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愛商物流株式会社 – 阿部観 代表取締役の考える物流の未来

オビ 企業物語1 (2)

物流に人間力を。

愛商物流株式会社 代表取締役・阿部観氏の考える物流の未来

◆取材:加藤俊/文:菰田将司

オビ ヒューマンドキュメント

愛商物流株式会社_阿部観氏

 

荷物を取りに来てくれて、送り先には素早く確実に届く。物流は生活やビジネスに、必要不可欠な存在になっている。中でも、軽貨物輸送事業は、この物流システムの下支えをしている。ネットショッピングの隆盛などは、こういった軽貨物運送事業がネットワークを作っているからこそ成り立つ。

だが、軽貨物運送事業をビジネスとして見たとき、キツい・厳しい業界というイメージを持っている人も多い。しかし、そんな中で順調に業績を拡大し、更に、数多くの社員を独立させている会社がある。愛商物流株式会社の阿部観代表に話を伺った。

 

 

今必要とされる 軽貨物運送事業

「開業した頃は全く考えていなかったのですが、今は企業より個人宅への配送の方が多い。それにはネットショッピングだけでなく、高齢化の問題があると思います。スーパーへ行けないお年寄りのお宅にパンや弁当などを届けたり。

現在、ドライバーは4000人ほど。業界では大手のほうですね。佐川急便やアマゾン、ヤマト運輸、日本郵政から仕事をもらっています。愛商グループでは昨年度年商90億円ほどの業績を上げました」

 

開業は1999年。物流業界では珍しく100社ほどでグループを作っている。短期間でこれだけ事業を拡大できた理由には、eコマース(電子商取引)の急速な発展がある。

インターネット上の品物の売買は勿論のこと、代金の決裁までをインターネット上で行える。こういったネットの発展や高齢化の問題のおかげで仕事は山ほどあるのだが、それを支える人は足りない、というのが物流業界の現状だ。

 

確かに、軽貨物運送事業は厳しい業界と言われる。ネットでは悪い評判ばかりが上がってくる。しかし、阿部代表はだからこそ挑戦のしがいがあるという。

 

「私は名古屋で飲食業を経営していましたが、27歳の時に失敗して東京に出てきました。もう子供もいたので月に50万円欲しかった。で、やればやっただけ儲かるからって軽貨物運送のドライバーを始めたんです。

最初から事業としてやっていくつもりだったので、すぐに人を雇って事業を拡大していきました。ただ最初は仕事が無くて、同業から仕事を回してもらったりしていました。例えば、ウチが求人広告を載せたチラシに同業が載っていますよね。そこに電話して仕事が余ってないか、あったら回して、と。27歳だからできたんでしょうね(笑い)。

けれど、それでも仕事を回してくれたんですよ。同業からでもいいからとにかく仕事を回していこう、その途中でこっちから仕事を獲っていこう、と。運送業界は営業力が弱いように見えたので、営業に力を注ぎました。電話帳で片っ端から電話したり。

そんな風にがむしゃらにやっていたら、半年後位には、逆にこっちから仕事を振るようになっていましたよ」

 

こうして運送業で利益を上げられるようになった阿部代表は、今度は自分と同じように運送業で稼ぎたい人にチャンスを与えたいと思うようになった。

 

「自分に経験がなかったので社員教育とか研修とかはピンとこなかったんですが、僕みたいに社長をやりたいやつもいるんじゃないかな、そういう人に最初に、仕事をくれたりノウハウを教えてくれる人が近くにいたら、楽なんじゃないかな、と。

普通に就職できない人や訳あって月に50万円欲しい人。そういう人のためにグループ展開していこうと、そう考えるようになって創業2年目からどんどん独立させていった。

グループでやるメリットとしては、失敗例を伝えられること。それは成功例より大事だと思います。みんな同じ失敗を繰り返しているから」

 

 

 

配送業のトラブルは多い。重い荷物を客の目の前で放り投げる、荷物を足で寄せる、「重てえなチクチョー」などと舌打ちをしながら運んでくる、メール便を折り曲げる、応対の言葉遣いが悪い。

別の大手会社の話だが、荷物が一時行方不明になっても連絡がなく、数日後に「見つかった」と連絡が来て、いつもの配達員が何食わぬ顔で謝罪の一言もなく荷物を置いて行った、なんて話もある。

 

「クレーム処理の不守備で、業績も悪くなるし、ドライバーも抜けていってしまう。どれだけビジネスモデルがよかろうと、やはり人次第です。対応の悪いコンビニに行かなくなるのと同じ。近くに別のがあるのならそっちに行こう、となってしまう。

それに気づいて『人間力の向上』を社訓にしました。この仕事は途中で辞めていくものも多い。だからどこに行っても役に立つ事を教えよう、と。仕事のやり方なんて、やっているうちに覚える。

