株式会社マツダ自転車工場

老舗メーカーの技術と矜持

丁寧な手仕事でつくりあげる「オンリー・ワン」自転車

◆取材・文:加藤俊

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株式会社マツダ自転車工場 松田裕道氏

 

先日。寒さが厳しくなってきた朝のこと。布団から這い出すのが遅れ遅刻しかけた筆者は、妻に自転車(俗にいうママチャリである)を借り、いつもはのんびりと歩いて向かう駅までの道を急いだ。しかし、自転車に乗るのは実に5年ぶり。そのうえ、駅までは緩くて長い上り坂が続く。

 

昔の感覚で足が回ったのも最初の1分ほどで、あとはペダルを漕ぐもキィキィと音ばかりが威勢よく軋むだけ。それ以降は身体がついていかず、遅々と蛇行を繰り返す運転に、後方からはチリンチリンと筆者を急かすベルが鳴り響く始末……。

 

と、次の瞬間、目で追うのもままならない速さで颯爽と追い抜く影があり。瞬く間にゴマ粒ほどに遠のいたそれが、競輪選手が乗るような自転車であることはかろうじてわかった。

 

ロードバイクやピストレーサーなど細かな違いは分からないが、こういった自転車が巷で流行っているのは知っている。速度が〝車並み〟ということに加えて、もうひとつ〝車並み〟なところがあるのも。価格である。ものによっては、一台百万円はくだらないというから驚く。

 

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そんな高級自転車の製作を手掛ける町工場が、荒川区にある。株式会社マツダ自転車工場だ。その社名よりも、150名以上の競輪選手に愛用されている老舗ブランドメーカー「LEVEL」といった方が、知っている方も多いのかもしれない。

 

マツダ自転車工場の三代目、松田裕道氏は言う。

 

「ひと頃までは町の自転車屋さんで数万円はしていた自転車が、最近では量販店などで一万円を切るものまででてきていますよね。我々のようなメーカーは、安く済むものであれば安く済まそうという風潮に抗った製品作りをしていくことが求められます。さらにその中で、ママチャリにしか乗ったことがないという人に、どうやったらきちんと作られた自転車を知ってもらえるのかを考えていかなければなりません」

 

その答えの一つとして導き出されたのが、セミオーダーだった。従来は、一人ひとりに合わせたオーダー製品だったLEVEL。それを毎日の通勤やフィットネスギアとしての用途を見込んで、汎用性の高いシティサイクルを作り始めたそうだ。上代も大分安くなったとのこと。

 

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「一人でも多くの方にとって、きちんと作られた自転車に触れる間口になることを期待しています」

 

ペダルを漕ぎだしてすぐに己の体力の無さを痛感した筆者のような人間には、そこらのママチャリで十分なのかも知れないが、〝世界にひとつだけの自転車〟とはなんとも魅力的。筋肉痛になった脚をさすりながら、ちょっと大きな買い物について妻にどう切り出そうかと頭を悩ます次第である。

 

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【取材協力】株式会社マツダ自転車工場
〒116-0012 東京都荒川区東尾久1-2-4
TEL 03-5692-6531

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町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年12月号の記事より

町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年12月号の記事より