた化け学の知識と向学心、さらには培った人脈が、今にかけて大いに役立っているという。

ちなみに人当たりの良さも手伝ってのこととは思うが、その人脈づくりの才には目を見張るばかりだ。行く先々で良好な人間関係を抜かりなく築き上げており、今や経産省、東京都庁、板橋区役所、JETRO、中小企業基盤整備機構から各地区の商工会議所、海外の航空機メーカー関係者まで、びっしりと言って過言ではない。 37歳で宇都宮大学大学院に社会人入学したときもそうで、博士号を取るついで(?)にしっかりとネットワークを構築。その後、大和合金の社員を次々と同大学院に送り込んでいるのだ。

 

ちょっと大袈裟に言うと、今では〝大和で石を投げたら工学博士に当たる〟といった按配である。 「肩書きなんてどうでもいいんですけどねぇ」 と会長は苦笑まじりに言うが、外部から見た企業イメージや信頼度が、これだけでも格段に違ってくること請け合いだろう。

とまあ萩野(源次郎)氏の人となりを、大まかにだが分かっていただいたところで、いよいよ本題に入ろう。 今後もっとも重要なテーマとして掲げているのは、ズバリ、〝新材料の飽くなき開発〟と、〝海外販路の開拓に向けた実効性ある取り組み〟である。ということで次に、その背景にある考え方とビジョンを、氏の話を軸に分かり易く進めたい。

 

 

世界中どこを探してもない新材料を開発する

yamato07若手社員の教育風景yamato06アルミ青銅

まずは新材料の開発である。ここでいう材料とは特殊合金のことだ。〝飽くなき〟というのは、どんなにいいモノをつくってもこれで終了という世界のモノではないからである。他社との差別化のためにという一面もあるにはあるが、産業界、とりわけ製造業の発展に連れて必ず生まれる、これは避けて通れない市場のニーズといっていい。それによって例えば、耐力(硬度・強度)を第一にと要求されるケースがある。逆にフレキシビリティ(融通性)を要求される場合もある。もっと熱伝導性の向上を、という声も寄せられる。それらを同時に全部、という欲張ったニーズも少なくない。特殊合金の世界とは、早い話がそういう世界なのである。

 

ちなみに今、同社の主力としている商品(特殊合金)は、やはり自社開発のNC合金だ。銅の持つ高い熱伝導性を維持しつつ、世界にも希な最強度の耐力を持つ新材料として、自動車、航空機、鉄道、機械、金型、半導体、家電など、ありとあらゆる製造業から注目を集めているという。

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「かつて幾つかの顧客から、ベリリウム銅に替わる材料をつくって欲しいという要求が相次ぎましてね。そんなの世界中どこを探してもないんですよ。でも要求がある以上、やらないわけにはいかないという強い決心を以って、ほぼ10年がかりで開発しました。ホントに、失敗と試行錯誤の繰り返しでしたけどね」(萩野源次郎氏、以下同)

ベリリウム銅とは、耐力、熱・電気伝導性とも抜群に優れた合金だが、一部では、正否に関わらずベリリウムの健康への影響が懸念されている材料でもある。

 

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ちなみによく金型に使われるP20と呼ばれる合金と、NC25合金とを比べると、耐力はほぼ同等にも拘わらず、熱伝導性においてはNCが約5倍も高い。これは生産効率からいうと大きなメリットで、すでに自動車部品やOA機器、医療機器などのプラスチック製品の金型として広く使われているという。他にもレーシングカーのコンロッドの軸受けやジェットコースターのブレーキフィン、抵抗溶接の電極材料としても用いられており、飛行機部品の材料としても、アメリカの航空機会社がすでにテスト使用を始めている。言うまでもないが、飽くなき開発のこれがその賜物である。

 

 

海外の需要を取り込まなければ未来はない

yamato10 ベルリンエアショーでの様子yamato09

次は海外市場への取り組みについてだ。

「これまでは国内の需要だけでも十分にやっていけましたけど、これからはそうはいきません。ここ数年、政府機関や自治体などを通じて世界中の展示会や商談会を見て回りましたが、世界のニーズはどんどん高度化し、多様化しています。今ではその海外のニーズに応えて需要を取り込まなければ、私たちの未来はないと確信しています