だから、もっと普遍的な人としての魅力をつけて、転職するなら是非うちに来てくれ、と言われる人になれ、と。配達はほとんど人と話をしなくていいので、そういうのが好きという人が多い。荷物はしゃべりませんからね(笑い)。

しかし、ドライバーとしてクライアントと会ったら、やはり愛想のいい人のほうがいい。挨拶をちょっと大きな声でとか、それだけでも人は変わる。配達する力は他社のほうがいいかもしれないけど、挨拶がいいから、愛商にまかせよう、となるかもしれない。一人ひとりがそうしていければ、会社のイメージは変わる。そういうところからやろう、と。

そういう事例を集めて、研修用のDVDをグループの社長と作りました。同業でこういうDVDを作っているところはないと思います。荷物をどのように扱えばお客様に不快な思いをさせないか、これをやるとこうなってしまう、ということを伝えています」

 

今後、業界はどうなっていくのか、と聞くと、阿部代表は、

 

「ヤマト運輸などが労基の問題などで手が届かない仕事がウチに来ています。例えばコンビニの早朝の集荷など。こういうジャンルは元々やれる人が少ない。しかしIT化が進み、それが物流の業界にもシフトしている今、大手の手が行き渡らない時間・場所をカバーするウチのような業種への期待は高まっています。楽しみですね」

 

 

チャンスを掴みたい人を 応援したい

イチローの出身校としても有名な野球の名門、愛工大名電高で野球部に所属していた阿部代表は、当時の経験が経営者としての根本にあるという。

 

「ただひたすら野球に打ち込む日々です。その中でレギュラーになるためには何かを犠牲にするしかなかった。毎日朝5時から夜11時まで練習。しかし、それをしているだけでは他の人と同じで、前に出ることはできない。だから自分の時間、休む時間を削って自主練習する。そういう努力をするから抜きん出ることができる。

今、ウチでは新卒も採りますしスポーツ選手のセカンドキャリアも受け入れています。私自身は大学で学生相手に話をすることもあるのですが、その時に自分の経験を話しています。得られたチャンスを最大限に活かすためには必死にならないといけない。

名をなしたスポーツ選手はみんな、全力でそれに打ち込んでいるから成功している。なのにサラリーマンになったらそうしなくなるのはなぜ?と。会社が人を切るときに、残れる人と辞めてもいいと言われる人はどう違うのか。子供や妻にそういう思いをさせていいのか。そうならないために全力で仕事に打ち込むことには意味があると」

 

入社してくる社員の半分くらいは独立する気でいる、という阿部代表。独立を支援する体制にも気を配っている。以前、高収入の軽貨物の独立開業を謳って軽トラックを買わせるという詐欺が裁判沙汰になったことがあるように、まず車両を買わされることが常識になっているこの業界で、阿部代表は開業へのハードルを大きく下げている。

 

「配達に使う車はローンもありますが、レンタルもあります。他社のようにいきなり買わせることはしません。レンタル料金は一日1000円くらいです。だれでも、開業できるようにしています。仕事そのものは単純。しかしどうしても拘束時間が長くなるので、主婦の方は少ないですね。一日に8時間から10時間はかかる。平均収入は60万くらい。一台で100万稼ぐ人もいます。

ただ、需要が見込まれるのに人が足りていない現状なので、これからは8時間でもいい数字になりそう。だいぶ単価はこっちの言い値が通るようになっています」

 

阿部代表が今注目しているのは、何らかの事情があって養護施設で過ごした子供たちが、社会に出ていくときの援助だ。

 

「社会人としてのスキルをしっかり教えて、卒業生に就職紹介をしたり、逆に企業に卒業生を紹介する。四大卒のエリートでなくてもお金を稼げる、スネに傷がある、表に出たくないという子供達にもチャンスを与えたいと考えているんです。

また子供みらい基金を設立し、出資してくれた企業に感謝状を出す、HPに掲載することなども考えています。協力者にメリットもあるのは大事なことだと思います。ボランティアではなく、ビジネスの一環として、彼らの労働力に期待しているんです」

 

実際に自らの手でチャンスを掴んだ人の言葉は重い。阿部代表には、若い日の自分と同じチャンスを掴みたい人を応援したい、という気持ちが漲っていた。

 

オビ ヒューマンドキュメント

◉プロフィール

阿部観(あべ・みつる)氏…1971年愛知県名古屋市生まれ。愛知工業大学名電高等学校卒業後、愛商物流株式会社を設立して、現在に至る。
◉愛商物流株式会社

〒106-0044 東京都港区東麻布3-1-6 愛商ビル2F

TEL 03-3568-4649

https://ai-show.jp/

 

 

 

◆2016年7月号の記事より◆

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