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パテントの強大さは「クレーム」で決まる

オビ コラム

【賢者に学べ!】

パテントの強大さは「クレーム」で決まる

◆西郷国際特許事務所 所長/弁理士 西郷義美

西郷氏201606

 

Ⅰ.開発はパテントを手配して完了する

(1)塩分などの濃度を測定する「滴定(てきてい)法」がある。
この滴定装置などの分析装置のメーカーであるS社は、長年下請企業に甘んじていたが、「自社製品を持つ」事を決心した。

 

(2)そこで、名門大学の先生方と研究体制を整備した。その中の目玉となるものを、勇躍、特許を取ろうとした。ところが、身内から「待った!」が掛かった。驚いたことに、特許出願拒否をしたのは研究の当事者の筆頭教授であった。理由を聞くと、米国に同じような物があるからムダだというのであった。

しかし、あれから7〜8年経った今でも、S社の社長は後悔している。これまで、うちの製品のようなものは出ていないし、うちのようなやり方は今でも聞かない。絶対に取れたはずだ。あのときに特許化しておけば、滴定装置のシェアを独占できたはずだったと思っている。

 

(3)では、なぜ教授は出願拒否の態度に出たのか。

思うに、理由は大きく、2つほど考えられる。まず第1は、よくある傾向であるが、出来のいい技術者ほど、完成した自分たちの技術を過小評価する傾向にある。こんな物はもうあるだろうと、考えるのである。

第2は、いわゆる「特許」が分かっていないのである。同じような技術はもう取れない、と考えているのである。しかし、改良型が取れる、別解決法が取れる、ちょっと違う技術分野で棲み分ければ取れる、など可能性は十分あるのにである。

このような、思い込みを打破し、失敗を回避するにはどうするか。それには、勉強の第一歩として、出願書類の「特許請求の範囲」(いわゆる「クレーム」)を学ぶことである。その特許の権利範囲はどこまであるのかを、まず検討し、考える事である。

 

(4)ではまず、クレームには何が書いてあるか。

 

 

Ⅱ.クレームに記載すべき要件は2つである。

(1)まず、第1には、サポート要件(裏付け要件)で、これはクレームに記載する特許を受けようとする発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでなくてはならない、とする要件である。特許制度の原則(公開代償説)に由来する要件である。

(2)第2には、明確性要件で、これは特許請求の範囲の記載は明確でなくてはならない、とする要件である。

 

 

Ⅲ.また、クレームをカテゴリ別に分けると、おおざっぱに3つに分けられる。

(1)物クレーム、方法クレーム、そして使用(用途)クレームである。
物の発明を特定する事項を記載した請求項を物クレーム、方法の発明を特定する事項を記載した請求項を方法クレームという。

また、使用(用途)クレームは、特定の物質を特定の目的で使用することを発明(用途発明)したときに記載するクレームである。なお、この使用(用途)クレームは方法クレームの一分野のものである。

この用途発明の有名なものとしては、心臓病の薬が全く別の疾患であるED(erectile dysfunction)の治療に役立つことが発見された、例の「バイアグラ」がある。

 

 

Ⅳ.クレームの独立性からの2分類、つまり独立請求項と従属請求項

(1)請求項は、それより前に記載した他の請求項を引用して記載することができる。
他の請求項を引用して記載した請求項を、引用形式の請求項、従属請求項、従属項、従属請求の範囲などという。

 

 

Ⅴ.そして、侵害判定のクレーム解釈のルールである。

(1)他人が製造する物や他人が実行する方法が特許権者の特許を侵害しているか否かを判断するために、クレームの記載を解釈して、特許発明の技術的範囲を定める。その際の原則として、権利一体の原則があるが、また、日本を含む多くの国では、均等論も認めている。

(2)権利一体の原則
特許発明の技術的範囲は、クレームに記載されたすべての構成要素を備えた物または方法である、とする原則である。

(3)均等論
特許発明の技術的範囲には、クレームの記載どおりのものだけでなく、その均等物も含む、とする考え方である。

(4)それでは、これら侵害判断において両原則のどちらが優先されるかというと、勿論、権利一体の原則が優先する。

(5)権利一体の原則は、条文から導き出せるものであり、文言侵害の大きな根拠となるものである。

(6)それに対し、均等論は、権利一体の原則では、保護できそうもない実質的な権利侵害から権利者を保護するための法理であり、法解釈に根底をおくものである。

(7)従って、実際の権利解釈においては、まず権利一体の原則が検討され、これで文言侵害となれば、それで一件落着である。均等論云々の余地はない。均等論による侵害が検討されるのは、文言侵害が否定された場合である。

 

オビ コラム

西郷国際特許事務所 所長/弁理士 西郷義美

●筆者プロフィール/西郷義美
1969年 大同大学工学部機械工学科卒業
1969年-1975年 Omark Japan Inc.(米国日本支社)
1975年-1977年 祐川国際特許事務所
1976年10月 西郷国際特許事務所を創設、現在に至る。
《公 職》
2008年4月-2009年3月
弁理士会副会長(国際活動部門総監)
《資 格》
1975年 弁理士国家試験合格(登録第8005号)
2003年 特定侵害訴訟代理試験合格、訴訟代理資格登録。
《著 作》
『サービスマーク入門』(商標関連書籍/発明協会刊)
『「知財 IQ」をみがけ』(特許関連書籍/日刊工業新聞社刊)

 

西郷国際特許事務所(創業1975年)

所長 弁理士/西郷義美 副所長 技術/西郷竹義
行政書士/西郷義光
弁護士・弁理士 西郷直子(顧問)
事務所員 他7名(全10名)
〈お茶の水事務所〉
東京都千代田区神田小川町2-8 西郷特許ビル
TEL 03-3292-4411 FAX 03-3292-4414
〈吉祥寺事務所〉
東京都武蔵野市吉祥寺東町3-23-3
TEL 0422-21-0426 FAX 0422-21-8735
Eメール:saipat@da2.so-net.ne.jp
saigohpat@saigoh.com
URL:http://www.saigoh.com/

 

 

 

◆2016年6月号の記事より◆

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