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究極のもんじゃ こぼれや誕生秘話

 

オビ 企業物語1 (2)

多くの食通を唸らせる究極のもんじゃ「こぼれや」誕生秘話

◆取材・文:加藤俊

オビ ヒューマンドキュメント

こぼれや (3)

築地の厳選食材、ミシュラン天麩羅屋の天かす、究極のダシが織りなす一品

 

東京月島にオープンした『こぼれや』のもんじゃ焼きが『究極のもんじゃ』として話題になっている。この一品を作り上げた山口雄輝さんとは何者なのか?

 

月島に誕生した『こぼれや』とは?

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鉄板の上で大ぶりの穴子とキャベツが巧みなヘラ捌きで炒められていく。立ち上る煙は芳ばしい。程なくキャベツがしんなりすると、手際よく土手が作られていく。続いてダシ汁が注がれると鉄板の上を小気味良い音が爆ぜだす。

この瞬間がもんじゃの醍醐味だ。しばし耳を傾けるうちに否が応でも食欲が湧いてくる。

 

こぼれや (8)

 

東京都中央区月島。そこは昔懐かしい長屋が平成の今も変わらず密集している下町だ。その風情あふれる町並みの中心地に位置する「西仲通り商店街」は別名「もんじゃストリート」と呼ばれる都内屈指の観光地。もんじゃ屋の数は約75店に上る。

この観光客で賑わう月島に、2015年の暮れ一風変わった新しいお店ができた。その名も「こぼれや」。名に違わぬように、こぼれるように盛られた具材が特徴で、その頂上には大ぶりの穴子や伊勢海老が踊る。

 

究極のもんじゃ

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今この「こぼれや」のもんじゃが、多くの食通を唸らせ話題になっている。ネット上には興奮が感じ取れるコメントが並ぶ。

曰く「味が違う。雰囲気が全然違う。もんじゃの概念が覆される」。また、ある者は「和のテイストの店内に相応しい和風創作もんじゃ。考え抜かれた出汁と築地の新鮮な素材がマッチしている」とコメントしている。

極めつけは、「数あるもんじゃ屋の中でも一際輝く名店となる可能性を秘めた新店だと思う」という太鼓判まで押す始末。

 

舌の肥えた愛好家達がこうも絶賛するように、こぼれやのもんじゃは何から何まで徹底してこだわり抜かれた「究極のもんじゃ」と言える。いったい何が違うのか。

 

高級料亭のような空間で

内装

 

お店の雰囲気からして他店とは異なる。実は、冒頭のもんじゃを作る描写も大衆酒場や駄菓子屋の延長線上にある典型的なもんじゃ屋を舞台としたものではない。高級料亭さながらの落ち着いた空間での一幕なのだ。

 

こぼれや (11)

 

そしてまた、暖色系の淡い明かりが照らす店内のなかで天井から投げられる間接照明が良い役割をはたしている。仄かな明かりが鉄板に注がれることで、もんじゃは従来の大衆的なイメージを超越した上品な「なにか」となって見えてくるのだ。この演出が小憎い。かなり期待を膨らませる。

 

こぼれや (9)

 

肝心の味だが、その膨らんだ期待に120%応えてくる。抜群に美味いのだ。口のなかに広がった奥深い味わいが余韻を残しつつ溶けていく様は感動的ですらあり、誰もが「こんなもんじゃは食べたことがない」と感じるだろう。

筆者はこのもんじゃを作った男のことを知りたくなった。

 

絶対に負けないビジネスとしてもんじゃ焼きを選んだ

こぼれや 山口雄輝氏 (2)山口雄輝さん

実は、オーナーの山口雄輝さんは29歳と若い。本業は創業54年になる中堅不動産管理会社「株式会社信光オールウェイズ」のサラリーマン。といってもオーナー一族なので、3代目次期社長が確定的。

「絶対に負けないビジネスとしてもんじゃ焼きを選んだ」と語る口ぶりから察するに、将来の経営の勉強のための挑戦ともとれる。

 

ちなみに、山口さんは多才で「自転車一つでお金を持たないでの日本縦断」「バックパッカーとしてのアジア歴訪」「2015年アフリカのキリマンジャロ登上」。運動が大好きで山も好き、何より冒険家というパワー溢れる人。

こんな人が作る「もんじゃ」ってだけでワクワクする。背負った物語を聞きたくなった。

オビ インタビュー

こぼれや (2)

徹底したこだわり

―ズバリこぼれやのもんじゃは他店と何が違うのか。

全ての要素で「圧倒的な差別化」というものをコンセプトにしています。まず、視覚的なところでいうと、「溢れるほど山盛りに盛りつけた具材」。そして、妥協しない「味」へのこだわり。また、この取材もそうですが、「プロモーション展開」を積極的に行なっていく戦略。そして「内装」のこだわりです。

 

―1つずつ聞いていきたい。具の盛り付けは確かにインパクトがあるが、そこにどういった意図が隠されているのか?

