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アートビルダー株式会社 – 「誰もが安心して働ける建設業」を目指して

オビ 企業物語1 (2)

現場の〝いい雰囲気〟を作り出す足場工事専門の職人集団

「誰もが安心して働ける建設業」を目指して

アートビルダー株式会社/代表取締役 宇津木 巧氏

 

オビ ヒューマンドキュメント

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA建設業は「きつい」「汚い」「危険」の3K職場。

そんなイメージがある人ほど、アートビルダー株式会社を知れば「おや?」と思うに違いない。

同社は仮設足場工事の専門会社。世間からは「なんとなく怖い」との印象をもたれがちで、働く人は「将来どこまで続けられるのか」と不安を感じている、そんな鳶職の現実を自分の手で変えようと、

2006年に、当時弱冠21歳の鳶職人だった代表・宇津木巧氏(写真)が起業したのが同社だ。

創業以来人身事故は0件。

コスト削減のプレッシャーの強い業界で、高い安全性・適正コストの経営を貫く同社の経営姿勢には、これからの建設業界を考えるヒントがたくさん隠されていた。

 

 

「かっこよさ」に惹かれ鳶職の道へ

そもそも宇津木氏が建設業界に入ったのは、高校を中退し仕事を探していた頃「鳶募集」の求人広告に出合ったのがきっかけだ。

「〝鳶〟という言葉に憧れ、かっこいいなと思って興味を持ちまして。〝建設業界の花形〟というイメージがあったので、誇りを持って働けそうだなと思って決めました」と、17歳で鳶職の道に進んだ。

独立したのは、それから4年後の2003年のこと。

短期間で独立に至ったのは、鳶職という仕事が世間からは悪い印象を持たれていると感じたこと、けれども現場で直接関わったお客さんにはいい印象を持ってもらえたことの2つの影響があるという。

 

artbuilder_Nsouko大規模工事の作業風景(N社倉庫)

「入社してから感じたんですが、鳶職は世間では〝おっかない〟とか〝危険〟といった印象を持つ人が大多数。道端ですれ違っても、ちょっと避けられたりするんですね。

けれど、実際に現場に行ってお客さんと接する中で、〝若いのに頑張ってるね〟と評価してくれる人もいて。それが励みになり、もっといろんなお客さんに認められたいという思いが、独立に繋がったと思います」

 

そんな思いから21歳で個人事業主として独立し、勤務先から仕事の紹介を受ける形でスタート。

徐々に成長して2006年には法人化を達成するわけだが、それはただ事業を大きくしたかったというわけではない。法人化に踏み切った一番の理由は、

「鳶職の誰もがどこかで持っている将来への不安をどうにかしたかったから」だと、宇津木氏は振り返る。

 

「鳶職は40歳を過ぎたら体力的にきついと聞きますし、実際に転職した先輩もたくさんいました。これを何とかしたいと、独立したぐらいの頃から漠然と考えてはいたんです。

将来がないからとあきらめるんじゃなくて、将来の不安のない会社を作れないか。自分を信じて挑戦してみようと思ったのがスタートでした」

 

目標は終身雇用の実現。

将来的には現場だけでなく他の事業も行うことで、何歳になっても安心して働き続けられる会社を目指そうという思いを原点にして、宇津木氏の挑戦は始まった。

 

 

完成時にはなくなる。だから心に残るものを

同社が専門とする「足場」は、ほかの業者の作業のために組まれるもの。建物が完成すれば撤去されるものであり、形に残らない存在だ。

そんな中で、一体自分たちには何が残せるのか?  同社のモノづくりを考える上で、スタート地点となっているのはそこだと宇津木氏は言う。

 

「足場は工事現場で最初に入り、最後に出て行くものなので、工事期間中は私たちの足場がずっと現場を包み込んでいるわけです。

だから、まず近隣の方々に現場自体を気持ちよく受け入れてもらえるように、工事自体が円滑に進むような雰囲気を作るのが、私たちが最初にできること、私たちがやるべきことだと思うんですね。

工事が完成して足場がとれた時、〝ああ、きれいに仕上がったわね〟とそこからご近所のコミュニケーションが生まれていくような、

そんな風に地域の活性化にも貢献できればと思っているんです」

 

このような、あいさつやマナーを徹底し、現場内のみならず近隣の住人にも気を配る同社のやり方は、まず地域の人々が建設業に抱くイメージを変えるのに一役買っている。

しかし、メリットはそれだけではない。その姿勢はそのまま、同社独自の強みにもなっているのだ。

 

artbuilder_01

作業中は、安全の徹底に加え、周りへの気遣いも怠らない

 

 

 

オーナーや周辺住民から信頼される 職人を目指して

建設業の許可業者数は2015年度末現在で、全国で46万7635社ある(建設業ハンドブック2016による)が、そのうち約99%は資本金1億円未満の中小零細企業や個人事業主だ。

元請けから仕事を請け負う会社も多く、常にコスト削減のプレッシャーがかかってくるものの、建設現場で何より重視されるべき安全を確保するためには、価格を抑えるのにも限度がある。

「安全第一」との矛盾をつきつけられ、板ばさみで苦労している会社は決して珍しくない。そんな厳しい世界で、どうやって勝負していけばよいか?

