オビ コラム

なぜ「フィンテック」が注目されているのか

◆文:一村明博 (株式会社ZUU)

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「日銀がフィンテックセンターを設立」「大手生保がフィンテック強化」「米通貨監督庁、フィンテック業界白書を公表へ」──。このところ「フィンテック」という言葉をニュースで聞かない日はありません。

 

「フィンテック(FinTech)」とは「金融(Finance)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語です。

投資や資産運用、決済(支払い)、会計、仮想通貨(ビットコイン)、クラウドファンディングなどお金に関わるあらゆることを、ITを使ってより便利にしようという取り組みです。身近なところでは、家計簿アプリ、クラウド会計、電子マネー、電子決済などが代表的なサービスとして採り上げられることが多いようです。

 

このところよく耳にする「フィンテック」という言葉ですが、実は最近生まれた訳ではありません。以前から「金融とIT」は密接なものでした。たとえばネットバンキングを使った振込やネット証券での株式売買など、既に珍しいものではなくなっています。

 

日本で初めての本格的なネット株取引サービスは、1998年に松井証券によって始められました(当時は松井證券)。その翌年にはマネックス証券が設立されるなど、今も多くの投資家に使われているネット証券がこのころに生まれています。この時期を第一次フィンテックブーム、あるいは「フィンテック1.0」とするなら、今の盛り上がりは「フィンテック2.0」といえるのかもしれません。

 

ちなみに、グーグルでどれくらい検索されたかを示すグーグルトレンドというサービスで「フィンテック」という言葉を調べたところ、昨年後半から検索頻度が急激に高まっていますが、2005年ごろにも一度(小さいながら)山ができています。ちょうどフィンテックという単語を社名に入れた企業が誕生した時期と重なります。

 

 

■スマホ普及など環境が整った

なぜ十数年の歳月を経た今、「フィンテック」が注目されているのでしょうか。一つには、iPhoneやAndroidといったスマートフォンが普及し、インターネットへの接続が容易になったことがあります。買い物やお店選びなどにおいては、各種比較サイトやアプリが消費者の賢い選択を助けてくれるようになりました。

 

また2008年に起きたリーマンショックを経て、先進国の経済環境が悪化。お金を借りたり、いい投資先を見つけたりするのが難しくなりました。その中で、IT起業家たちがテクノロジーを駆使して、金融に関するさまざまな問題を解決しようとアプリやサービスを開発しました。

そしてIT企業だけでなく、銀行や証券など既存の金融機関の中にも、新しいテクノロジーやサービス導入に積極的な姿勢を見せるところが出てきました。こうして、環境が整い、動きが徐々に高まった結果、今の盛り上がりにつながったといえるでしょう。

 

フィンテックは決して難しいものではありません。ビジネス・プライベートを問わず、お金にまつわるあらゆる活動をITのチカラで便利にする企業やサービスのことを表現しているに過ぎず、高度なファイナンス理論やテクノロジーの知識だけが求められている訳ではないのです。

経営者は、企業活動や日々の経営において、資金調達や財務会計などお金にまつわる課題や悩みに常に直面しています。そういった意味で、金融を〝事業〟として営んでいない企業の経営者も「フィンテック」については理解しておく必要があるのではないでしょうか。

 

 

オビ コラムZUU 一村氏

筆者プロフィール/一村 明博

東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。

高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。

〈お問い合わせ先〉 info@zuuonline.com

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