ズバリお客様に目から喜んで頂きたいからです。築地で仕入れた伊勢海老や大ぶりの穴子を盛りつけることで、他店との違いを感じて頂けるかと。何より、今の時代は視覚的にも楽しんで頂けるとFacebookやツイッターといったSNS の拡散が狙えますよね。

「なんか見た目が凄いぞ、このもんじゃって」。そういった意味で、具をこぼした盛り付けを行っています。

 

―ということは、天井からの間接照明も、もんじゃを写真で撮ったときに綺麗に映えることを見越してなのか?

いっそう視覚的に美味しそうに見て頂くことを期待しています。

 

―味に関しては?

ここは本当に苦労して試作に試作を重ねました。現在のラインナップに辿り着くまでに、三百回ぐらい調合を繰り返したんじゃないかな。その中から自信を持って「これは美味い!」と思える味付けを一品一品提供しています。

下地作りも通常サラダ油を使うところをイベリコ豚のラードを使っています。これによって独特な香りが生まれるんです。

 

―スープは? ラーメン屋のような寸胴があるが。

はい、もちろん徹底的にこだわっています。一般的にもんじゃのスープは小麦粉を溶いたところにウスターソースで味付けします。こぼれやの場合は、豚骨スープの背骨をこの店舗の奥で実際に煮ているんです。

5時間煮込んだ豚背骨と地鶏を融合し旨みを凝縮させた出汁です。おっしゃるように、やっていることはラーメン屋に近いです(笑)。

 

こぼれや (7)

 

―具もこだわっている?

こぼれや (5)巧みなヘラ捌きを見せる店長

もちろんです。魚は築地の仲卸から直送しています。鮮度抜群の新鮮な食材を安い値段で仕入れることができるのは店長が築地市場でずっと働いていたからです。

 

また、どうせこだわるなら全てにこだわりたかったので、使う揚げ玉も一番美味いものをと思ってミシュラン掲載の銀座名店「天ぷら阿部」さんの最高級天かすを利用させて頂いております。

 

―どうやってコネを作ったのか?

なにもありません。単純に歩き回りました。天麩羅屋さん各店を回って、「最高のもんじゃを作りたい」という熱意を伝えてお願いしますと。それで阿部さんに快諾してもらったんです。

 

―内装はもんじゃを食べる雰囲気ではない。多くの人がもんじゃに期待する下町の大衆店的なところから外れるのは、戦略的にどうなのか?

こぼれや (1)

もんじゃストリートにはおっしゃる下町の大衆酒場や駄菓子屋のイメージのお店は数多くあります。確かに、金太郎飴のように均一化されたそうした店が並ぶ雰囲気が月島の親しみやすさであり、良さでもあります。

ただ、だからこそあえてそこから外した路線も有りだなと。それで江戸情緒溢れる高級路線を打ち出すことにしました。デートなどのシーンでもムードを壊さない空間がコンセプトです。

ちなみに左官業で日本で1番の会社と組んで内装をやってもらいました。

 

―プロモーションに関してのこだわりは?

ネットプロモーションに力を入れています。インスタグラムの会社と提携したり、アナログプロモーションで言うと色々な企業とタイアップさせてもらっています。

 

■「日本最高だよ!」と言わせたい

こぼれや 山口雄輝氏 (1)

 

―山口さんは非常にビジネスライクな発言が多いが、このもんじゃは具材などビジネスで考えると行き過ぎたこだわり方だ。利益率は他店と比べたらかなり落ちると思われるが。

確かに利益率は悪いです(笑)。でも、そこじゃないんです。ぼくがもんじゃをやるのは非常にシンプルな話なのです。

もんじゃは日本を感じさせてくれる食べ物です。そして、可能性が広がる伸びしろがまだまだあります。月島を訪れる観光客の方は年々増えてきています。しかし、そういった方に各店が「もんじゃ最高だよ!」と思ってもらえるような感動を提供できているかというと、必ずしもそうは思えないところがあります。

