会議室を簡単に貸し借りできるサイト「Spacee(スペイシー)」
1時間あたり数百円〜。カフェ並みの格安料金の理由とは?
会議室を簡単に貸し借りできる「Spacee(スペイシー)」
株式会社スペイシー 代表取締役 内田圭祐氏
空きスペースを有効活用することで世の中を豊かに!
会議室の貸し借りができるスペースマッチングサイト「Spacee(スペイシー)」は、2013年12月のサービス開始から現在まで、延べ28万人もの人々が利用している。
その人気の理由について、同サイトの運営会社、株式会社スペイシーの代表取締役、内田圭祐氏は、「カフェ並みの料金で会議室をレンタルできるからです」と語る。その内田氏に、低料金の理由や、創業に至るまでの経緯についてうかがった。
カフェとは異なり、情報セキュリティを確保!
会議室をレンタルできるサービス自体は昔からあるが、内田氏は、「スペイシーでは、カフェ並みの利用料金にもかかわらず、情報セキュリティが保たれた会議室をレンタルできます。それが、既存サービスとの大きな違いです」という。
「社内の会議室の空きがなくて……」「たまにはリラックスしながら打合せを……」といった理由から、カフェを利用するのはよくあることだ。
しかし、カフェのように不特定多数の人が同時に利用する場所は、顧客情報や従業員情報などの関係者外秘の情報を扱う会議や打合せには不向きだ。つまり、そのような会議や打合せに街中のカフェを利用すると、セキュリティレベルの高い情報が関係者外の人に聞かれてしまう恐れがある。
一方、会議室をレンタルすれば情報漏えいを気にする必要はない。しかし、カフェを利用する場合のように、一人あたり数百円のドリンク代で制限時間なく会議室を使えるわけではない。
例えば、ある会議室レンタル料金比較サイトによると、渋谷駅周辺のレンタル料の相場は、一番安いプランでも、4名収容できる部屋で1時間あたり1,500円前後、6名収容できる部屋で1時間あたり3,000円前後だ。一方、スペイシーでは、同じく渋谷駅周辺で4名以上収容できる会議室でも、1時間あたり500円からレンタルできる。
空きスペースの有効活用だから低料金! スペイシーの仕組みは「会議室を貸したい人が、その会議室情報をスペイシーに掲載し、会議室を借りたい人は、その掲載情報の中から利用したい会議室を検索・予約できる」となっている。
貸し手は、借り手が支払うレンタル料のうち、スペイシー社の手数料分(レンタル料の20%前後)を除いた金額を得られる。なお、会議室情報を掲載するには、無料の掲載者登録が必要だ。
借り手が会議室を予約する場合も無料の利用者登録が必要だが、会議室の検索や空き状況の確認は、登録者でなくてもできる。なお、最長で3カ月先までの予約が可能だ。
スペイシーに掲載されているのは、都心エリアや横浜エリアの会議室が中心。また、貸し手の掲載情報だけではなく、会議室の口コミ情報も掲載されている。会議室の利用用途は、会議、研修、セミナーを始め、英会話教室、料理教室、ダンスレッスン、パーティー、取材、撮影など、実に様々だ。
なお、スペイシーはスマートフォンやタブレット端末にも対応しており、会議室情報の掲載や会議室の予約も、専用アプリから行える。
「スペースの貸し手は既存の貸し会議室事業者だけでなく、中小企業やベンチャー企業もいます。そして、会議室のレンタル料金がカフェ並みなのは、貸し手の目的が、自社内で使われていない部屋や、会議室の利用予定がない日・時間帯の有効活用だからです」
貸し手の企業は、スペイシーを介し、自社内の空きスペースの借り手を見つけ、そのレンタル料を得る。また、自社の本業として会議室を貸しているわけではないので、会議室のレンタルサービスを本業とする業者よりも低料金というわけだ。
なお、貸し手の企業の中には、「自社のオフィスのテナント料以上の収益を上げている企業もあります」という。
人材派遣サービス会社の営業マンから起業!