 

この問いに対する宇津木氏の答えは「すべての資材を自社保有することで資材調達費を下げる、職人同士の連携により作業効率を上げるなどの工夫で低価格を実現しつつも、

〝工事全体に対する良いイメージ〟を付加価値とすることで無茶な値下げは拒否。その分、安全対策を徹底していく」というものだ。

 

「私たちが考える低コストとは、単に価格を下げるだけではありません。最初に現場に入る私たちは、その建設現場の看板。私たちが足場を組むことによってその現場自体のイメージが良くなり、

それが元請けさんの人気や新たな仕事の受注に繋がるという、いわば〝目先の低コストよりも将来の低コスト〟を提供するように心がけているんです」

 

artbuilder_senusi施主様との会話を大切にし、希望に合う工事を心掛けている

「お客様の利益であるベネフィットを生み出したい」と話す宇津木氏。

大事なのは同社の理念でもある「大切なのは工事全体の雰囲気を作り、現場の居宅のオーナーや近隣の人々といったエンドユーザーから信頼を得ていくこと。

足場という〝物〟を売るのではなく、安心、安全、信頼、快適、喜び、満足などの〝コト〟を提供することが使命と感じ、町を輝かせていくこと」というわけだ。

社員全員がその意識を共有し、日々の現場に当たっていることが同業他社との差別化にも繋がっている。

 

同社の請け負う現場の約8割は一般住宅、その大半はリフォーム工事だが、そうして住宅リフォーム案件を中心にしているのも、この同社の強みを最大限活かすためだ。

何もないところに一から作り始める新築と違って、リフォーム工事はオーナーが家に住みながら進められるのが一般的。

また工事がきっかけでご近所トラブルになることがないように、より繊細な配慮が求められるわけで、同社にはぴったりのフィールドなのだ。

 

だが、言うは易く行うは難し。同社が誇るこの強みは、もちろん職人1人ひとりの自覚と団結がなければ持続することはできない。

だからこそマナーや身なりをはじめとする社員教育はもちろん、〝価値観〟の教育はとても大事にしているという。

 

artbuilder_yagura幸手市権現堂桜まつりのやぐら。地域貢献も積極的に行う

「鳶職人をやっている人というのは、どちらかというと学校で勉強してという道を外れちゃった人が多いんですけれど、心の中は素直なんですよね。

勉強は苦手だったりするけれど、気持ちはきれい。ぜひそういう場所を伸ばしていきたいと心がけています。

〝なぜ自分はこの仕事をやっているのか?〟から、〝人間として生きていくのに何を大切にしているのか?〟まで、社会に出て一緒に学び考えて、

自分を内観する力をつけることで、仕事のやりがいにつなげていってほしい。

そうして自分でもやりがいを持って仕事をすることで、初めてお客さんにサービスできるんじゃないかと思うんです」

 

 

建設業を、誇りと夢の持てる仕事にしたい

現在、同社の年商は3億8千万円ほど。

2020年の東京オリンピックを控え、関東の建設市場は上がり調子が続いているが、宇津木氏はこれに便乗して事業を拡大するつもりはないという。

 

artbuilder_shizaiokiba資材置場。足場部材や備品を大切に管理し、整理整頓を徹底している

「オリンピック後は市場が落ち込むという話もありますし、それまでに僕たちが達成すべきは〝アートビルダー〟としてのブランドの確立。

年商は5億未満で止めても質を上げ、財務体質も改善して、より体力のある会社にするのが第一です。

オリンピック後にも仕事をしっかり確保できるような、むしろ逆に仕事のないところに回していけるような体制作りに取り組んでいるところです」

 

その先に見ているのは、起業時から10年越しの夢でもある、誰もが安心して働ける会社の実現だ。

 

「2年後にはグループ企業として新事業を始めるつもりです。年をとっても働ける場所を提供できる会社にしたい。

今は就活でもホワイトカラーが人気ですが、僕たち建設業も、誇りを持ってこの世の中を輝かせることができるような、そんな業界にしていきたいと思います」という宇津木氏の究極の目標は、

 

「業界自体をもっと身近で親しみやすいものにすること」。

 

就業者の誰もが仕事に誇りを持ち、将来の夢を持ち、社会に認められて堂々としていられる仕事であることが、建設業が再び若者に注目されるために絶対に必要なものでもあると確信している。

就労者の高齢化、後継者不足と暗いニュースばかりが報じられがちな建設業界だが、若きリーダーの下、次世代の芽は確実に育っている。

 

artbuilder_all

集合写真

 

 

オビ ヒューマンドキュメント

●プロフィール

宇津木 巧(うつぎ・たくみ)氏…1982年生まれ。34歳。埼玉県幸手市出身。高校中退後、17歳で就職し鳶職となる。2003年に21歳で独立。3年後に法人化する。2015年10月に、合同会社からアートビルダー株式会社に名称を変更。同社代表取締役となり、現在に至る。

 

●アートビルダー株式会社

〈本社〉 〒340-0126 埼玉県幸手市下吉羽1513

TEL:0480-44-9566

URL:http://www.art-builder.jp/

Facebook: https://www.facebook.com/artbuilder.jp/

 

〈佐倉営業所〉 〒285-0806 千葉県佐倉市大篠塚1347-1 

 

 

 

◆2017年1月号の記事より◆

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