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株式会社八幡自動車商会 社員の成長と共に、高い目標に挑戦し続ける躍進企業

◆取材:綿抜幹夫

 

11_Yamagata01_Yawata_car株式会社 八幡自動車商会代表取締役社長 池田 等氏(いけだ・ひとし)…昭和45年山形県酒田市生まれ。平成5年上智大学卒業。同年株式会社日商岩井(現双日)入社。平成10年株式会社八幡自動車商会入社。

日本の基盤産業と位置付けられる自動車業界。ピーク時には及ぶべくもないが、新車販売台数はここに来て持ち直している。中でも軽自動車は絶好調で、今や新車の4割を軽が占めるそうだ。このエコカーブームの波に乗って飛躍的に売上を伸ばすのが八幡自動車商会。格安車検と軽未使用車販売を武器に地元酒田から多店舗展開を目指す池田社長を直撃した。

 

山形県下最大級の軽自動車販売・車検整備店を展開中

今や地元酒田市のみならず、山形市にもその名を轟かすのが株式会社八幡自動車商会だ。それは何故か。業界も目を見張る急成長を遂げているからに他ならない。

普通のディーラーは1店舗あたり月平均30台も販売すれば優秀と言われるが、八幡自動車商会の販売店『fino(ふぃの)』はその3倍以上、月平均約100台を販売している。また車検整備も、並のディーラーが1店舗あたり月平均70件に対し、経営する『車検のコバック』では350件以上の取り扱い。それもこれも八幡自動車商会が『軽未使用車専門店』、『車検専門店』に特化しているからこその数字なのだ。

 

軽自動車は、自動車離れが言われるこの時代にあっても、販売台数を伸ばしているセグメントだ。何と言っても、普通車に比べ安価で低燃費。取得費用も維持費も安く、5年間で100万円近くも差が出ると言われている。

経済的な軽自動車だが、新品同様の『未使用車』となると、さらに価格が抜群に安くなる。『未使用車』とは、各メーカーが販売目標達成のために生産し、既に登録(ナンバー取得)されてはいるが使用されていない車のことだ。中古車として取り扱われるが、車そのものは新車と何ら変わらない。

八幡自動車商会の最大の強みは、この『軽未使用車』を独自のルートから大量に仕入れられることにある。

 

車

公共交通機関が少ない山形県では、自動車は必需品。特に女性や、免許取得後すぐの方、あるいは年配者をメインターゲットとして、この『軽未使用車』を数多く販売しているというわけだ。

年間販売台数は優に2千台以上、車検台数も7千台に迫る山形県下最大級の軽未使用車専門店、車検専門店を運営するのが八幡自動車商会なのだ。

 

約束された安定を捨て、地元に帰っての大勝負!

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地元酒田市では知らぬ人とてない八幡自動車商会の各店舗だが、今日の規模にまで拡大したのは、2代目社長である池田等氏の経営手腕が大きい。しかし、もともとは家業の自動車屋を継ぐ気などまったくなかったそうだ。

 

「アメリカの高校を卒業し、日本の大学に入学後はアメフト三昧。勉強なんかぜんぜんしてこなかった学生でしたから5年をかけて卒業しました。就職先は一流総合商社。ぼんくら学生だった私を、上司はそれこそ躾の面から仕事に至るまで厳しく鍛えてくださいました。その効果か、かなりの営業成績を上げることができました。しかし、大企業にいると、だんだんと自分の先行きも見えてくる。『あぁ、40歳になるとこのポジションか』とか、『この派閥にいると主流から外れるのか』とか」

30歳になる頃には『このままでいいのか』と自問自答する日々を送ったと言う池田社長。

 

「このままこの商社にいて安定を取るのか、あるいは一旗揚げる道を選ぶのか。その頃は会社でも実績を上げていたので、商材を問わず外で勝負してもやっていける自信はありました。それなら実家に帰って自動車屋で勝負してやろうと思い立ったんです」

ところが、池田社長の自動車への興味や知識は貧弱そのものだった。

 

「妻に相談すると、『あなたクラウンはどこの車か知ってる?』と尋ねてくる。『三菱』と答えた私に妻はとても心配そうでしたが(笑い)、最後は『生き生きと仕事をしてほしい』と応援してくれました」

その後、実家に戻った池田社長。だが、実家ではすでに廃業の準備が進んでいた。

 

「もともと家業は継がないと宣言していましたし、両親も私が商社マンになったことを喜んでいましたからね。しかし、やっぱり家業が残ることは嬉しかったようです」

しかし、いざ仕事を始めてみると、抱いていた大志と現実のギャップは大きかった。

 

「廃業が前提でしたので、会社にこれ以上大きくなるような雰囲気はありませんでした。しかし、会社の数字をつぶさに見て行くと気付いたことがあったんです。それは車検業務の利益率が高いことでした。販売は1台あたりの売上こそ大きいが利益率は低い。安定的に業績を伸ばすためにはまず車検だとピンときました。人、モノ、金が足りない状況下では、リソースをこの車検一本に絞っていった方がいいと考えたのです。『車検で酒田一』になろうと目標を定めました」

まず手近な目標は決まった。しかし、車検というサービスに技術的なアドバンテージを持ちこむことは難しい。それは法律で決まっている『点検』だからだ。そこで目を付けたのが価格だった。

 

11_Yamagata01_Yawata_car02「低価格で地元のお客様から喜んでもらおうと考えましてね。そうやって一点に絞っていったことが今日の隆盛につながっているんです。車検はいわばニッチ。低価格でもお客様の安全をお守りする整備品質はさらに高めようと改良改善、そこを徹底的に極めました。

