◆文:冨田和成(株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO)

 

 

オンラインとオフラインを融合させて売上アップを図る施策やサービスが誕生しています。日米の企業の事例をもとに、その現状と可能性を見てみたいと思います。

 

■GAP「リザーブ・イン・ストア」と無印良品の例

アメリカのアパレル小売「GAP」(ギャップ)は2014年から、オンラインストアで販売している商品の店舗での在庫状況を確認できる機能を追加しました。テストの結果を受けて機能を拡大し、気に入った商品を取り置きできる「Reserve in Store(リザーブ・イン・ストア)」を始めています。

日本でも無印良品が似たサービスを取り入れています。オンラインストアで検索した商品の実店舗での在庫状況がすぐ分かります。オンラインで注文して希望する店舗で受け取ることもできます。数百円の低価格商品一つでも対応しています。

このような仕組みは「オムニチャネル」と呼ばれます。顧客にとってのすべて(オムニ)の接点(チャネル)を境目につなぐ環境を作り上げることです。店舗でもオンラインでも購入でき、受け取り場所も店舗や自宅、コンビニにもできます。企業は販売機会を逃すことなく最大化できます。

 

最初に宣言し実行したのは、米国の大手百貨店メイシーズといわれます。一連の販売プロセスを一元管理するため、ITシステムの構築、社内組織の再編、販売するスタッフの理解と意識改革の教育に多大な投資を行いました。その結果、ロイヤルカスタマーが増え、在庫も劇的に圧縮。売場の効率化が進み、業績は見違えるように改善しました。

 

■セブン&アイも参入 オムニチャネルの本質とは

日本でのオムニチャネル関連のトピックといえば、セブン&アイ・ホールディングスがオムニチャネル「omni7」を始めたことでしょう。構想発表から始動までに時間がかかりましたが、2018年にオムニチャネルの売上高を1兆円とする目標です。

オムニチャネルとしてのブランドの確立と、扱う商品のバリエーションを考えた場合、omni7のロイヤルティーは何にもとづくことになるのでしょうか。

多様なカテゴリーと商品を扱うという点では、競合は楽天とアマゾンでしょう。楽天は約1億点という最大の品揃えと個々の店舗を超えた横断性が、アマゾンは約5000万点の商品の検索の利便性、リコメンド機能、アマゾンプライムでの顧客満足など、ブランドと便利さの両方を既に確立しています。

 

omni7はこれらの点で対抗する必要があります。2018年度には約600万品目の品揃えを目指すとしていますが、それでも楽天とアマゾンに見劣りしていることになります。

スタートしたばかりのomni7にとっての課題は、便利で魅力的なポータルとしての「ブランド」を早く、強く確立すること、それを支える顧客の便利さと期待に応える機能、マーケティングとして潜在顧客の掘り起こしや認知の獲得などでしょう。

 

オムニチャネルの本質と差別化のポイントは、「顧客にとって便利で魅力的」であることに尽きるのではないでしょうか。便利で魅力的なブランドとして認知されるとともに、ロイヤルティーを高める仕組みやサービスを提供することです。

在庫管理や販売チャネルの境目のないシステムの構築、商品の多様性などは、実はそれらを支える企業側の技術的な側面にすぎないのです。

 

ZUU

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ZUU冨田写真(内)

筆者プロフィール/冨田和成

神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。

 

 

〈お問い合わせ先〉 info@zuuonline.com

 

2016年1月号の記事より
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