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日本再生の鍵を探せ 企業x学校物語

失敗からちゃんと学べる経営者とそうでない経営者

 

オビ コラム

イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ!その18

失敗からちゃんと学べる経営者とそうでない経営者

◆文:佐藤さとる(本誌副編集長)

 

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あの暑い夏からもう30年が過ぎてしまった。

1985年8月12日。羽田発、大阪伊丹空港行きの日本航空123便が群馬県の御巣鷹山尾根に墜落し、乗員、乗客520人の貴い犠牲者を出し、4名の負傷者を出した。航空機の単独事故としては世界最悪だ。

航空業界に与えた影響は計り知れず、これを機にさまざまな安全対策がとられるようになった。あれから日本航空は墜落事故を起こしていない。だが航空業界全体を見渡した時に航空機事故が減ったかというとそうとはなっていない。

事故をなくす万能な安全策はないのかもしれない。事故対策が事故を引き起こしている面もあるからだ。

今年3月に起きたドイツのルフトハンザ傘下のLCC、ジャーマンウィングス9525便の墜落事故では、強化されたコックピット侵入対策がアダとなって、副操縦士の暴走を招き、事故に繋がった。

 

今どき、飛行機を使わずにビジネスを展開することは難しい。とくに海外と取引する企業においては不可能に近い。だから我々、乗客ができることは、「事故が起きませんように」と、信じて祈ることだ。

対策についてはいろいろアイデアは出せよう。だが当事者がその気になって進めない限りは、いかに優れたアイデアでも画餅に帰してしまう。

だからせめて、我が身の失敗はちゃんと糺しておきたい。我が身の失敗を棚に上げて、人をああだこうだ言うのはワタシが最も嫌うことだからだ。嫌っているが、そういう非難揶揄はしょっちゅうやらかす。そう、〝にんげんだもの……〟

 

問題は失敗が起きた時にそれを隠してしまうことだ。とくに日本人は多い。

なぜか。それは日本人には恥の文化が染み付いているからだ。 「失敗学」を提唱した工学院大学の畑村洋太郎教授によれば、「日本人には2つの恥が染み付いている」という。1つは「社会規範に対する恥」。組織や協調性を重んじるあまり、何か失敗が起こって損失が出たとき、それを隠そうとする。東芝のケースはその典型だろう。

 

もう1つが「自分の良心に対する恥」。自分はこうしたいと思っているのに、そういう行動を取れなかったことに対する「恥」の意識だ。

会社はどうあれ、自分で正しいと思ったことをやり通す。しっかりした価値基準を持ち、それが失敗に終わったとしたら、素直にそれを認め、隠すことなく事実を直視する。「言ってることは分かるが、なかなかできないのだよ、日本人だもの……」と言ってしまっては、進化できない。

 

こうした問題には、逆のインセンティブが効果的だ。つまり、自分の失敗を公表した人間に報償金などで報うことだ。もちろん導入には勇気がいる。それもトップの。でもそれで大事故や大失態を未然に防げるならお安いものだ。

 

失敗を糺せないのは、そもそも経営者や作業管理者に染み付いている思考が問題だとする人もいる。立教大学教授の芳賀繁さんは、次の3つを挙げる。

①ほかのみんなも同じ作業をしているのに、しくじったのはアイツだけだ。だからアイツが悪いのであって、設備や作業方法に問題はない。

②マニュアル通りにやっていれば事故は起きなかった。だからマニュアルを守ればいいのであって、そのほかの対策は必要ない。

③緊張感が足りないから不注意になるのだ。注意が足りないからミスをするのだ。再発防止のため、いっそう注意喚起をしなければならない。

 

いずれも間違った考えだ、と芳賀さん。

①については、そもそも失敗は確率的に起こるので、起こしたその人がたまたま運が悪かった可能性が高い。よって設備や仕組みに原因を探るべきだと。

②については、そもそもなぜマニュアルを守れなかったのかと考えるべきだと。

③については「注意の失敗」こそが、失敗の原因なのだから「注意が足りない」というのは、失敗を放置することにほかならない、と。

とくに①と③については、身に覚えがある人が多いのではないか。「ちゃんとしろ!」「注意しろ!」という言葉がいかに失敗対策、事故対策に空虚であるか、いかに「ちゃんとしていないか」を知っておくだけでもミスや事故はかなり防げるはずだ。まずは「失敗やミスは自分には起こらない」と思っている錯覚から覚めることだ。

イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ。

 

オビ コラム

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