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平成27年路線価の公表と不動産投資による相続対策

 

オビ コラム

平成27年路線価の公表と不動産投資による相続対

 ◆文:岸田康雄(事業承継コンサルティング株式会社/公認会計士・税理士)

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路線価が公表

今年から相続税が改正され、税金を払う人が増えるということでにわかに注目され始めた路線価が、国税庁から発表されました。アベノミクス効果で株価が上昇傾向を強めるなか、 東京や大阪では地価の上昇率が昨年より拡大しました。

路線価とは、相続税や贈与税を算出する際の基準となる地価のことです。毎年1月1日時点の地価を基に道路の一定区画ごとに1㎡当たりの評価額を求め、7月1日に国税庁が発表しています。地価の調査地点のうち住宅地や商業地、工業地などの標準宅地の前年からの変動率は、全国平均でマイナス0.4%です。マクロ的には日本の人口減少が地価に反映されているのでしょう。

都道府県別では、首都圏の1都3県や大阪府、愛知県など大都市圏で平均値が上昇しており、東京都や大阪府などでは上昇幅が前年より拡大しました。

都道府県庁所在都市の最高路線価のうち最も高かったのは東京都中央区銀座5丁目の銀座中央通り、すなわち「鳩居堂」前で30年連続です。ここの路線価は上昇率も日本一で、14.2%アップしています。

 

最高路線価の上昇率が2ケタに達したのはほかに、名古屋市中村区名駅1丁目の名駅通り(11.5%)、広島市中区胡町(えびすちょう)の相生通り(10.2%)、大阪市北区角田町の御堂筋(10.1%)となっています。

 

今年3月の北陸新幹線開業でにぎわう金沢市堀川新町の金沢駅東広場通りは9.3%アップで上昇率6位、富山市桜町1丁目の駅前広場通りは4.8%アップで同12位にランクインしました。

大都市圏を中心に地価が上昇している要因は、アベノミクス効果で株価などが上昇し、いわゆる”資産効果“でマンションなど不動産の需要が高まっていることです。日銀による金融緩和で銀行の手元資金が増え、不動産投資や再開発事業にお金が回っていることも大きいでしょう(メガバンクが不動産担保ローンを積極的に貸し出しています)。さらに、東京都心では2020年のオリンピック需要も効いています。

 

しかし、地価が上がったからといって手放しで喜べない面もあります。というのも土地を持って死んでしまった場合、相続財産の課税価格が膨らむからです。これまでは資産家だけが払うものと相場が決まっていた相続税ですが、今年からは「普通の人」でも相続税を払わなければならないケースが増えてきました。

ただでさえ相続税改正で基礎控除が下がったのに、路線価がアップすればますます課税対象者が増えてきます。そうなると、地価の高い首都圏で土地を買うのを諦めたり、地方に移り住む人が増えるのではと思う人もいるかもしれません。

 

しかし、実際はその逆です。

不動産投資の事業という観点からは首都圏の不動産を持つほうが有利です。なぜなら、首都圏の土地は今後も値上がりが見込まれるのに対して、地方の土地は今後は値下がりが見込まれるからです。少子化の日本経済において、首都圏の人口だけが維持ないし増加し、地方の人口は減少の一途を辿ります。土地の需要は住んでいる人の数によりますから、人口が増える地域に土地を持たなければ不動産投資がうまくいきません。

また、相続税の節税の観点からも首都圏の不動産を持つほうが有利です。なぜなら、高くなったとはいえ土地の相続税評価は市場価格よりも低く評価されることが多いので、相続税評価と市場価格の乖離が大きな大都市圏の土地を持つほうが、大きな節税効果を享受できるからです。

さらに、地価の高い都心では同じ価格で郊外より狭い土地しか買えないため、330㎡や200㎡など適用面積に限度額が設けられている小規模宅地等の評価減の特例を適用できる割合が高いことが大きなメリットとなります。

 

地価の高い都心部に住んでいる親の自宅の土地が狭いと、同居している子などが相続するときに居住用宅地の評価減として土地が8割引きになる特例をフルに利用できるケースが多くなります。この特例の対象面積は330㎡までなので、郊外などで広大な一軒家を構える土地だと特例が使えない部分が出てきてしまいます。それゆえ、郊外の一軒家を売却して、都心部のタワーマンションに移り住むという高齢者の相続対策が増えてきています。

私は地方のお客様に相続対策のアドバイスをすることが多いのですが、地元の土地を売却して東京の不動産(マンション)を購入することを指導しています。

 

いつも聞く話に、「いまの東京は不動産バブルで、高騰しすぎているのではないか、東京オリンピックの後は不動産価格は下落するのではないか?」というものがあります。これについて私は、「多少は下落するかもしれませんが、相続税の節税効果を考えれば、大勢に影響はない」と考えます。

もちろん、理論価格を超える高値で購入してしまうと、大きな投資損失を被る可能性があります。しかし、理論価格自体が上がっていることについてはそれほど気にする必要はありません。なぜなら、相続対策として首都圏の不動産を取得しようとする需要が圧倒的に大きく、今後もそれが継続するからです。

 

六本木ヒルズの価格は高すぎるのか?

