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「表現」を保護する著作権法、「アイデア」を保護する知財権法

オビ コラム

【賢者に学べ!】

「表現」を保護する著作権法、「アイデア」を保護する知財権法

◆西郷国際特許事務所 所長/弁理士 西郷義美

 

201607saigouこんないい加減な適当な話を聞いたことがある。

 

つまり、「特許を出すのは面倒である。その為に出していない。だが、書いたものはある。著作物があるから、著作権法の保護を受け、他人がそれを真似ることはイカンので、発明は守られる」のだと。

 

どういう論拠かは分からないが、言いたいことはこうだと思う。

 

「著作権法は、書いてさえおけば、書いたもの全てを保護するので、書いてありさえすればワシの発明のアイデアも保護するであろう。であるから、特許出願をする必要は無いのだ」と。

 

とんでもないことを言っているものである。そういえば、こんな言い分も聞いたことがある。

 

「特許出願明細書も著作物であるから、著作権法の保護を受け、その内容の実施は禁止されるのが原則だ。しかし、そこは知財関係物が書かれているので、特許庁など関係省庁の采配で(?)、事実上、権利放棄をさせられ、第3者は(許された発明の)実施ができるのだ」と、まことしやかにささやかれていたが……。

 

いずれも間違い。両法には棲み分けができている。結論から言うと、著作権法は「入れ物」だけを保護し、特許法などの知財権法は、その「中身、内容」を保護している。その詳細を述べる前に、両制度の簡単な説明をしておく。

 

著作権制度と特許権などの工業所有権制度は、人間の知的創作活動の成果を保護するための制度である。その立法の趣旨の違いから、いろいろ相違がある。

 

まず、特許法が「アイデア」(技術的思想)を保護しているのに対し、著作権法は「表現」を保護するものであるというところである。

例えば、漁獲の方法を解説した本は、著作物として保護されるが、そこに書かれている漁獲の特殊な方法自体は「アイデア」であり著作権法では保護されない。

また、「アイデア」は創出しただけでは特許権などの確立した権利は無い。特許庁に出願し、審査の結果、新規のものであると認められたものだけが登録され、特許権が付与される(審査主義)。

そして、同一のアイデアを複数の者が考え出した場合、先に特許庁に出願した者に権利が与えられる先願主義が採用されている。

 

一方、著作権は、「無方式主義」が採用されている。つまり、申請や登録の手続きを経ず、著作物を創作した時点で自動的に創作した者に著作権が発生する。

また、他人の著作物と偶然同じような著作物ができた場合でも、それぞれ別の著作物として権利が発生するのである。権利期間も、著作権は著作者の死後50年だが、特許権は出願の日から最長でも20年である。

 

そこで、両法の守備範囲であるが、「思想・表現二分論」という講学上の言葉が用いられる(あるいは「アイデアと表現の二分論」)。これは、思想、感情又はアイデアは、著作権法では保護されないというルールである。

 

著作権法は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」が著作物であると定義している。つまり、表現の基礎にある思想、感情、あるいはアイデアというそれ自体を保護するわけではない。

そして、この著作権の保護客体が表現であり、アイデアは保護しないというルールは、著作権制度が有する基本的な原則で、国際的にもそのようにされている。

 

そこで、冒頭の話に戻ると、いかに発明を文章化しておこうが、その発明は保護されないことがわかる。発明は、特許法制度でしか保護されないのである。

 

小説などの著作物で言えば、「……トンネルを抜けると雪国であった……」を、そのまま、長文で写し取り使用することはまずいが、「トンネルを出たら、そこには雪が一面にあり、北国の様相であった……」は、その内容(似ているが)を使っているだけであり、セーフである。

 

表現それ自体でない部分か、あるいは、その創作性がない外形が共通していても、翻案ではない。つまり侵害ではない。アイデア自体は、著作権法上は保護の対象外である。

それでは、著作権法と知財権法の守備範囲を分ける「表現とアイデアの区別」という点についてはどうか。つまり、ある著作物のどこまでが「表現」で、どこからが「アイデア」なのかと言う問題が浮上する。

実は、これは大変難しい問題である。今後の研究の発展に注目したい。

 

 

 

オビ コラム

西郷国際特許事務所 所長/弁理士 西郷義美●筆者プロフィール/西郷義美
1969年 大同大学工学部機械工学科卒業
1969年-1975年 Omark Japan Inc.(米国日本支社)
1975年-1977年 祐川国際特許事務所
1976年10月 西郷国際特許事務所を創設、現在に至る。
《公 職》
2008年4月-2009年3月
弁理士会副会長(国際活動部門総監)
《資 格》
1975年 弁理士国家試験合格(登録第8005号)
2003年 特定侵害訴訟代理試験合格、訴訟代理資格登録。
《著 作》
『サービスマーク入門』(商標関連書籍/発明協会刊)
『「知財 IQ」をみがけ』(特許関連書籍/日刊工業新聞社刊)

 

西郷国際特許事務所(創業1975年)

所長 弁理士/西郷義美 副所長 技術/西郷竹義
行政書士/西郷義光
弁護士・弁理士 西郷直子(顧問)
事務所員 他7名(全10名)
〈お茶の水事務所〉
東京都千代田区神田小川町2-8 西郷特許ビル
TEL 03-3292-4411 FAX 03-3292-4414
〈吉祥寺事務所〉
東京都武蔵野市吉祥寺東町3-23-3
TEL 0422-21-0426 FAX 0422-21-8735
Eメール:saipat@da2.so-net.ne.jp
saigohpat@saigoh.com
URL:http://www.saigoh.com/

 

 

 

◆2016年7月号の記事より◆

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