CIOシェアリング協議会が発足。いま求められるCIO人材像とは

企業におけるITの位置付けは高まり、IT投資も増加傾向にある。そのIT投資で成果を出す事例もある一方で、成果を得られない状況も多く生じている。不正利用で短期間で廃止に終わったセブンペイ問題も記憶に新しい。

とはいえ、CIOを常勤で雇用できる企業ばかりではないし、大企業と中堅企業では求められるCIO像も異なる。そんな中、政府CIO補佐官の坂本俊輔氏が発起人を務める「CIOシェアリング協議会」が発足され、その発起会が9月11日に開催された。

１）中堅企業を取り巻くCIO難の現状

経営戦略におけるIT戦略の重要性とは

民間企業を元気にしていかないと日本経済は停滞する。その底上げのため、企業の中に入って経営支援と共にIT化を実施するのが大切である。例えば、IPOを目指している会社は、労務環境のチェックをするように、IT化の対応ができているかについてもチェックすべきである。また、事業承継を検討する機会も、IT環境の次世代化を含めた大幅な見直しを行う機会となる。

多くの企業がIT投資に失敗する理由

IT投資をするユーザー企業と、サービスを提供するIT企業の両者にそれぞれ課題がある。

まず多くのユーザ企業は、IT投資にあたり経験やスキルの不足する人材で対応せざるを得ない状況がある。CIOの必要性は感じていても、一部の大企業を除いて、CIO等の高度なIT人材の定常的な雇用は費用面でもマッチしない。また、定常的な雇用でないとしても、ユーザー企業は自社に必要な人材のレベル感もわからず、CIO人材を見極めることは困難である。

続いてIT企業側の課題だが、受託開発中心のSIerは、ユーザ企業の事業変革に踏み込んだ提案は得意としていない。ITコンサルティング企業も、多くはITの実装・運用で売上・利益を確保しており、得意領域のITに誘導する企画立案をしてしまう傾向にある。

２）中堅企業に求められるCIO系人材とは

IT戦略からITマネジメントまで対応できる人材

中堅企業では社内IT部門の担当者レベルのリソースも不十分である。そのため、戦略レベルだけでなく、個別システムの要件定義の管理・推進などにも対応ができ、場合によっては自ら手を動かせる人材であることが必要だ。

一定規模以上のIT投資のマネジメントができる人材

超大企業のように数百億円の投資マネジメントができる必要はないが、少なくとも数億円規模のIT投資のマネジメントができることが必要だ。中小企業向けのITアドバイザーのような経験しか持たない人材では対応が難しいと考えられる。

３）CIOシェアリング協議会が目指すこと

同協議会の理事でメルカリ執行役員CIOの長谷川秀樹氏は、「自分は新しいものを取り入れてくことが得意。以前は、ホワイトカラーの生産性はそんなに変わらないと思っていたが、メルカリに入社して全く違うことがわかった。IT企業のやり方を他企業に取り入れるとどう変わるのかに興味がある。」と話した。

CIOシェアリングは、新しい働き方を目指しませんかという提案だ。CIOが行き着くキャリアにはまだまだ可能性がある。現在はCIOが終着点となりがちだ。新しいキャリアパスを作っていければ、若いうちからCIOを目指そうという人も増えるだろう。そのためには、CIOがシェアで働く姿をよりイメージできる形に落としていくのが重要だとCIOシェアリング協会のメンバーは共通認識を得た。新しい働き方のイメージとしては、コンサルティングファームとCIOの兼業や、複数のユーザ企業のCIOとして活動する、といった案が上がった。

CIOシェアリング協議会の本格活動に向け、「まずはこのような働き方を目指す優秀なCIO系人材を集め、協議会の体制を強化することが大切だ」と坂本理事は話す。そのために、11月5日には「CIOシェアリング協議会設立記念セミナー」も開催する。様々なフィールドで活躍した経験を持つメンバーが主導するCIOシェアリング協議会は、これまでになかった切り口から日本経済への貢献を目指す。