例えば、六本木ヒルズのレジデンスを考えてみましょう。築10年を超え、内装は少々古めかしいものとなっています。しかし、坪単価は800万円~1,000万円(A棟、B棟)で推移し、ほとんど値下がりしていません。投資利回りは僅か2%程度です。この点、六本木の相場は坪600万円くらいでしょう(人気のある築浅のThe Roppongi Tokyoでも坪700万円前後)。

しかし、六本木ヒルズは投資だけでなく実需(オーナーが自分で住む)が強いことに加えて、オーナーになることのステイタス(「俺は六本木ヒルズのオーナーだ!」と自慢できる点)など、地方の投資家からの憧れなどの要因によって、依然として高い価格を維持しています。何より、六本木ヒルズの物件が売りに出されることは、ほとんどありませんから、出るとすぐに買い手が付いてしまいます。

六本木ヒルズは、割高で買っても大丈夫であるとされる典型的な物件です。なぜなら、割高で買っても割高で売り抜けられるからです。六本木ヒルズの価格が暴落するような事態が起きるとすれば、もはや日本の不動産市場そのものが壊滅してしまうでしょう。

 

加熱するタワーマンション投資

「タワーマンション節税」という言葉が一般化してきているように、タワーマンション投資の人気が加熱しています。当法人はスタイルアクト社(沖有人社長)と提携してお客様にタワーマンションを活用した相続対策をアドバイスしていますが、タワーマンションの購入が非常に増えてきています。

タワーマンションなど区分所有物件は相続税評価も市場価格を大きく下回ります。タワーマンションは同じ建物に数多くの世帯が住んでいるため、1区分当たりの敷地面積が極端に小さくなるからです。したがって、高さが高いマンションの物件(同時に価格も高くなります)を買えば、敷地権が小さくなり、相続税評価は小さくなるということです。

一般的に低層階より高層階のほうが眺望がいいから販売価格が高くなり、それが相続税評価と市場価格の乖離をもたらすメリットと説明されています。確かにそうですが、それだけがメリットと考えるのは間違いです。高層階の価格が高いのは事実ですが、実際のところ、低層階と高層階の価格差はそれほど大きくありません。

また、高層階の物件を買いたくても、市場に売りに出ている物件はほとんどありませんから、相続対策のために買いたくても買うことはできません。本当のメリットは、敷地権割合が著しく小さくなることがタワーマンションの最大のメリットなのです。したがって、小規模なタワーマンションよりも、大手建設会社が開発した大規模なタワーマンションのほうがメリットが大きくなります。

今後、地価が上がり、相続税の負担が重くなればなるほど、タワーマンションを買おうとする人が増えることでしょう。しかし、タワーマンション人気に便乗して、理論価格を大きく上回る高値で売却しようとする既存オーナーがいることを忘れてはなりません。不動産価格は、立地条件によって決まります。賃料(利回り)、空室率、土地価格の動向によって不動産価格は決まります。理論価格を超える高値で買ってしまえば、買った瞬間に含み損失が発生します。それでは、相続対策として節税を実現したとしても、個人の経済的利益が減殺されます。不動産物件選びには注意しなければなりません。

 

したがって、不動産投資は慎重に行わければなりません。タワーマンションはとても人気があるため、売り物が出てきたら、すぐに買付けを入れなければ買うことはできません。仲介業者は「これはとてもよい物件です。ぜひ買いましょう!いますぐ『買付け』を入れなければ買えませんよ!」と言ってくるはずですが、それが本当に良い条件なのかどうか瞬間的に判断することは容易ではありません。

 

私はお客様からそのような電話相談があったときには、その日のうちに妥当性を分析して回答するようにしています。タワーマンション投資には、資産税と不動産投資に詳しい税理士のアドバイスは不可欠だと考えます。

不動産投資の妥当性を判断する観点は数多くあります。その中から、このコラムの読者の方の関心の高そうなものをいくつか列挙しましょう。

 

利回りは高いほうがいいのか?

