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「秘密意匠」とは?

オビ コラム

【賢者に学べ!】

「秘密意匠」とは?

◆西郷国際特許事務所 所長/弁理士 西郷義美

 

 

1.ギバー、テイカー、そして、マッチャー。

ギバースゲインという言葉がある。「与える者が与えられる」である。ギブギブしていれば、結局ゲインできるというのだが、一面では真理であろう。

だが、世間は広い。そんなわけはないだろう、と考える人もいる。つまり、3種類の人間に分けられるという。ギバー、与えるだけの者。テイカー、貰うだけの者。

そして、その中間で、貰えるならば私も与えようと、つじつま合わせを考えている者。つまり、計算高い輩で、一般にマッチャーと呼ばれる。

そこでだ。特許制度はこのマッチャーの原理を狙い、大やけどを回避したのである。つまり、公開代償の制度である。

発明やアイデアを公開してくれるなら、それに対し、特許権などの知財権という強力な権利を差し上げようと言うのである。バランスを重要視した。

ところが、その公開代償制度に反する制度がこの知的財産法にはある。出願したものが権利になっても見せないで欲しい、公開しないで欲しい、という出願人の要求を特許庁は飲むのである。

それが、「秘密意匠制度」である。

 

2.ビックリ感!

(1)その成立の過程はこうである。

a.スマホや自動車などばかりではないが、新発売の製品が、どの程度の売れ行きを見せるか、メーカーとしては気が気でない。その際、商品のデザインをユーザーが、発売前に知っていた場合とそうでない場合、売り上げにはどんな影響があるだろうか。

b.知っていたかいないかでは大きな違いがあるとでた。しかも、知らない時の方が、つまり発売の時に初めてそのデザインを知った方が、売り上げは激増する、とのことである。ウン、そうであろう。

c.新商品のデザインのインパクトは、新商品を目前にして、その斬新さが衝撃になるのである。

d.しかも、コモディティ化した商品、つまり、メーカーも機能も画一的に把握できる製品である日用品化したものは、デザインだけが、しかも公開公表されず、陳腐化していないものが、大きくものを言う。

e.つまり、ビジネスの守護神である知財制度を活用しようとすると、公開がついて回るが、それは大丈夫か。つまり、意匠登録出願をすると、新製品発売前に公表されてしまう危険が大いにある。

f.その為にこの制度が必要になったのである。

g.そしてまた、製品化前の意匠権成立時の公開により、第三者が、模倣したりデザインの傾向を察知することを防ぐためのものでもある。

 

(2)秘密意匠制度とは、

a.出願人の請求により意匠登録の日から3年を限度として登録意匠の内容を公報に掲載せず、秘密にしておくというものである。

b.秘密意匠制度の適用を希望する出願人は、以下の点に注意して秘密意匠制度の適用を受けたい旨請求する必要がある。

①意匠登録出願と同時、又は第1年分の登録料納付と同時に秘密意匠の請求を行うこと。

②請求書には、出願人の氏名(名称)及び住所、並びに、対象の意匠を秘密にすることを請求する期間(最長3年)を記載すること。また、この請求の後でも、出願人(意匠権者)は、秘密にしておく期間の延長又は短縮を請求することができる。

③なお、秘密意匠の請求ができる時期については、従来の出願と同時に行う場合に加え、第1年分の登録料の納付と同時に請求を行うことが、法改正で追加された。

これは、審査期間が短縮化してきており、出願当初は秘密意匠の請求は不要と判断していたものの、審査が早く終了したため、商品化の前にもかかわらず、意匠公報の発行によって登録意匠が公開され、商品の広告・販売戦略等に支障が出る場合が生じている。

このため、審査の終了後であって、意匠登録前に秘密意匠の請求を行うことを可能とするべきとの指摘があったからである。

④なお、登録料の納付は本人以外も納付可能である。そのため、第三者が納付することもあり、その結果、秘密意匠請求の機会を逃すことの危険もある。この点、留意する必要がある。

 

(3)秘密意匠の公開は以下の場合である。

①秘密期間中では、意匠権者の承諾があったとき、裁判所からの請求があったとき等、一定の場合には例外的に特定の者に対して秘密意匠の内容が示される。

②秘密期間経過後は、通常の意匠と同様に公報に掲載される。

③つまり、秘密意匠制度を利用すれば、独占権を得ながら、一定期間、その内容を競業他者に対して秘密にしておくことができる。しかし、いいことばかりではない。

つまり、秘密期間中の秘密意匠に係る意匠権侵害訴訟では、侵害者がその意匠権の存在を知っていたことを、意匠権者等が証明しなければならない。

これは、秘密意匠は秘密期間中、意匠公報に掲載されないため、侵害者に過失があったと推定されないからである。

 

3.また、外国出願では留意事項がある。秘密意匠制度を有しない国も多いため、日本で秘密意匠としても、制度を有しない国では、公開されてしまうという問題がある。

(1)ここで、近隣各国での秘密意匠制度の有無の現状を述べたい。

①秘密意匠制度を有する国、地域としては、

(ⅰ)欧州共同体意匠(RCD)。登録から最大30カ月の間、秘密を指定できる。

(ⅱ)韓国。登録から最大3年間。

②有しない国は、米国、中国、台湾、である。

 

(2)この様な現状のため、特に秘密にしておきたい意匠については、秘密意匠制度を有する国のみに絞らざるを得ない、などの対策が必要となる。ネット社会の進展で、国境などものともせず、瞬時に情報が拡散するからである。

 

4.なお、今回は秘密意匠制度の話であったが、秘密特許制度の概念もある。かつて我が国にも、秘密特許制度があった。しかし、戦後の、1948年の法改正で廃止された。

 

 

 

オビ コラム

西郷国際特許事務所 所長/弁理士 西郷義美●筆者プロフィール/西郷義美
1969年 大同大学工学部機械工学科卒業
1969年-1975年 Omark Japan Inc.(米国日本支社)
1975年-1977年 祐川国際特許事務所
1976年10月 西郷国際特許事務所を創設、現在に至る。
《公 職》
2008年4月-2009年3月
弁理士会副会長(国際活動部門総監)
《資 格》
1975年 弁理士国家試験合格(登録第8005号)
2003年 特定侵害訴訟代理試験合格、訴訟代理資格登録。
《著 作》
『サービスマーク入門』(商標関連書籍/発明協会刊)
『「知財 IQ」をみがけ』(特許関連書籍/日刊工業新聞社刊)

 

西郷国際特許事務所(創業1975年)

所長 弁理士/西郷義美 副所長 技術/西郷竹義
行政書士/西郷義光
弁護士・弁理士 西郷直子(顧問)
事務所員 他7名(全10名)
〈お茶の水事務所〉
東京都千代田区神田小川町2-8 西郷特許ビル
TEL 03-3292-4411 FAX 03-3292-4414
〈吉祥寺事務所〉
東京都武蔵野市吉祥寺東町3-23-3
TEL 0422-21-0426 FAX 0422-21-8735
Eメール:saipat@da2.so-net.ne.jp
saigohpat@saigoh.com
URL:http://www.saigoh.com/

 

 

 

◆2016年8月号の記事より◆

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