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氷山の下マーケットで輝く、ヤクルトレディ(おばさんじゃないよ)

オビ コラム

イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ!10

氷山の下マーケットで輝く、ヤクルトレディ(おばさんじゃないよ)

◆文:佐藤さとる(本誌 副編集長)

 

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ちょっと前に、「目の前の市場で勝った負けたと言っている経営者は、氷山の一角を見ているのだ。これからは氷山の下に潜れ」とワタシは言い放った。言い放って終わった。これを「言い逃げ」と言う。そう、メディアの常套手段である…というヤカラと一緒にされるのは癪なので、具体例を話したいと思う。

氷山の下にあるのは、BOP、Bottom of Pyramidというピラミッドのボトム市場(これもお話した)で、一般に年間3000ドル以下の所得層を指す。月収で25000円くらい。これが世界に約40億人いる、らしい。ボリュームは圧倒的で、一説にはその市場規模は5兆ドルとも言われている。

しかもモノの本によれば、このBOPはさらにアッパーBOP、ミドルBOP、ロウワーBOPと3層に分類されるという。

ここまでいくと、従来のマーケティングの延長ではこの市場は取り込めない。そもそも市場が成り立つのかもわからない。だからうっかり40億人・5兆ドルの響きに誘われて、ふらふらと立ち入ってはいけないのだ。

 

ではどうするか。つくるのである。よってBOPに重要なのは、マーケティングよりは、ビジネスインフラの整備だ。ここでいうインフラは、道路や電気などの生活基盤としてのインフラではない。それも必要だが、まずビジネスというコンセプトの共有だ。

そもそもBOP市場の人を消費者とみてはいけない(失礼な言い方に聞こえたらごめんなさい)。つまりBOPの人をパートナーとしてみていかないとまず市場が立ち上がらないのだ。つまりBOP市場に求められているのは、「ずっとあなたがいてよかった」という安心感を礎にした幸せな関係である。実は日本企業はそういう関係をつくるのがうまい。

 

たとえばヤクルト。日本ではヤクルトおばさん、いやヤクルトレディで知られる、あのヤクルトである。そのたくましさは「京葉道路で渋滞があるとどこからともなくヤクルトおばさんが出てきて、『ヤクルトいかがですか』と販売する」といった都市伝説まで引き起こすほどだが、このたくましさもあってか、ヤクルトはいまBOP各国でネットワークを着々と広げている。

ヤクルトは実にヤクルトレディを導入した翌年の1964年には台湾に海外進出を果たしている。以来、ヤクルトはそれぞれの土地の、素敵でたくましいヤクルトおばさん、もとい“レディ”によって世界31カ国で、1日なんと1460万本も販売されているという。特筆すべきは、その7割がいわゆる発展途上国であることだ。

ヤクルトは、事業理念として女性の雇用機会の創出とともに、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという柱を持っている。というか、こっちが最優先である。

 

海外進出というと多くの企業が先進国へと向かうものだが、ヤクルトは、創業理念を実践するために、途上国へ向かった。理由はこうだ─健康づくりに大切なのは、罹ってからの治療ではなく、病気やけがに罹らないようにする予防だ。途上国には伝染病など菌や微生物によって引き起こされる病気が多い。それを腸系伝染病や難治性下痢などに対して有効なヤクルトを飲用することで、その地域の公衆衛生の向上にも役立てることができる─と。

そしてそのために、ヤクルトはこんな計画を立てた。進出先ではまず、中流以下の健康弱者をターゲットにする。なかでもスラムを優先する。消費者には、渇きを癒やす飲料としてではなく、商品の内容をしっかり理解してもらい、目的と効果を十分理解して飲んでもらうよう努めると。その点からもヤクルトレディの存在は前提であると。

ちなみにヤクルトのビジネスモデルは、他の訪販や宅配のモデルとなったとも言われている。とくにそのモデルを採用したのは、エイボンなどの化粧品メーカーだった。

 

もちろん、その道のりは平たんではない。どこの国も一度は経営不振に陥ったという。ヤクルトはそのたびにチームを再建し、再度その国に乗り込んだという。

素敵じゃないか、ヤクルトレディ! 素敵過ぎるぞヤクルト。きっと今日もどこかの国の渋滞地帯で、どこからともなくヤクルトレディは現れているはず、だ。

イマドキのビジネスは、だいたいそんな感じだ。

オビ コラム

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