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ノーベル賞特許について

 

オビ コラム

ノーベル賞特許について

◆文:西郷義美(西郷国際特許事務所所長・元弁理士会副会長・国際活動部門総監)

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(写真=pixabayより)

 

ノーベル賞おめでとう。2015年のノーベル賞が決まった。10月5日には生理学・医学賞に大村智・北里大学特別栄誉教授(80)が、6日には物理学賞に梶田隆章・東京大学宇宙線研究所所長が選ばれ、2日続けての朗報に日本中が沸いた。

 

大村さんの進め方は、「特許→金を生ませ→研究を続ける。経営の手腕。生き残り」というものだが、その口癖は「研究は経営だ。経営を研究する人は多いが、研究を経営する人はいない」である。

つまり、研究成果で社会貢献すれば特許収入などが入り、次の研究が続けられる。最初は苦労したが、何とかこの循環を築いた。大村教授は日本の産学共同研究の開拓者である。人生に、金はついて回るので、すばらしい方式である。

有益な物質を発見し、活用方法を特許化し、使用権を企業に与えて製品販売にともなう特許料を受けとる「大村方式」を創設したのだ。大村教授の経営手腕はたいしたものである。

 

北里研究所の副所長に就き、財政再建に努め、特許収入で病院も新設した。90年に所長になると、借入金ゼロで運営する仕組みを導入。さらに、研究所のマネジメント体制を一新し、ワクチン製造、病院、研究、東洋医学の全4部門にそれぞれ独立採算制を導入した。四半期ごとに4部門の役職員を一堂に集めた会議を開き、情報共有と効率化を進めた。

メルク社がイベルメクチンを元にした治療薬「メクチザン」の無償提供を開始したニュースが掲載されている。

 

ざっくり言うと大村教授は、数千億円相当の特許権を放棄していたのである。当初、年に1度の投与で済む劇的な効果を持つ動物薬として大きな注目を浴びたイベルメクチンだが、人間にも応用できることがわかり治療薬「メクチザン」が開発された。

その後、世界保健機構(WHO)を通じてアフリカや中南米、東南アジアなどに無償・低価格で提供され、沖縄を含む熱帯地域に住む人々述べ10億人以上を風土病などから救った。が、なぜ無償提供が実現したかというと大村氏だ。

行動が表わす彼の「人間力」も相当なものだが、数々の発言から見える誠実な人間性も多くの支持を得る理由の一つ。ノーベル平和賞を受賞してもいいのでは?なんて声が上がるのも、なんら不思議なことではない。

 

ポリ袋とともに、ふだんから肌身離さず持っているのは、15年前に亡くした妻の文子さんの写真だ。受賞後も、まず文子さんを思い、心の中で「もらいましたよ」と報告したという。常に小さなビニール袋を持ち歩き、土の中の微生物を採取していた。

この過程で74年、静岡県のあるゴルフ場の近くで採取した土壌から未知の抗生物質を発見した。寄生虫による伝染病に特効があるエバーメクチ(avermectin)だった。

 

特許制度説明  医薬品特許の特異性。ライフサイエンス関連分野

ライフサイエンスは人間生活の基本である「生命・健康」、「食糧」、「環境」に深く関わる技術分野であり、予想もされない新しい技術が登場し、そこから新しい産業が創出される可能性が高い。特許として、極めて重要な分野である。

ライフサイエンスの特許的歴史は、1970年以前は生物化学時代で、自然界の生物およびその生物の成分を分析して有用なものを利用する程度であった。それが、遺伝子工学、さらに遺伝子産物である蛋白質の機能解析や、人間の組織や臓器に分化する多能性幹細胞の作製技術、再生医療、創薬研究への応用が期待される時代となってきた。

いわゆる「医療行為」、つまり、人間を手術、治療または診断する方法は特許保護の対象外である。政策的理由や緊急の対応の可能性があるにもかかわらず、特許権者の許諾を求めなければならないとするのは不当であるとする人道的理由があげられる。

医薬品や医療機器は「物の発明」や「方法の発明」として特許保護の対象となる。医療行為については、米国で認められていることもあり、日本でも特許保護についての是非の議論が活発に重ねられたが、現状では、保護するという結論には至っていない。

 

微生物とは、酵母、カビ、ウイルスなどをいう。そして、第1に、微生物をただ発見しただけでは、特許にならない。特許を与えられるためには、人為的に抽出され、産業有用性のある機能が解明されている必要がある。第2に、それらの発明をとおして、人類の健康や食物増産、環境保護などにつながる必要がある。

 

オビ コラム

西郷義美 西郷国際特許事務所 (2)

西郷義美(さいごう・よしみ)…1969 年 大同大学工学部機械工学科卒業。1969 年-1975 年 Omark Japan Inc.(米国日本支社)。1975 年-1977 年 祐川国際特許事務所。1976 年 10 月 西郷国際特許事務所を創設、現在に至る。

《公職》2008 年 04 月-2009 年 03 月 弁理士会副会長、(国際活動部門総監)

《資格》1975 年 弁理士国家試験合格(登録第8005号)・2003 年 特定侵害訴訟代理試験合格、訴訟代理資格登録。

《著作》『サービスマーク入門』。商標関連書籍。発明協会刊 / 『知財 IQ」をみがけ』。特許関連書籍。日刊工業新聞社刊

西郷国際特許事務所(創業1975年)

所長 弁理士/西郷義美 副所長 技術/西郷竹義

行政書士/西郷義光

弁護士・弁理士 西郷直子(顧問)

事務所員 他7名(全10名)

〒101-0052 東京都千代田区神田小川町2丁目8番地 西郷特許ビル

TEL : (03)3292-4411(代表) ・FAX : (03)3292-4414

Eメール : saipat@da2.so-net.ne.jp
Eメール : saigohpat@saigoh.com

http://www.saigoh.com/

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