自動車屋の仕事の中では、やはり販売が花形で車検の扱いは小さい。だからこそ、我が社は他社が目もくれないそこに賭けたわけです。年間1千台も扱えば酒田一になれる。そうして当座の目標を実現すると、じゃあ、次は『山形一』になるんだと。そのためには年間3千台扱わなければならない。具体的な目標が見えてくれば、やる気も断然違ってくるものです」

こうして着々と足場を固め、やがてその目は販売へと向かっていった。

 

「地元に根付いて名前も浸透したところで改めて販売にも進出しました。車検だけではどうしても売上を伸ばすことに限界があるからです。都会と違って田舎では軽自動車がとても普及しています。その庶民の足をどうしたら安く提供できるのかを考えました。それが未使用車(新古車)だったわけです。この未使用車を全国からかき集めてきて新車よりかなり安く販売しています。もちろん、車自体は新車と変わらないし、保証も一緒。つまり新車に限りなく近いのが未使用車なのです」

もちろん中古車ならもっと安く提供することも可能だ。しかし中古車には中古車なりの問題がある。例えば故障のリスクやデザインの古さといった問題だ。

 

「その点、未使用車なら新車同様。だからこそ未使用車には新車並みの安心感があるんです。今は800台の在庫を持って、地域の方々に販売しています」

車の販売と言えば、メーカー系列のディーラーで、そのメーカーの車しか見ることができないのが一般的だ。だが、顧客とすれば様々なメーカーの車を同時に見て比較検討の上、買いたいに違いない。

 

「我が社ではそれが可能です。軽自動車であれば、あらゆるメーカーの車種が見られる。これも大きなメリットですね」

今や地域一番店として、多くの顧客に軽自動車を供給する『軽未使用車専門店ふぃの』。若手社員の活気にあふれるこの店から、今日もまた笑顔と車が送り出されていく。

 

夢は大きくなければ成長できない

酒田に戻って15年。業績面では平成26年1月決算で売上33億円を突破。前年の1・5倍、5年前の3倍を達成している。

だが、ここに至る道のりは決して平坦ではなかった。だからこそ苦しい時を支えてくれた社員への思いは熱い。

 

11_Yamagata01_Yawata_car04「最初の頃、会社経営は自分のためという思いがありました。自分の発想、自分の方法が絶対に正しいと証明したかった。だが、いい時、悪い時を経験すると、窮地の時に自分を助けてくれるのは結局社員だと分かってくる。

そうなれば、何のために会社を経営するのかということもずいぶんと変わってくるものです。今はただ社員のため、社員とその家族の幸せのためと心の底から思っています。

不思議なもので、そういう気持ちになると思いもよらない力が湧き出るんですよ。自分のためだけならいくらでも手抜きができますが、誰かのためとなったら一層頑張れる。その結果、会社には一体感が増し、ますます発展していくものなんですね」

 

確かにエコカーブームの追い風はあっただろう。消費増税前の駆け込み需要も大きかったはずだ。しかし、それだけが急成長の理由ではない。夢を持った社長と社員が共に手を携えて持てる力を結集したこと。これが最大の理由なのだ。

そして池田社長の夢は果てしなく大きい。

 

「夢は売上100億円を目指すこと。大言壮語に聞こえるのは重々承知しています。高い目標だということも分かっています。この会社を継ぐにあたって『酒田一になる』と誓ったが、周りは誰も信じなかったし、相手にもしなかった。

しかし、そう思い続けて頑張れば叶うこともあるんです。現在では車検台数では東北一にまでなりました。軽自動車販売台数でも東北有数と言っていいでしょう。大きな夢を持てば、そこに近付いていける。高い目標を目指していけば、到達できるポイントも自ずと高くなるんです。

今の若い社員にも、こういう成長の場を与えたい。今後も多店舗展開をすすめ、その時は、若い社員にこそ挑戦してもらいますよ」

 

伸び盛りの企業だからこそ、人も企業も若竹のようにまっすぐ伸びてゆく。大きな夢を持った若者こそ、八幡自動車商会の門を叩いてみたらどうだろう。そこには自身の成長のための全てが揃っているはずだ。

 

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●プロフィール

いけだ・ひとし氏…昭和45年山形県酒田市生まれ。平成5年上智大学卒業。同年株式会社日商岩井(現双日)入社。平成10年株式会社八幡自動車商会入社。

【受賞歴】

・コバック顧客満足部門 2年連続全国第1位(㈱コバック)

・最優秀新チャネル開発賞(㈱船井総合研究所)

・ベスト躍進カンパニー賞(㈱船井総合研究所)

●株式会社八幡自動車商会

〒998-0831

山形県酒田市東両羽町8-6

TEL 0234-21-2775

http://yawatajidosha.net/

【車検のコバック酒田店】

〒998-0831

山形県酒田市東両羽町8-6

TEL 0234-21-2775

【車検のコバックR286鉄砲町店】

〒990-2432

山形県山形市荒楯町1-3-3

TEL 023-666-6420

【軽未使用車専門店fino(ふぃの)酒田店】

〒998-0831

山形県酒田市東両羽町8-5

TEL 0234-22-4545

【軽未使用車専門店fino(ふぃの)山形店】

〒990-2432

山形県山形市荒楯町1-3-3

TEL 023-666-6422

【板金のモドーリー酒田店】

〒998-0831

山形県酒田市東両羽町8-6

TEL 0234-28-8373

【板金・塗装 八幡工場】

〒999-8234

山形県酒田市小泉字上川原32

TEL 0234-61-1725

 

2014年4月号の記事より

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