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特許製品の再生・長生きを手助けすると特許権侵害に!

◆文:西郷義美(西郷国際特許事務所所長・元弁理士会副会長・国際活動部門総監)

 

空港 (3)

経営者は知らないと、危険!自社製品が気づかぬうちに特許侵害している恐れあり!?

エボラ出血熱パンデミック化を防ぐ、水際作戦たけなわである。「水際作戦」とは、文字通り上陸してくる敵を水際で防ぎ守る作戦のことである。この場合、エボラ出血熱などの感染者を入国の水際で食い止め、自陣営を守ることをさす。本来防疫分野で使用される言葉だ。

しかし同様の水際作戦が「知財」に於いても展開されているのを知っているだろうか。ブランド(商標)や、パテント(特許)の侵害品の入国を水際で防止する観点で、外国で買った特許製品を、日本に持ち込め(並行輸入)ば、日本に存在する特許権を侵害するか、との議論がある。各国の特許は独立しており、それぞれの国で独占権として存在しているからである。

結論として、侵害では無い。日本に存在する特許権は、同一人物のものである(全くの別人は特許権者になり得ない)。また、その特許権は、その外国で特許製品を販売したときに、その物については、特許権も同時に売り払い、購入者が特許権もろとも購入したことになるのである。そのため、特許権者の権利は、(その物については特許権が移転し)使い尽くされ消え失せた(特許権の「消尽理論」或いは「用尽理論」)、と考えられるのである。

なぜと言えば、特許権者は、特許製品を売り払った時点で、特許権者としての利益を得ているのであるからである。そこで購入者は、その後、その製品をどの様に扱おうかは全く自由となる。

 

それでは次に、買い取った自分が所有する特許製品を修理することは、全く自由であろうか、という疑問が上がる。ひょっとして、侵害になるのではないか、という危惧がでる。特許製品を使用しているうちに、壊れてしまったり、ある部品が摩耗するなどした場合、修理して直し、再度利用できるようにしたいのである。

実は、ここは危険区域である。いろいろ問題がある。下手にいじると、特許権の侵害問題が勃発する。

特に、町工場では多くの器用な職人さんがいる。得意の腕に任せ、摩耗部分を肉盛りし、新品同様にしたり、故障部分を再生・修理することは、侵害問題を引き起こす危険な行為である。

 

こんな具体例がある。ある工場の社長が、ひょんな事から、いい金儲けのネタを発見した。それは、道路工事の現場監督さんと飲んでいたときだ。監督さんのぼやきを、社長は聞き逃さなかった。いうには、道路の路面を研削する機械機の部品の消耗や故障が頻繁だという。特に、路面を切削・研削する研削歯車の消耗が激しいという。ピンときたので、それとなく聞くと、たいした構造ではなく、簡単に作れることが分かった。そこで、その歯車を大量に作り、販売することにした。儲けを計算し、一人ほくそ笑んでいた。まさに捕らぬ狸の皮算用である。

しかし、その部分は特許に該当する「主要な部分」であり、特許権侵害の恐れが強いと聞き、青くなった。詳細な調査・検討の結果、残念ながら、侵害とされた。

 

また、こんな例があった。海苔送り機構の機械を使っていた海産問屋が機械の不調を訴えた。チェックしてみると、寿命だろうか、ところどころにガタが来ていた。そこで、オーバーホールをしてもらった。調子が戻り、具合が良くなった。オーバーホールは、単なる分解・清掃・再組み立てだけではなく、劣化部品の交換や調整を伴うのが一般である。

そこで、このようなオーバーホールは、立派な特許権侵害行為であるとの判決が下りてしまった。製品の分解・清掃・再組み立てであるオーバーホールは、実質的に生産と同視しうるから、侵害となるとされたのである。つまり、発明の対象であるものの生産と同視しうるか否かにより、特許権侵害となるか否かが決せられる。

 

特許製品の寿命を延ばす加工行為は侵害に当たるのである。寿命を延ばすことを手助けするのも侵害である。正確に言えば、新たに部品を自ら作り替えて使うことは「直接侵害」である。そして、それを手助けするのは「間接侵害」であり、これも立派な侵害である。直接的な侵害までは行かないが、その周りの予備的や幇助的な行為を侵害とみなして権利を十分に保護するのである。

 

このようなことを引き起こさないため、教訓として言えることは以下の3点を重視し、特許戦略を練り上げることである。

 

①、知財に対する知識である「知財IQ」を持ち、磨き上げ、特許ミスをしない。

②、特許を出願するサイドの場合は、相手に改良発明などを出される余地を与えずに、広い権利の取得を慎重に目指す。

③、2番手の追いかけるサイドとしては、改良発明を考え、特許破りをし、無理やりにでも、特許勝ち組「天国」のグループに割り込む、である。

 

つまり、何度でも言うが、あくまでも、特許は、広く大きな権利を取るべきである。公開しその代償でもらう権利であり、真剣勝負である。あれが出来ないか、これも出来ないかと、広く大きな権利を目指すべきこと、至上命令である。

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西郷義美 西郷国際特許事務所 (2)

西郷義美(さいごう・よしみ)…1969 年 大同大学工学部機械工学科卒業。1969 年-1975 年 Omark Japan Inc.(米国日本支社)。1975 年-1977 年 祐川国際特許事務所。1976 年 10 月 西郷国際特許事務所を創設、現在に至る。

《公職》2008 年 04 月-2009 年 03 月 弁理士会副会長、(国際活動部門総監)

《資格》1975 年 弁理士国家試験合格(登録第8005号)・2003 年 特定侵害訴訟代理試験合格、訴訟代理資格登録。

《著作》『サービスマーク入門』。商標関連書籍。発明協会刊 / 『知財 IQ」をみがけ』。特許関連書籍。日刊工業新聞社刊

西郷国際特許事務所

〒101-0052 東京都千代田区神田小川町2丁目8番地 西郷特許ビル

TEL : (03)3292-4411(代表) ・FAX : (03)3292-4414

Eメール : saipat@da2.so-net.ne.jp
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2014年11月号の記事より
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