Withコロナ・Afterコロナで顔認証ニーズが高まっている理由
未曾有の規模で世界を席巻する新型コロナウイルス禍により、我々の社会は既存のシステムに否応ない変化を迫られている。
感染を防御するためには、極力ものや人との接触を増やさないことが重要である。そのためには、手洗いやマスクの着用を徹底する、密集・密閉・密接の「三密」を避ける、人との距離を2m以上あけるソーシャルディスタンスを守ることなどがポイントだと周知されている。これらはいずれも個人の判断で可能になる。
しかし、現状では個人の判断を超えて、システムとして接触せざるを得ない場面は多々ある。例えばレジでのQRコード決済や、オフィスビルなど建物の入退館、空港でのチェックインといった個人を認証するものでは接触が必要な場合が多い。
そこで、ハンズフリーや時間短縮などのメリットがあり、かねてより注目されていた非接触の個人認証の需要が、新型コロナウイルスの拡大につれてより高まっていると言える。
コロナ禍で高まる顔認証のニーズ
非接触の個人認証を可能にする有力な手段の一つが顔認証である。指紋認証のように手で触れなくても、「あなた」が「あなた」として認証される(あるいは認証されない)顔認証は、非接触が求められる今、もっとも求められるものの一つである。
実際に、顔認証システムを扱うサイバーリンク社では、2月以来、AI顔認証エンジンFaceMe®への問い合わせ件数が急増している。
理由は非接触によるウイルス感染を予防する手法への関心が高まっていることである。今は、スーパーやコンビニエンスストアはもちろん、オフィスなど入退館に際して認証が必要な建物の入り口には、ほとんどの場合手指を消毒するアルコールが設置されている。しかし、設置率は当然100%ではない。消毒用アルコールの品不足も解消されてはいない。そもそも、アルコール消毒によって新型コロナウイルスへの感染が完全に防げるわけではないのだ。
いくらソーシャルディスタンスをとっても、物を介して指にウイルスが付着し、それが体内に取り込まれる可能性は大いにある。ウイルスは布や紙の上で8~12時間、金属やプラスチック上では24~48時間生き延びると言われているからだ。
例えば入退館時に指紋で認証する場合、手指の消毒が不完全な人が装置に触れることによって、後から認証した人がウイルスに感染することが考えられる。また、スマホのロック機能で指紋認証を選択している場合、ロックを解除するたびにプラスチックの画面に触れることで、感染する危険がある。
三密回避、ソーシャルディスタンスの確保という必死の努力が、接触によって水泡に帰すのは惜しすぎる。
今、切に、接触しないことが望まれているのである。
接触しない個人認証の需要
患者に直接触れたり、その患者が使用したものに触れたりすることが原因となる感染症は、新型コロナウイルス(COVID-19)以外にも存在する。例えば、東南アジアでは、鳥インフルエンザウイルスが変異した新型インフルエンザで人から人へと感染することが報告されており、その感染経路のひとつが指紋認証と言われている。
一方、生体認証であっても接触する必要がない方式であれば、装置や扉に触れて感染する危険を避けることができる。そして、利便性と精度という面で、虹彩認証や静脈認証に勝るのが顔認証だ。
顔認証技術の先進地、台湾のサイバーリンク社で開発された顔認識エンジンFaceMe®は、映像から顔の正確な位置を検出し、それを分析や参照を行うために保存することができる。そして顔検出で作成したデータベースから、即座に個人を特定する。年齢、性別、感情、頭の向きなど、顔に関する属性を分析する機能があることから応用範囲は幅広い。
入退店はもちろん、顧客満足度を判別するスマートリテール、入退館管理だけではなく勤怠管理もできるスマートオフィス、モバイルバンキングや保険・金融サービス向けのスマートバンキング、鉄道や空港などのセキュリティシステムと連携するスマートセキュリティに応用することが期待されている。
FaceMe®でいえば、認証の精度は99.7%と非常に高く、メガネをかけたり、ヘアスタイルを変更したりという場合でも本人として正しく認証される。認証速度も速く、指紋認証のように手荒れや乾燥など季節的な要因で精度に変化が起きることがなく、安定性が非常に高いのだ。
Afterコロナの個人認証
これまで、個人認証において、接触・非接触の違いはあまり重視されてこなかった。しかし、Afterコロナの世界では非接触が重要な要素になっていくことが予想される。
現在、コンビニやスーパーの無人店舗、次世代ATMといった新しいソリューションで顔認証が採用される機運も高まっている。商品をレジに通さず決済ができるレジレス型の無人店舗では、顔認証によって入店時に一人一人を識別。入店後は、欲しい商品を取り、そのまま店を出るだけで、自動的に決済が完了する。レジに人を配置せずにすみ、コスト削減が可能になるのがポイントだが、withコロナ、Afterコロナではソーシャルディスタンスの手段としても機能しそうだ。
新型コロナ禍による営業自粛では、生活に欠かせないインフラとしてコンビニやスーパーは営業を続けており、買い物客が詰めかけることで感染の不安が増している。顔認証によって決済が完了する店舗であれば、店員とお客が接触することはない。入場制限にも活用すれば、お客同士の距離が近づくことも避けられる。
新型コロナが収束しても、感染症がひとたび流行すれば、人やものとの接触がリスクになることを知ってしまった社会は、コロナ以前に完全に戻ることはないだろう。COVID-19以外で、より感染力が強く、より感染者が重篤化する未知のウイルスが発生することも考えられる。
14世紀にヨーロッパを席巻した黒死病・ペスト。20世紀初頭、日本においても多くの死者を出したスペイン風邪。そして、21世紀の新型コロナ。感染症のリスクは常に人類とともにある。そのことを嘆くよりも、AIという新技術が可能にした高精度の顔認証システムをいかに効果的に活用するかを考えたい。
『千一夜物語』(アラビアンナイト)の中の一編「アリババと40人の盗賊」の中で、アリババが「開けゴマ」と唱えることにより、岩の扉が開き、中から盗賊の隠した宝物が出てくる有名なシーンがある。1300年以上の時を経て、「開けゴマ」は現実のものとなりつつある。
<プロフィール>
サイバーリンク株式会社
設立:2005年3月
資本金:9,500万円
代表:ヒルダ・ぺン
本社所在地:〒108-0023 東京都港区芝浦3丁目5-39田町イーストウイング4F
事業内容:デジタルメディアの作成、再生、共有などのアプリケーションの開発、マルチメディア関連ソフトウエア、Web 会議・オンラインセミナー・ビジネスチャット「U ビジネスコミュニケーション サービス」、顔認証エンジン「FaceMe®」の販売