まず利回りについてです。「都心のタワーマンションは利回りが低すぎる(3%程度)、郊外や地方のマンションであれば5%の利回りが狙える。やはり、不動産投資したからには、フローの所得が欲しい。」という話をお客様から聞かせていただくことがよくあります。

しかし、郊外や地方の物件の利回りの高さは値下がりのリスクの見返りです。つまり、高いリターンには高いリスクが伴うという投資の基本原理に従います。

なぜ郊外のマンションの利回りが5%で、六本木ヒルズの利回りが2%なのでしょうか?それは、郊外のマンションよりも六本木ヒルズを買いたいと考える人の数のほうが圧倒的に多いからです。人気の高い物件は大きく値下がりしませんが、人気の低い物件は大きく値下がりする可能性があります。したがって、利回りの高い郊外や地方のマンションは、将来の投資損失を覚悟しなければならないということです。

 

利回り、圧縮率、出口戦略のバランス

ここで、都心のタワーマンションと郊外のマンションの投資1億円から得られる経済的な効果を測定してみましょう。

(典型的な都心タワー)利回り3%、圧縮率80%
(典型的な郊外マンション)利回り5%、圧縮率60%

1億円で2%の利回りの違いは、年間200万円の賃料収入の違いを生みます。所得税率30%と仮定すれば、手取りで140万円の違いです。5年間所有すれば700万円です(郊外のほうが有利)。それに対して、圧縮率20%の違いは、相続税率30%と仮定すれば、600万円の違いが生じます(都心タワーのほうが有利)。以上から、利回りの高さと圧縮率の高さが一長一短で、都心タワーと郊外マンションの違いは、ほとんどありません。

 

問題は、将来の売却価格です(出口戦略)。生前贈与が完了、又は相続が発生すれば、相続対策として取得した不動産を子供が不要と考えれば、売却することになるでしょう。その際に、投資利益が生じるか、投資損失が生じるかが問題となります。

この点、郊外マンションは都心タワーよりも人気がありませんので、値下がりが高いです。そうしますと、売却時の損益を考慮すれば、都心タワーマンションを購入していたほうが有利だと考えることができそうです。

 

中古ワンルームマンションのほうが流動性で有利なのか?

次に、物件の流動性についてです。「都心のタワーマンションは価格が高いので(1億円以上)、流動性が低い。やはり、売りやすさを考えると、中古ワンルームマンションのほうがよい」という話をお客様から聞かせていただくこともよくあります。

しかし、中古ワンルームマンションの流動性が高いのは、投資物件として買いやすいからです(サラリーマンでも副業で投資できる)。この点に誤解を生じやすいのですが、中古ワンルームマンションのオーナーのほとんどは投資家です。単身者がワンルームマンションを買って住もうという人はいないでしょう。マンションを住むために買う人は家族を持っている人ですから、ワンルームマンションは買いません。

つまり、投資需要と実需(オーナーが自分で住む)では圧倒的に実需のほうが大きいので、投資物件として売買が多いことが単純に流動性の高さを判断する尺度となるわけではないということです。

投資需要は、景気が悪化すれば一気に冷え込みます。つまり、中古ワンルームマンションは景気が悪化すれば、一気に価格が下落します。実需の支えが無いからです。これに対して、都心タワーマンションであれば、多少は価格が下がるとしても、富裕層ファミリーの実需が下支えしてくれます。

したがって、物件の流動性の観点から、中古ワンルームマンションを購入することは危険です。利回りの高さに飛びついて地方の中古物件などを購入してしまうと、将来の投資損失で全ての利益を水の泡にしてしまうことでしょう。

 

結局、何を買えばいいのか?

利回り(賃料・空室率)、流動性、出口戦略の3つのバランスが取れた物件は、都心部の赤坂・六本木で1億円前後のタワーマンションを坪単価500万円台で購入することです。しかし、このような物件を購入することは不可能でしょう。2015年6月現在、坪単価の相場は600万円台後半から700万円台前半まで高騰しているからです。 それゆえ、現実的にはある程度妥協しなければなりません。

妥協点としては、ある程度の割高さは我慢することです。物件次第ではありますが、六本木・赤坂で坪単価700万円であればギリギリ許容できるでしょう(目黒で坪700万円の物件が売り出されましたが、高すぎると思われます)。また、都心の周辺部まで地域の対象範囲を広げることです。五反田、新宿までであれば許容範囲でしょう。さらに、中古ワンルームマンションの中でも山の手線内(限定)の優良物件を取得するという選択肢も検討に値します。

 

いずれにせよ、利回りの低さ(多少の割高さ)は購入時にコントロールできますが、将来の売却損失だけはコントロールできません。出口戦略を考えることを忘れず、「将来の値下がりリスクが低い」物件、つまり、人気のある地域の物件を購入することが一番重要なことでしょう。このような難しい投資判断には、資産税と不動産投資に詳しい税理士に相談することは不可欠と言えます。

 

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岸田康雄 公認会計士

岸田 康雄
公認会計士 / 税理士 / 中小企業診断士 / 国際公認投資アナリスト

■ キャピタル・アセット・プランニング株式会社
■ 島津会計税理士法人東京事務所
■ 事業承継コンサルティング株式会社

 

本件に関する問い合わせ先

事業承継コンサルティング株式会社 

TEL 03-3527-9033

Email tokyo@kishida-cpa.com

http://kishida-cpa.main.jp/

 

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