きっかけとなったエピソードをひとつ紹介しよう。

ある日本の大手OA機器メーカーだ。仮にA社とする。A社が自社製品のプラスチック成型用金型の材料を世界中探し回り、やっとのことでアメリカのとある会社で見付けたという。A社は大喜びし、さっそく同地のディストリビューター(販売代理人)を通じて輸入し、ラインに組み込む。とここまではよくある話だが、この後が面白い。なんと偶然の出会いから、その材料をつくっているのが実は、目と鼻の先にある日本の工場だったのである。お察しの通り、大和合金だ。A社はまさか、国内にそれほどの技術を持った会社があるとは想像もしていない。大和は大和で、自社の商品を探している大手企業がすぐそこにあるなんて、夢にも思わなかったという。

 

「いやあ、発信力不足と言いますか、井の中の蛙だったんですね。世界がどう動いているかまったく知らなかったんですから。でも同時に私どもの開発力が、世界でも十分に戦えるだけのものだと確信できたという意味で、非常に嬉しくもありましたけどね」

以来、氏は世界中の展示会や商談会を可能な限り見て回り、可能な限り出展するべく積極的に手を挙げてきたという。ちなみにこの僅か5年の間に同社は、欧米、アジアの企業30社余りと新たな取り引きに向けた具体的な話を進めており、すでにその約半数の企業と契約が成立しているそうだ。

 

 

国を思う赤心から身分も私財も擲つ

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さて、ここらで冒頭に書いた〝大和魂〟についての話を、少し述べたい。

大和合金の魂という意味ももちろんあるが、元々の創業の理念からして、あの吉田松陰の辞世の句にもある、〝留めおかまし大和魂〟の大和魂に発しているのだ。創業者は萩野茂氏。現会長・茂雄氏の亡父である。

 

ときに1941年。太平洋戦争開戦の年だ。古い文献によると、その頃の茂氏は東京鋼材(後の三菱製鋼)に籍を置くバリバリの技術者で、斯界では特殊合金のスペシャリストとしてとみに知られた存在だったようである。

 

その氏が、「鉄や合金の生産量に劣る日本がこのまま欧米との戦争に突入したら持たない。少しでも多くの合金を、優れた合金をつくって軍需に応えなければ」との赤心から、それまでの安定した身分と私財を擲って興したのが、この大和合金なのだ。それが証拠に、氏は東京鋼材在籍中に何度も、軍需専用の工場を新設するよう会社に働き掛けた、とその文献にはある。要するに掛け値なしの烈士であり、モノづくりを本分とする日本人としての品格を持った、紛れもない愛国者だったに違いない。

 

ちなみにそのときの茂雄氏、つまり現会長は9歳である。そんな父親の姿を見て育った子供、という風に考えると、これまた冒頭に書いた「高杉晋作と遠山の金さん云々…」のくだりも、なんとか腑に落ちるのではあるまいか。紙巾の関係で詳しくは割愛するが、少なくとも筆者の知る限りにおいては、こちらも正真正銘、大和魂の塊であり、日本のモノづくりを支えてきた掛け替えのない品格の体現者と言っていい。

 

ちなみついでに言うと、高杉晋作や吉田松陰を引き合いに出したことでお察しの諸兄も少なくあるまい。この一族のルーツを辿ると長州(現在の山口県)、下関に行き着く。元は銀行家(萩野銀行)の家で、当時から今日まで〝誠実一路〟を家訓としている。昨今のIT〝と金〟や強欲資本主義亡者たちとは、レベルは元より〝ラベルが違う〟というわけだ。

 

そういうことでもうお分かりだろう。新社長、源次郎氏の人脈づくりの才や、飽くなき開発に懸ける思い、ボヤボヤしていると世界に取り残されるという危機感などがどこからきているかが、である。

ともあれ今年で創業71年になる。さしあたっては栄誉ある百年企業に向けて、自慢の開発力と伝家の品格を背に、力強く発進されんことを切に祈りたい。

yamato12 弊社のバーベキューは家族同伴が多いので、社員の子供も一緒に参加しています。釣りが趣味の者は、前々日ぐらいから休暇をとって、金目鯛を何匹も釣って提供してくれるのが習慣となっています。(萩野源次郎氏)
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yamato15三芳工場でのバーベキューの際、お菓子作りが趣味の若手社員(ちなみに男性)が現会長の傘寿(80歳)祝いのために、終日仕事を休んで焼き上げたという渾身のケーキ

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●大和合金株式会社

〒174-0063東京都板橋区前野町2-46-2

TEL 03(3960)8431

http://www.yamatogokin.co.jp/

 

●三芳合金工業株式会社

〒354-0045

埼玉県入間郡三芳町上富508

TEL 049(258)3381

 

 

2012年8月号の記事より

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