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イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ! 

グローバルな高収益企業はどうやって生まれるのか

◆文:佐藤さとる(本誌 副編集長) 

 

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問題:次の企業の共通項を探しなさい。

「フォード」「BMW」「フィアット」「ミシュラン」「エルメス」「プジョー」「テトラパック」「イケア」「J・Pモルガン」「カーギル」「ウォルマート」「コーニング」「フィデリティ・インベストメント」「モトローラ」「エステー・ローダー」「L・Lビーン」「ゼニア」「カンパリ」「フェラガモ」「フルラ」……

すべて知らなくても、巨大グローバル企業であることは、なんとなく分かると思う。だから正解はグローバル企業……では、問題にはならない。それでは南京豆を落花生と言い換えているようなものだから。

 

答えは「同族企業」である。意外?と思われるだろうか。

同族企業というと、グローバル企業とは程遠くて、どこかの小さな地方都市でドメスティックな事業をコツコツと続けているイメージが強い。

しかしこの例に挙げたように著名なグローバル企業の結構な数が同族企業である。あのトヨタも同族企業である(ごぞんじですね)。注目すべきは、こうした同族企業はそうでない企業よりも収益性が高いということである。

 

いささか古いが、2007年に甲南大学の倉科敏材教授と帝国データバンクが行った分析では、東証1部2部の企業の07年までの5期の平均利益率は、非同族企業が4・5%なのに対して同族企業が5・7%と、1ポイント以上上回っていた。

総資本に対する利益率=ROAについても、非同族企業が1・0%に対し1・6%、株主資本に対する利益率=ROEは非同族企業の0・2%に対して1・9%と、いずれも圧倒している。

こうした傾向は欧米でも同じらしい。カナダのアルバータ大学の研究所ダニー・ミラー、イザベル・ル・ブレトン=ミラー氏らの研究では、1990年代初頭のアメリカの公開企業の上位800社のうち、同族企業は利益率で33%、成長率で15%、業界平均より上回るというデータが載っている。

もちろん何をもって同族企業というのか、という問題はある。長年同族企業について研究してきた日本経済大学の後藤俊夫教授によれば「定義はいろいろだが、創業者一族(三親等以内)の影響下にある企業」という。では影響とは何か。「発行株式における一族の比率とか役員比率など」(後藤教授)らしい。

 

問題はなぜ同族企業は強いのかということだ。最大の強みは、社員が「誰の派閥についたら出世が早いか」といった権力闘争コストが小さく、長期視点に立った経営に専念できるからだ。一見するとトップまで競争原理を働かせる非同族企業のほうが、民主的で効率的だと思われる。しかしながら過剰なまでの出世競争は、企業に無駄なエネルギーやコストを発生させる。意思決定も遅れがちだ。

日本はバブル崩壊後の失われた10年20年の間に「株主・株価重視」「時価総額経営」にシフトし、短期で利益を上げる経営スタンスをとるようになったが、その構造が充分追いついていない。かつて日本の経営では、短期と言えば1年、中期が5年、長期が10年を指した。それが近年は短期が四半期、中期が1年、長期が2〜4年という認識に変わりつつある。

 

後藤教授が調査した同族企業からは、「短期10年、中期30年、長期100年という話がよく聞かれた」という。こうした経営の立脚点は欧米でも同じだ。

あのエルメスでは、こう繰り返すという。

「われわれは過去の遺産を引き継いだからここにいるのではない。未来のものを預かっているのだ。未来からの預かり物に対して、ここで我々がいい加減なことはできない」と。

 

後藤教授の定義に従えば日本の企業の95%は同族企業である。つまり日本の企業はその本来の経営の強みを活かせばグローバル市場において、かなり優位に立てるはずなのだ。日本の経営者はもっと自信をもっていいと思う。

イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ。

 

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