アーバンシステム株式会社 建物管理から環境管理へ

◆取材:加藤俊

アーバンシステム株式会社小柴卓人氏

 

清掃、ビルメンテナンス会社というと、こう言ってはなんだが、汗臭い、男くさい現場、というイメージを抱くという人も多いだろう。しかし、アーバンシステム株式会社の小柴氏とそのオフィスは、あくまでもサラリと、どこか爽やか。起業して20年余り、小柴氏は、どのように事業展開のきっかけをつかみ、どのように人材育成をしてきたのだろうか。その極意と、将来への展望を語っていただいた。

 

清掃会社への突然の転職。2年間は修業の時代と決め、起業・独立を目指す

創業は1990年、「最初は単純にビルの清掃から始まりました」と語る代表取締役の小柴卓人氏。それから20年余り、アーバンシステム㈱として現在はビルやマンションのメンテナンスや補修などの総合管理から、オフィスビルのリノベーション、マンションのリフォームまで、幅広い業務を展開している。

 

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「独立のきっかけは、あまりにも突然の思いつきというか、今考えると笑ってしまうんですけどね。当時、大学を卒業して3年目で、コンピュータ関連の会社でプログラマーやSEをやっていました。ところが、プログラミングの世界は実力の世界なので、自分の先行きを考えると限界が見えてしまったんです。

それである日、窓の外をボーッと眺めていたらビルの窓清掃をする人が目に飛び込んできて、なんかいいなぁ、伸び伸びと空を飛んでるみたいだなぁと。そう思ったら居ても立っても居られず、さっそくビル清掃会社に転職していました(笑い)」

 

転職したビル清掃会社では入社直後から独立を目指して、修業のつもりで業務に励んだという小柴氏。

 

「清掃の世界というのは、なにしろ段取りが大事だとわかったので、その会社にいた2年間で、段取りを徹底的に学んで、かつ、独立後にもつながる人脈を築くことも強く意識して動いていましたね」

 

 

大手ハウスメーカーからの直接の依頼が、新たな事業展開のきっかけに

自ら、独立までの修業だと覚悟して入った清掃業界。しかし、長年清掃業務に携わっている、いわば〝掃除職人〟の先輩たちには、大学を卒業して3年目の20代の小柴氏の考え方が通用しないことも多く、甘く見られているなという隔たりも感じた。

 

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「だから、独立直後は、とにかく徹底的に勉強し直そうと思いましたね。学生時代はほとんど勉強しないで、バンド活動など楽しく過ごしていましたから、今さらながらという感じで新聞を舐めるように読んで社会情勢を把握。週刊誌も政治・経済記事だけでなく、ゴシップ記事も読み、果ては女性週刊誌の芸能ネタまで、次から次へと読みあさりました。どんなことでも、とにかく世の中のすべてを吸収したかったんです」

 

大きな躍進のきっかけは、大手ハウスメーカーからの仕事だった。元請けを通じて携わっていた仕事だったが、ある時、「よくやってくれるから」と、直接の依頼が。

 

「清掃の仕事をやっているうちに、掃除という範囲を越えて、ちょっとした補修やメンテナンスの仕事も頼まれるようになりました。それを余分な仕事と考えず、これも仕事の広がりの一つだと、丁寧に、実直にこなしていました。まぁ、単純に喜んでもらえるかな、と思ってやっていただけなところもありましたが(笑い)。でも、その頑張りを認めていただいていたわけで、お仕事をもらった時は本当に嬉しかったですね」

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社員の相談にのる時は、おごることなく、それぞれの立場に立って対等に

大手ハウスメーカーから、補修やメンテナンス業務を依頼された当時は、戸建て住宅のみならず、マンションメーカーでも、建物のメンテナンス部門を強化しようという動きが出始めた頃だった。その時流にも乗ることができ、清掃にプラスして、補修や定期点検などの業務を急拡大していくことに成功した。年を跨ぐごとに、スタッフの数も急増していったが、小柴氏が人材に関して心を配っていることは、どんなことだろうか。

 

DSC_1589 (853x1280)「私は、人を引っ張っていくとか、カリスマとかいうタイプでもないので、とにかく社員へは、皆がビジネスのパートナーであるという認識を持って接するようにしています。彼らと近い距離にいたいんです。それぞれの社員の立場に立って、おごることなく、お互いに対等だという感覚を失わないように話を理解することを心がけています。

その上で、当たり前のことをしっかりやってくれる社員をきちんと評価し、たとえば私と違う考え方を持った社員をはじいてしまうのではなく、私にはない能力を備えている貴重な人材だとみなして、かえって責任ある業務を任せるようにしています。会社の将来を想ったら、多様な人間がいるにこしたことはありませんからね」

 

 

環境保全・環境浄化につながる事業も強化。それを社会貢献の一助に!

「百年企業にしたい!」、そう力強く語る小柴氏だが、将来への展望は、決してギラギラしたものではないとも言う。

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「信頼を重ねて、年々、着実に売り上げを伸ばすことで、安定した雇用を生み、かつ、社会にも貢献できる企業を将来にわたって継承していきたいですね。実は事業継承してくれそうな人間はもう決まっていて、これが私とはまったく違うタイプなんですが、とても信頼がおける人間なんです。安心して任せることができますね」
2代目も決まっていることで、建物管理が今後も要であることに変わりはないが、いま小柴氏の関心は環境分野に移っている。アーバンシステムは環境に対する取り組み意識の高い企業である。中でも力を入れているのは、省エネにつながり、ヒートアイランド現象の軽減にもつながるNEOCOATという建物の外壁用塗料の販売だ。

 

「この塗料が凄いんです。従来の省エネ型塗料は熱をはね返すだけで、建物の中の省エネに一定の効果は見込めるものの、性質上、簡単に言うと、外壁まわりの温度を上げてしまうとも言えるものでした。一方で、当社が扱っているものは、〝消熱塗料〟と呼んでいるのですが、文字通り熱を吸収して消し去り、塗布した外壁周辺の温度を上げないという優れものなのです」
環境に関する話を語っているときの小柴氏は〝熱い〟。今後も、環境保全や浄化という切り口で、快適な住まいや自然環境をつくり出すことに貢献したいと力強く語っていた。情熱を注いで、本気で取り組める問題が目の前に見えている。小柴氏の次なる一手に注目したい。

プリント

プロフィール

DSC_1576 (1280x853)小柴卓人(こしば・たくと)氏…1960年東京都生まれ。青山学院大学経済学部卒業後、コンピューター関連会社にプログラマーとして勤める。3年後清掃会社に転職して、1990年にアーバンシステム株式会社を設立。代表取締役として現在に至る。

アーバンシステム株式会社
〒179-0081 東京都練馬区北町2-29-10 マルニビル1F
TEL 03-5398-1500

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町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年11月号の記事より

町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年11月号の記事より