中小工務店がハウスメーカーやパワービルダーの真似をする必要はない理由とは?
中小工務店がハウスメーカーやパワービルダーの真似をする必要はない理由とは?
◆文:出口経尊(有限会社ウイン)
増税、金利上昇、人口減少、空き家問題等で10年後の2025年には新築着工棟数が現在の89万戸から62万戸わずか10年で約2/3に減少すると言われています。
実際に注文住宅はそこまで減らないという話もありますが、省エネ等の基準が厳しくなり、品質やサービスの要求も高くなります。中長期戦略を持たない中小の工務店にとっては厳しい将来が見えており、弱肉強食の時代になるのは明らかです。
ところが、全て状況が悪いかといえば、そうではありません。こだわりを求めるニーズには大手は対応できないでしょうし、採算が取れない支店は撤退していきます。また、リフォームは政府の後押しもあり市場が活発になってきます。
厳しい時代というのは、好景気のようにひたすら目の前のことをこなすのでは衰退していきますが、少し先を見て努力や進歩を続ければ、次第にファンができ、ライバルが減り、地域で地位を確立できるのではないでしょうか。
今後、景気などの環境に依存する経営から脱却できた会社が生き残るのではないかと思います。
原点回帰、工務店は地域で必要とされる存在へ
既に明暗が別れつつありますが、中小零細工務店でも紹介やリピーターが絶えない繁盛しているところがあります。今回はそのような会社の事例に基づいたキーワードを5つご紹介します。
- 1.灯台下暗しから、灯台下照らしで身近な顧客創出
- 2.戦略的、継続的な広告宣伝で無駄遣い解消
- 3.一番に思い出してもらうための接触方法と回数
- 4.ハガキ一つで縁遠いOB客を気楽に訪問しリフォームを受注
- 5.未来預金の考えで自動的に仕事が入る仕組み
その中で今回は、1について掘り下げていきます。
灯台下暗しから、灯台下照らしで身近な顧客創出
契約獲得のために、やたらとエリアが広がっていないでしょうか?
地図上に顧客をマッピングすると、てんでバラバラということはないでしょうか?
例えば、遠方で無理して受注すると、直接的には交通費や時間を浪費し利益に影響を与えます。間接的には、他の顧客や現場に手が回らなくなり、結果、悪循環の原因となりかねません。
インターネットの普及で紙媒体と違い、広範囲で広告宣伝ができるようになり、今まで出会えなかった人達が見込客となる時代になりました。ただ、建築業界の仕事は現場ありきなので、物販のようなネット販売はできないので距離の限界があります。
そこで、検索キーワードにエリアを入れることである程度絞ることはできますが、同県隣県などからは引き合いが来る場合もあると聞いています。
そこから、受注が厳しいからと無理して請けてしまうと先ほど触れたように後で痛い目に合います。弊社がコンサルティングしている工務店でも以前は集客活動をしていなかったため、ホームページからの受注が頼りでした。
ただ、商品と低価格がウリだったため、時代と共に埋没し受注が難しくなりました。さらに聞かせてもらうと当時は30km以上離れた問い合わせ先へ出向き、最後のクロージングでは100万円以上値引きして受注していたそうです。
確かに仕事をやっている気概と現場がある安心感は得られるでしょうが、利益は残るどころか赤字だったそうです。それでは企業として存続できません。
そんな厳しい中、弊社にご相談いただいた訳ですが、ヒアリングすると先代から65年以上続いている工務店で近隣にはOB客が沢山いらっしゃいました。
ところが、親への反発精神からか、あえて違う路線を選び置き去り状態、当然その後は他社でリフォームや建て替えするパターンでした。しかし、背に腹は代えられぬ経営状態だったため、まずはOB客のリスト化から始めてもらい、勇気をもって訪問してもらいました。
ここでは省略しますが訪問を気楽にするコツも合わせてお伝えしました。
結果、3カ月で400万円、650万円の大きな受注もあり、私も驚いた次第です。結局は、やれば結果が出たのにやってなかっただけでした。その後、その社長はご存命の父親である会長とOB客へ同行訪問し、今は少なくなった本物の家づくりと顧客との関係性に社長は涙したそうです。
もしかしたら親子関係の修復が経営状態の改善に繋がったかもしれません。現在は、近隣を中心に根の張った営業活動を行い、毎月進捗状況の確認や計画を一緒に立てさせてもらっています。
地域で長く支持を受けるためには、ご縁のある方へどのようにすればお役に立てるかを考える習慣が大事ではないかと思います。
そこで先日、灯台下照らしの考えに基づき、弊社の顧客である横浜市の地域密着工務店でコミュニティを作る一環として、相続専門の税理士である増田倫洋先生を講師としてお招きし、相続の勉強会を開催していただきました。
知りたいけど聞けないホットな話題である相続と、工務店の日頃からの信頼関係の相乗効果で、23組に案内して13名お越しいただき、その後の有料個別相談も6組申し込みをいただく大盛況となりました。当日の盛り上がりとアンケートからもお役立ち情報になったようで、チラシのプロデュースからさせてもらった我々も感無量でした。副産物として、その場でトイレの壁紙の張り替え依頼もあったようです。
そのようなお役立ちセミナーの開催事例を毎月1回、新宿または市川市本八幡で開催していますので、地域を大切にしたい工務店の方には参考になる内容です。(http://win-jpn.net)
因みによく聞かれるのですが、税理士の増田先生や相続診断士から工務店を飛び越えて一般の来場者へ電話営業や勧誘を行うことは一切ないのでご安心ください。
出口経尊 有限会社ウイン取締役、経営士、中小企業庁ミラサポ派遣専門家。
建設業を経て2000年7月設立以来、工務店、建材卸業など建築業界の事業相談件数は600社以上。集客~アフターまでの業務支援を行う。
サッシメーカーからの特命で流通店のコンサルティング、首都圏で工務店対象にセミナー講師等を務め、見込客やOB客が集まる地域密着の繁盛店をつくる『紹介・リピーター創出コンサルタント』
香川県在住、1年の半分以上は出張生活を過ごす。