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できる社長は芸術が分かるものだ

オビ コラム

イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ! その31

できる社長は芸術が分かるものだ

 

 

ビジネスコラム31

「あの人は芸術肌だ」とか紹介されると、思わず「なんだか付き合いづらそうだな」とか思ってしまうものだ。

同様に「あの人は職人肌だ」というと、こちらも「なんだか付き合いづらそうだ」と思う。

ただ職人肌の人は、こだわりのゾーンに深入りしなければ、なんとか話を合わせることもできそうな気もする。

 

しかし、ワタシの決して多くはない取材経験からすると、いい経営をする社長というのは、芸術に造詣が深い人が多い。少なくともアート的なものに理解を示している。

 

2014年に吉野家ホールディングスの会長を辞した安部修仁さんは、アルバイトからトップに上り詰めたカリスマ経営者の一人だ。

 

狂牛病(BSE)など幾多の艱難辛苦の荒波を乗り越え、世界のYOSHINOYAに飛躍させた。

安部さんはもともとプロミュージシャン志向で、アルバイトをしながらアマチュアバンドの活動を続け、メジャーデビューを図っていた。

 

安部さんのようにメジャーデビューを夢見ながら音楽活動をする、劇団の舞台に立つ、ダンスコンテストに出続ける…という若者はいまでもたくさんいる。

しかしその多くは道半ばで挫折し、方向転換をする。安部さんの話も同様にも映る。

しかし音楽のセンスを持っていなかったとしたら、果たしてトップに上り詰めることができたか? という問いはある。

 

安部さんは倉庫から米国産の牛肉が払底した時も、米国産にこだわり、その味を守った。“並”の経営者であれば、別の肉で代用しただろう。

しかし「ヨシギュー」と言われるほど熱狂的にファンに親しまれた味は、すでに吉野家だけのものではなくなっていた。簡単に変えるべきではないと判断したのだ。

 

自社の商品に何を求めているのか。それをしっかり感じ取れるのはまさにアートの域だと言える。それは偶然だろう…。偶然かもしれない。

 

愛知県のプラスチック射出成形の樹研工業。重さわずか100万分の1グラムのギア「パウダーギア」を開発し、世間の度肝を抜いた経営者の松浦元男さんも元バンドマンだった。

友人から「経営者を募集している工場がある」と誘われ、「バンド活動」の資金となるならと引き受けた。

家電メーカー向けにビデオコーダーの樹脂製ギアなどを納めていたが、メーカーの中国シフトで仕事が激減。取った策が世界初のパウダーギアの開発だった。

その話題は日本だけでなく世界を駆け巡り、デンソーやスイスのスウォッチグループなどそれまで接点がなかった異業界の有名企業が取引を求めてきた。

松浦さんの会社では社員の出張はグリーン車。社員が本を買いたいと申し出れば無制限に買い与える。社員の新規採用は先着順で決める。

常識にとらわれない経営で、今では世界9カ国に15のグループ会社を持つまでになった。

 

2014年に物故者となった岐阜の電気設備メーカー・未来工業の創業者山田昭男さん。

未来工業は、他社が10種類程度しかつくらない部品を90種類以上製造し、しかもその中には年に2、3個しか売れないものもあるという「日本一無駄の多い会社」として知られ、また最も就業時間の短い上場会社として「日本一働かない会社」と話題にもなった。

工場では出社時間は自由。服装も自由とした。それでいながらライバルのパナソニック電工や古河電工と言った大手の倍以上の利益率を上げ続けた。

その山田さんの創業のきっかけは自分が立ち上げた劇団を存続させるためだった。

劇団員を食わせるために会社をつくったのだ。山田さんは経理担当の女性に印鑑と通帳を預け、気に入った劇団の公演があると必ず上京して公演を堪能した。

 

大手にもいる。ソニーの元社長大賀典雄さんはオーケストラのタクトを振っていた芸大卒のバリバリの音楽家だった。創業者の盛田昭夫さんに請われてソニーの社長に転身した。

さすがに「経営を学んだことのない芸術家に経営のタクトは振れないだろう」と訝られたが、経営者として、エンターテイメントのソニーの基盤を築いたのだった。

 

 

この先ITやAIは進む。より合理的で効率的でスピーディな経営が求められ、それはこうした先端技術が応えていくはずだ。しかし皆が同じテクノロジーを導入すれば、当然差別化は難しくなる。

その時の差別化の源泉となるのは何か? 経営者の持つ芸術センスはその1つであることは間違いなさそうだ。

 

イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ。

 

オビ コラム

 

 

◆2016年11-12月合併号の記事より◆

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