「元々は、教育用インターネット動画サービスを手掛けるため、独立・企業の道を選びました」という内田氏は、大学卒業後、人材派遣サービス企業に新卒入社し、営業を担当していた。その内田氏が、なぜ起業に至ったのか、その想いや経緯をうかがった。
「3年近く人材派遣サービス会社に勤めた後、1年ほど世界各地を放浪しました。その放浪時、世界中どこにいても、インターネットさえ利用できれば、様々な動画コンテンツを見ることができました。
そのことがきっかけで、インターネット動画を介して多くの人が教育コンテンツを共有できれば、社会全体の生産性の向上につながると考えました」
その放浪後、起業の準備として、ホームページ制作会社で働き始める。
「その当時、現在の当社の取締役副社長を務めている、征矢(そや)から、まずはWeb業界のことをしっかり学ぶべき、というアドバイスをもらいました。そこで、征矢の友人が経営するホームページ制作会社で働かせてもらうことになりました。実は、征矢は、人材派遣サービス会社時代の同期です」
そして、約1年半、Web制作のディレクション・マーケティング・営業などの仕事に携わり、2009年9月に最初の起業をする。
「事業内容は、太陽光発電システムの見積比較サイトの運営です。当時、民主党政権のもと、太陽光発電の電力買取制度が開始されるタイミングだったので、資金づくりができる事業として始めました」
その後、同事業を上場企業へ売却するも、「それでもまだ、当初の目標、つまり、教育用インターネット動画サービスの立ち上げに必要な資金は準備できませんでした。
そこで、その事業売却で得た資金を元手に、今の会社であるスペイシーを2013年10月に起業しました。以来、順調に業績を伸ばしています」
なお、スペイシーの累計利用者数について、20万人超を記録した2016年1月時点と、その1年前の2015年1月時点を比較すると、274%増にもなる。
一人ひとりが豊かになれば、世の中の問題を解決できる!
内田氏は、空きスペースの有効活用というビジネスモデルの社会的意義についても語った。
「当社のビジネスモデルは、世の中全体をより豊かにすることができます。それは、既に一人ひとりが持っているものに新たな価値を与えることができれば、各自がより豊かになれるからです。
スペイシーは、既にユーザー一人ひとりが抱えている空きスペースに新たな価値を与え、各自に利益をもたらしています。そして、社会の中で、一人ひとりが豊かになれば、いろんな世の中の問題の解決につながると考えています」
そして、こう続ける。
「大学時代、世界各地の紛争・環境問題の解決を課題とする総合政策学部で学んでいました。その中で、世の中の問題の解決につながるビジネスをやりたいと思うようになりました」
総合政策学部は比較的新しい文系学部だ。1990年に、慶應義塾大学にて日本で初めて開設され、以降、他大学でも開設されるようになった。総合政策学は、経済学、経営学、政治学などの個々の学問領域の垣根を超えて、様々な社会諸問題を個別最適ではなく、多面的な全体最適の視点で捉え、その解決を図ることを目的としている。
ある大学の総合政策学部では、いわゆる〝持続可能な社会〟の実現を目標の1つとしている。持続可能な社会とは、80年代以降、自然環境保護に取り組む国連機関などで提言されている、開発と環境の共立が可能な社会概念のことだ。
しかし、開発と環境の共立は難しい。例えば、途上国における開発は、その国民の生活を豊かにする一方、地球環境に悪影響を与える。そして、総合政策学では、開発と環境、各視点からアプローチを行い、両者が共立できる仕組みづくりを目指している。
最後に、今後のビジョンについてうかがった。
「様々なものを様々な形で有効活用できるビジネスプラットフォームをつくりたいです。駅から遠い場所に空きスペースがあれば、人が集まる会議室ではなく、倉庫として活用した方がよいかもしれませんし、街中のほんの少しの空きスペースも、駐輪場として活用できるかもしれません。
将来、そのようなビジネスができれば、もっともっと、社会全体の中で、一人ひとりが豊かになれると思います」
プロフィール 内田圭祐(うちだ・けいすけ)氏
関西学院大学総合政策学部卒業。2004年、株式会社リクルートスタッフィングに入社し、人材派遣サービスの法人営業を担当。その後、Webサイト制作会社にて、ネット広告の企画・営業職を経験し、2009年、株式会社アイデアマンを設立。同社にて、太陽光発電システムの一括見積りサイトを運営後、上場企業へ事業譲渡。2013年10月、株式会社スペイシーを設立すると同時に、同代表取締役に就任。柔術白帯。
●株式会社スペイシー
〒153-0063 東京都目黒区目黒2-11-3 印刷工場1階
■貸し会議室・レンタルスペースの予約サイト Spacee [スペイシー] https://www.spacee.jp
■コーポレートサイト http://www.spacee.co.jp
◆2016年7月号の記事より◆
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