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知財の紛争解決には「判定」がよろしい! ‐西郷国際特許事務所

 

オビ コラム

知財の紛争解決には、「判定」がよろしい!

◆文:西郷義美(西郷国際特許事務所所長・元弁理士会副会長・国際活動部門総監) 

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特許などの知財の裁判が、今日も火花を散らし繰り広げられている。サトウの切り餅の佐藤食品が特許権を侵害したとして、最近(4月10日)、7億8千万の支払い命令が東京地裁であった。

切り餅をきれいに焼くために、餅に切り込みを入れる特許権を侵害されたとして、餅業界2位の越後製菓(長岡市)が業界トップの佐藤食品工業(新潟市東区)に約19億1600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決である。

 

越後製菓の特許は、餅の側面に切り込みを入れるものである。一方、佐藤食品工業の商品は側面に加え、上下面に十字の切り込みが入っていた。切り込みを入れる特許をめぐっては、越後製菓が2009年3月、佐藤食品工業の5商品が特許権を侵害しているとして提訴した。このときは佐藤食品工業に約8億円の支払いなどを命じた判決が確定している。さらに2012年4月に提訴した今回の第2次訴訟では、対象を20商品に拡大したのである。

 

この第2次訴訟は、今回の判決まで3年を要している。このように裁判は、時間も金も掛かりすぎ、やりにくい面が多い。これは中小企業にとっては大変な重荷で耐えがたい。また、裁判は公開で行われるが、当事者は紛争に関わっていること自体を公にしたくない場合が多い。

 

こうした点を考えると、裁判制度は面倒である。何とか簡便にうまいこと紛争を解決できないか、という切実な要望がある。それが、有るのだ。ADRである。

つまり、裁判外紛争解決手段である。一言で言えば、裁判ほどのガチガチなやり方で白黒をつけるのではなく、双方の話し合いを旨として、第三者も交え、双方が納得いく結論を、早く得る制度の数々である。

 

「ADR」とは、「Alternative(代替的)」「Dispute(紛争)」「Resolution(解決)」の頭文字をとって「ADR」。日本語では、裁判外紛争解決手続と訳されている。ADRの種類にはあっせん(斡旋)、調停、仲裁の3つがある。あっせんとは、当事者同士での交渉で解決を図る事を目的とし、あっせん人が間に入って、当事者同士の話し合いを進めて解決を図るものである。いわゆる、紛争が生じたときに交渉の場を設けてくれるだけ、と言える。

 

調停とは、第三者が当事者両方の言い分を聞いて、妥結案を提示するが当事者は第三者の妥結案を受け入れても受け入れなくても構わない制度である。

 

仲裁とは、事前に当事者同士が仲裁を受けることに同意(仲裁合意)した場合に、仲裁人が解決内容を判断をするものである。仲裁判断は裁判の判決と同じ効力があり、当事者は拒否することができない。そして不服として裁判に提起できない。根拠法は仲裁法である。

 

しかし、残念なことに、ADR制度の存在自体を知らない人が多く、活用されていない。そこで、国はADRの利用の促進に関する法律(ADR促進法)を作り啓蒙活動に力を入れている(平成19年4月1日施行)。

 

民事訴訟と比較した場合のADRの長所としては、

・経済的である…裁判ではコスト面で当事者に大きな負担がかかるが、ADRでは、弁護士費用、鑑定費用などの金員を要することなく解決できる事が多い。

・非公開である…プライバシーや社内技術などが外部に漏れるリスクを回避することができる。

・解決まで時間がかからない(目安は3回3カ月程度)…裁判は半年~2年の時間を要することも少なくなく、控訴審・上告審へと進んだ場合には、さらに時間を要する。

・手続きが簡便…当事者の都合に合わせて日時を決める事が出来るなど当事者の意向に応じて柔軟に対応することが可能(電話で申し込める機関もある)。臨機応変。

・当事者の努力による解決…話し合いでの解決であり、当事者の意向を尊重し解決を目指す。また、中立公平な立場の専門家が仲介するため、法的妥当性も確保される。

・裁判所への一極集中を解消…実施機関が裁判所に限定されず、他の機関で紛争解決を行うことにより、裁判所にとっても持ち込まれる紛争が減り、紛争処理に関する負担の軽減につながる。

 

短所としては、

・話し合いベースのADRの場合、必ずしも紛争解決に至るとは限らない。

・ADR機関が一方の当事者と密接な関係にあるケースなど、判断の公平性が担保されにくい。

・そして、特に知財の争いは内容が複雑であり、分かりにくい。そのため当事者双方は、それぞれが自分の側が正しいとの思い込みを醸成しやすい状況にある。客観的に観察思考する状況にないのである。

 

公平な感覚で、あたまを冷まして、まともな結論を探し出すことが必要である。紛争の行方を知るため、事前予測、勝ち負けの方向を知る方法は無いのだろうか。いいものがある。早い、うまい(納得できる内容)、安い、の三拍子そろった制度がある。

 

「判定」である。ADRの一種で、使い勝手のいい制度である。判定制度とは、特許などの知財について、特許庁が、鑑定的な意見を示す制度のことである。つまり、特許庁の審判官が、判定対象の権利侵害の可能性について、厳正・中立的な立場から判断を示す制度である。特許など知財は抽象的であり、関係者間で争いが生じやすいため、特許庁が客観的な意見を表明する本制度が作られた。

 

判断可能な内容は、特許の場合は、

(1)係争対象物が特許発明の技術的範囲に属する(いわゆる、侵害)との結論を求める積極的判定、か。

(2)係争対象物が特許発明の技術的範囲に属しない(いわゆる、非侵害)との結論を求める消極的判定、の2種類である。

 

判定のメリット(裁判など他の解決方法と比較して)は、

・審理が早く(最短で3カ月程度)、

・費用が安く(判定請求料は1件4万円)、

・書面審理が原則であり(出頭を要せず煩雑で無い)、

・公開されない(プライバシーが守られる)。

 

したがって、例えば、相手方との間で判定結果に従うとの契約が成立していれば、非公開のうちに、速やかで安価な紛争解決が図れる。

 

他方、判定の問題点としては、

・不服申立てができない。しかし、必要となれば侵害事件などとして提訴することは可能なので、何ら問題は無いと考える。

・その判定結果には法的拘束力は無い。しかし、専門技術官庁の判断結果であり、社会的信頼性は極めて高い。

結局、一応の方向性を見極め事前予測が出来るので、泥沼の紛争が解決に向かって加速することは間違いない。

 

オビ コラム

西郷義美 西郷国際特許事務所 (2)

西郷義美(さいごう・よしみ)…1969 年 大同大学工学部機械工学科卒業。1969 年-1975 年 Omark Japan Inc.(米国日本支社)。1975 年-1977 年 祐川国際特許事務所。1976 年 10 月 西郷国際特許事務所を創設、現在に至る。

《公職》2008 年 04 月-2009 年 03 月 弁理士会副会長、(国際活動部門総監)

《資格》1975 年 弁理士国家試験合格(登録第8005号)・2003 年 特定侵害訴訟代理試験合格、訴訟代理資格登録。

《著作》『サービスマーク入門』。商標関連書籍。発明協会刊 / 『知財 IQ」をみがけ』。特許関連書籍。日刊工業新聞社刊

西郷国際特許事務所

〒101-0052 東京都千代田区神田小川町2丁目8番地 西郷特許ビル

TEL : (03)3292-4411(代表) ・FAX : (03)3292-4414

Eメール : saipat@da2.so-net.ne.jp
Eメール : saigohpat@saigoh.com

http://www.saigoh.com/

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