これ、日本人なので変えていきたいですよね。外国人が来たときに「こんなに美味しいものがあった!」「日本最高だよ!」と言わせたい。日本人なので日本のことを良い国だと思ってもらえるって嬉しいですから。

そうなると、やはりテキトウに作っても感動してもらうことはできない。これぐらい真剣にこだわらないと。

 

―しかし、外国人の目には、もんじゃは見た目からして抵抗があると思われるが。

食ってもらえたら勝ちという自信はあります。実際食べて頂いた方は、外国人日本人に限らず皆さん決まって喜んでくれますから。

 

 ■なんで「もんじゃ」なのか

―本業が不動産管理会社とのことだが、なぜ畑違いの飲食で、また「もんじゃ」を選んだのか? ここまでこだわりから察するに、相当な「もんじゃ愛」があるのか?

いえ、もんじゃを愛しているからもんじゃ屋というワケではないんです。たまたまこのもんじゃ業界に精通している友人がいまして、オペレーションから人の流れまで色々と話を聞けたんです。それで、既に神田で飲食店を経営して飲食の勝手はわかっていたこともあり、新しくこの業界なら勝てる、そう思ったのがきっかけです。

 

―勝てると踏んだ理由は?

もんじゃストリートにあるほとんどのお店を食べ歩きました。結果として、どのお店もウスターソース味で統一されていることがわかりました。

だから冒険しているお店が出てきて、味の差別化を明確に打ち出したら、特徴が出るだろうなと。それで、もんじゃのイメージを良い意味で越えられるような究極のもんじゃを作ろうと決めたんです。

 

―月島は観光地だ。小売や飲食店などによく見られることだが、歴史や由緒ある土地柄に新規参入するのは参入障壁や規制などがあり難しい場合が多い。非常にクローズドな世界で新参者はあまり良い目で見られないというか。

コテコテの下町なので無きにしもあらずですが(笑) 皆筋を通せば非常に良くしていただける事もわかりました。でも、物件を見つける際は難航しました。この地域は仮に空き店舗がでたとしても情報が表に出ることがない。

不動産屋さんに足繁く通って8ヶ月かかった頃にこのテナントが出てきました。それまでは、何度も足を運び、実際に各店舗に飛び込み営業をしたりもしました。チラシを作って、こういう条件で毎月これだけお渡ししますので譲ってもらえませんかって。

当然ながら歓迎されるわけもなく、塩を投げつけられたこともあります。それでも、何としてでも月島に店を出したかったんです。

 

―ということは現在進行形でこぼれやは他店から厳しく見られていると?

こぼれやは開店して間もないお店です。当然、同業者の皆様からシビアに見られている時期なのだと思います。

ぼくとしては、まぁ、だからこそチャレンジのしがいがあるよねと燃えています。地域の皆様にいつの日かご理解頂けるような正しい行いをしていけば自ずと道は開けると、そう思っています。

 

―最終的にどうしたいのか?

これは夢ですけど、数年後に「街が変わった。外国人が増えた。原点はこぼれやだった。街全体が潤うようになった」そんな声が聞けるようになりたいですね。

 

―そうなる力をもっているもんじゃだと思う。頑張ってください。

 

 

もんじゃ焼きは昔は子どものおやつだった。鉄板の上にメリケン粉を溶いて薄く焼いたものに、醤油や蜜をつけて食べさせたのが、「もんじゃ焼き」の始まりだと言われている。やがてウスターソースを混ぜるようになり、キャベツ・切りイカ・あげ玉などを加えるようになり、今のスタイルとなった。

この駄菓子の延長線上にあるもんじゃに無限の可能性を感じて、至高の一品を作ろうとしている山口さん。

「ありがとうを沢山もらえる人間になりたい」

そう語る気持ちの良い若者が作るもんじゃをぜひ食べてもらいたい。

 

オビ ヒューマンドキュメント

山口雄輝(やまぐち・ゆうき)氏…サラリーマン実業家。サラリーマンとして働きながら、 個人事業主とビジネスオーナーを兼務。 〝ありがとうの創造″を軸に事業展開を行う。

2011年 現メットライフ生命保険株式会社

2011年度入社社員MVP

2013年 現職の株式会社信光オールウェイズ入社

2014年 BBQバルMomTree で個人事業開始。

2015年 合同会社delta 代表就任。 月島もんじゃ こぼれや 創業。 もんじゃを世界に発信し街に貢献していく。

 

こぼれや

http://tsukishima-monja-koboreya.com/

〒104-0052 東京都中央区月島3-16-9

℡050-5785-9694

 

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