次世代の産業を担う【中小企業】初めて明かされる秘話
日本再生の鍵を探せ 企業x学校物語

早すぎた発明

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【賢者に学べ!】

早すぎた発明

西郷国際特許事務所 所長/弁理士 西郷義美

 

Ⅰ.好機到来

A.物事には「タイミング」が重要である。時機を逸した物ほど無価値なものはない。

B.ところが、特許制度では、何しろ早く出願することが必須の要件であり、時を見計らって出すなどは有り得ない。

C.このジレンマに挟まれて、事業化に失敗し夫婦で命を絶った悲劇の発明者がいた。

D.あの、車についているエアバッグの発明者・小堀保三郎氏である。

 

Ⅱ.エアバッグの発明

A.小堀氏は、なかなかの発明家であり、技術者である。学歴は無いが、独学でいろいろ勉強した。

B.東京の港区三田に、新機種開発を目的とした「GIC(グッドアイデアセンター)」を設立。サンドイッチ自動製造機の開発などで数多くの特許を取得。1964年、独創的なアイデアのもと、自動車の安全ネットの開発を手始めとしてエアバッグの開発に着手した。

C.開発の際、技術的裏付けを得るために東京大学をはじめとして国公私大の教授陣や立川の防衛庁などの研究機関の協力を求めた。小堀氏が考案した「衝突時乗員保護のシステム」は衝撃加速度検出装置、弾性防御袋(エアバッグ)、気化ガス発生装置などで構成されていた。尚、このとき既に小堀氏は運転席、助手席、後席エアバッグに加え、側面のサイドエアバッグやルーフエアバッグも考案していた。

D.更には、乗員だけで無く、対歩行者安全装置も考えている。歩行者のバンパーへの接触を検出し、歩行者をすくい入れる歩行者用エアバッグである。

E.その結果、エアバッグ関連の特許取得は世界14カ国にも及んだ。

F.しかし、その時代の産業界や省庁の安全センスと早すぎ一致せず、また、火薬の使用が日本の消防法に抵触し、使用できず、日本でエアバッグが使用されることはなかった。

G.事業化は進まず、資金が枯渇し、1975年8月30日午前、GIC事務所内にて妻・艶子さんとともにガス心中により果てた。享年76才。

H.一方、欧米では1980年にドイツのメルセデス・ベンツがSクラスでエアバッグを実用化した。この後、世界各国で実用化が進み、日本も1985年にホンダ・レジェンドに採用され、今では殆どの乗用車に装着されるまでにその安全性の高さが認知された。

I.なお、早すぎた発明は他にもある。「燃料電池」、あの「自撮り棒」などいろいろある。

 

Ⅲ.それではどうすれば良いのだろう。何か打つ手は無いのか? それがある!「改良発明」をするのである。

A.つまり、意のままに「好機到来」状態を作り出す戦略である。

 1.上で見たように、「時」が味方してくれなくては成功しない。どんなに素晴らしいアイデアも、時代の先を行きすぎてしまっては、世間が受け入れない。とは言っても、時が来るまで待っていては、先を越されてしまい取れない。

B.そこで、特許権の存続期間を延ばせないか。これができたら、まさに、大発明。それができるのである。つまり、存続期間を超越するには、改良発明を出願すればよいのである。

 1.新しい時代には、新しい材料、新しい技術などが数多くある。これらの衣をまとわせ、再出発させるのである。

 2.例えば、オートマチック車に使う流体クラッチ(流体継手)の例がある。これなど、基本発明を取った会社は、切れそうになると次、また次と出願し、ほとんど永久的に存続期間を延ばす勢いである。

 3.前の特許が切れても、その特許権の実施許諾を得ていた自動車会社は、切れた古い特許権は使用したがらない。金を払ってでも、新しい特許発明を使いたがる。それは、新しい特許は、伝達効率などの性能がアップしているので、トータルでは得だからだ。こうして、基本発明を持っている会社は、長期間の安泰を得るのである。

 4.このような改良発明は、基本発明と利用関係になる。万一、他人にその改良発明を取られると、やっかいである。必死の努力で、自社で改良発明を取るべきだ。これにより、その業界を長期に支配することができる。自社の特許権を、存続期間を超越させ永久権とするのだ。戦略を極め、励むべきである。「知財IQ」を駆使し、王国を築くべき時は今だ。

C.戦略の余地あり!

 1.知財制度は、極めて複雑かつ難解である。知財が敬遠される原因がここにある。しかし、それだからこそ、「知財IQ」の高位者になれば、競合他社に水をあけることができる。さらには、複雑だからこそ、創意工夫によって、驚くべき使い方、戦略を生む余地が十分ある。どのように組み立て・使うかはあなたの頭脳にかかっている。これほどやる気を刺激されることは無い。切にご健闘を! 

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●筆者プロフィール/西郷義美

1969年 大同大学工学部機械工学科卒業

1969年-1975年 Omark Japan Inc.(米国日本支社)

1975年-1977年 祐川国際特許事務所

1976年10月 西郷国際特許事務所を創設、現在に至る。   

《公 職》

2008年4月-2009年3月

弁理士会副会長(国際活動部門総監)

《資 格》

1975年 弁理士国家試験合格(登録第8005号)

2003年 特定侵害訴訟代理試験合格、訴訟代理資格登録。

《著 作》

『サービスマーク入門』(商標関連書籍/発明協会刊)

『「知財 IQ」をみがけ』(特許関連書籍/日刊工業新聞社刊)

 

●西郷国際特許事務所(創業1975年)

所長 弁理士/西郷義美 副所長 技術/西郷竹義

行政書士/西郷義光

弁護士・弁理士 西郷直子(顧問)

事務所員 他7名(全10名)

〈お茶の水事務所〉

東京都千代田区神田小川町2-8 西郷特許ビル

TEL  03-3292-4411 FAX 03-3292-4414

〈吉祥寺事務所〉

東京都武蔵野市吉祥寺東町3-23-3

TEL 0422-21-0426 FAX 0422-21-8735

Eメール:saipat@da2.so-net.ne.jp

    saigohpat@saigoh.com

URL:http://www.saigoh.com/

 
◆2016年4月号の記事より◆

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