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なかなか聴けない他人の失敗談 ‐ 落語家三遊亭春馬さん

 

「勝利には、千人の父親がいるが、敗北は孤児である」‐ジョン・F・ケネディ

 

三遊亭春馬

「(三遊亭小遊三)師匠の弟子の噺家は8人いて、ボクは3番目の弟子なんですけど、一門のなかで一番クビになっているのがボクです。ことあるごとに、師匠に『オマエなんか、クビだって』言われて。ヒドイときなんか、2番弟子とボクとで一日に6回クビになったこともありました(笑い)全部で25~6回はクビになっていますね。理由もたくさんありすぎて……。ボクはすぐに頭に血が上るタイプなので(笑い)

 

これは本当にヒドイ話なんですが、もう随分昔、師匠の運転手をしていたときのことです。時間に余裕がないなか高速道路の右側の追い越し車線を走っていたんです。速度は守ってですよ。それなのに、後ろからパトカーが来て、赤色灯を回しながら、『前の車、左に寄って止まりなさい』と。こっちは急いでいるのに。しかも、他の車の方がずっとスピードをだしているなかで、なぜ、こっちなのだ、と。

それで、ムカついたので、じゃあ言われた通り左に寄って止まろうと、ひとつ左の真ん中の車線に止めたんです。で、後部座席の師匠に、『路肩に止まれとは言われていませんからね、どうなるか見てやりましょう! 』と言ったんですが、帰ってきた答えが、『バカかお前は!』って。

それはもう、怒られました。当然なんですけどね(笑い)。肝心の警察に止められた理由は、「ずっと追い越し車線を走らないでくれ」と。……まぁ、ボクも本当に若かったので。こんな失敗ばかりです。

 

でも、今になってみるとどれも良い思い出です。落語家という仕事柄、芸の肥やしになったというか。やはり失敗を通してしか成長できない点は有ると思う。ボクの話した例が適切かは、さておきですが(笑い)

 

ボクにとって落語は、小学生のとき、親父にはじめて寄席に連れていってもらった原体験が大きい。あのとき落語自体はわからなかったんですが、その場にいる全員が笑っている雰囲気が心の底から楽しいなって思えたんです。落語って、色々な娯楽のなかで最も強く、笑いに直結するものだと思うんです。それも、老若男女の分け隔てなく楽しめるものとして。実生活では、誰しも辛いことや嫌なことがあるでしょう。でも、落語を聞く瞬間は、全てを忘れて笑えます。このさきも、そういう場を作り続けたいです 」

 

北千住から世界に向けて発信する、インターネット放送局CROSSWAVE SENJUにて、毎週金曜15:00~15:50まで、女子プロレスラー中森華子さんと「春馬・華子のお昼のかたすみに」を放送中。

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三遊亭春馬(さんゆうてい はるば)…埼玉県 草加市出身。昭和60年3月陸上自衛隊(朝霞)第31普通科連隊重迫撃砲中隊入隊。昭和62年12月三遊亭小遊三に入門。昭和63年3月三遊亭あん太で前座(浅草演芸ホールにて初高座)平成4年2月1日二つ目に昇進し、五代目三遊亭春馬となる。平成13年5月1日真打ち昇進。

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