こんな時代だから知りたいM&A

(第8回)

◆文:秋尾星獅 (株式会社IPO・M&Aコンサルタントグループ)

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─ M&Aコラム応用編 ─ M&Aの疑問にお答えします!!

続・その④/売却金額は高ければ高いに越したことはない!?

今回は、「売却金額は高ければ高いに越したことはない!?」という疑問に関して、そもそも売却価格を高くするにはどうしたらいいかということで、売却価格を売り手優位に売却するためには買い手を複数選択できる入札方式を導入して、

その幹事M&Aアドバイザーをコンペで複数の中から選択するというやり方についてご説明します。

 

M&A入札方式とは、M&Aの交渉手続方法のひとつであり、M&A会社売却の際に、予め、複数の買収候補企業を募り、買収候補企業が「入札」を行い、

これにより最も良い条件を提示した買収候補企業を、最終的な買収企業として選定するM&Aの手続方法のことを言います。

競売方式、コンペ方式、ビッド方式、オークション方式などともいいます。

 

一般に、M&A入札方式においては、複数の買収候補企業を同時並行的に交渉し、手続きを進行させるのに対して、

M&A相対交渉方式においては、特定の買収候補企業と交渉し、条件が合わない場合、次の買収候補企業を選定して交渉することとなります。

 

M&A入札方式を利用した場合、M&A相対交渉方式よりも、M&A買収価格は高額になる傾向があります。

買収候補企業から提示されたM&A買収価格のみならず、M&AスキームやM&A後の経営方針なども選考の対象となるため、必ずしも最高値のM&A買収価格を提示した買収候補企業が落札者になるとは限りませんが、一般的には、M&A買収価格は高額になる傾向があります。

 

よって前回の第7回コラムでも触れましたが、M&A入札方式を導入すると同時に、M&A入札方式を仕切れる幹事M&Aアドバイザーをコンペで複数の中から選択するというやり方を導入する方法は有力です。

これは、M&A入札方式の導入だけではなく、複数のM&Aアドバイザーもコンペで競わせ、そのプレゼンによって会社の実力を見極めるというやり方です(急ぎで会社売却する事情がある場合はM&A相対交渉方式の方が賢明です)。

 

MA08imageもう少しM&A入札方式についてご説明いたしましょう。

M&A入札方式は、複数の買主候補企業に対して、同じ条件でM&Aを検討してもらい、同じ前提で、M&Aの条件の提案をしてもらうことにより、M&A条件を見比べることができますので、

売主としても、他にも良い買主候補企業が居たのではないかと心配しながらM&Aを進めるのではなく、安心して、M&Aを進めることができます。

ただ、一般的にはM&A相対交渉取引の方が交渉スピードは上回る側面はあります。

M&A入札方式は同時に複数の買主候補企業と交渉するわけなので、通常の交渉能力のみならず、複数の買主候補企業を天秤にかけつつも誠実に対応し、より良い条件を引き出すためのレベルの高い専門性が必要です。

それと、事務フローが複雑になりますので、その分の手間がかかることとなりますが、それでも高値の良い条件でのM&Aを実現するには、M&A入札方式を導入した方が実現性はM&A相対交渉方式より高いと思います。

 

ただし注意点ですが、M&A入札方式を導入した場合、一般的商品の入札オークションとは少し違っています。一般的なオークションの場合は買収金額だけが最大かつ最優先の条件なので高値をつければそれで勝ち取ることができるのが特徴です。

しかしM&A入札方式は、買収スキームにも左右され買収後の経営方針も見極めたうえで選ばれるので、一般のオークションとはかなり違ってくるのが要注意です。

 

売る側からしてみれば複数の買取希望の会社から金額を提示してもらえるということはそれだけ比較検討をしやすいメリットもあります。

しかしその一方でどうしても買取金額の提示のみで買収してもらう会社を選んでしまう傾向にあるので、その会社との相性を考えなかったり、買収されてからの経営方針やビジョンを見落とすリスクも十分に検証する必要があります。

 

以上がM&A入札方式に関しての概要となります。M&A入札方式の注意点などもご理解いただけたでしょうか。

よって、M&Aの場合は単に高ければいいという発想に偏ると思わぬ落とし穴が存在するということなのです。次回は別の角度から《売却金額は高ければ高いに越したことはない!?》という疑問にお答えしたいと思います。

 

今回はここまで! 次回もM&Aコラム応用編【M&Aの疑問にお答えします】お楽しみに!

 

オビ コラム

◉プロフィール

秋尾星獅 (2)

秋尾星獅(あきお・せいじ)…1961年生まれ。55歳。独立系経営コンサルタント会社に在籍後、1991年仲間と現在の会社前身である経営・マーケティングコンサルティング会社を起業。2000年からIPO(株式上場)支援コンサルティング。2004年からM&A支援コンサルティング業務をそれぞれ本格稼働させる。2007年には社名を株式会社IPO・M&Aコンサルタントグループに変更。現任IMグループ取締役会長。

 

◉問い合わせ先

株式会社IPO・M&Aコンサルタントグループ

TEL 03-5979-2349

E-mail:info@ipoma-c-group.com

http://www.ipoma-c-group.com

 

 

 

◆2017年1月号の記事より◆

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