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『課題発見力』 ‐ 超訳『社会人基礎力』Vol.4

 

オビ コラム

超訳『社会人基礎力』Vol.4

『働きかけ力』 海外生活経験者というブランド人材活用のススメ

◆文:鈴木信之(株式会社エストレリータ)

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2005年経済産業省(以下、経産省)において、官僚・学者・企業人事の方々が議論し、定義されていった『社会人基礎力』(=組織や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力)。

10年経った現在、「これからの日本にとって12の社会人基礎力はどんな意味をもつのか?」、そして「12の社会人基礎力を身に付けるためにはどうしたらいいのか?」について、海外生活に挑戦する日本の若者のキャリア支援を、起業以来8年間でのべ29,000人超に提供してきた株式会社エストレリータ代表の私、鈴木信之が、改めて、この『社会人基礎力』の超訳(再定義)に挑んでみたいと思います。

企業経営者の皆さまには人材育成や人材採用の観点から、そして、子を持つ1人の親としてはご自身のご子息・ご令嬢への教育の観点から、“これから”を考える1つの契機としていただければ幸いです。

 

【第4回】課題発見力

今回は第4回目。『課題発見力』について考えていきたいと思います。

『課題発見力』:現状を分析し目的や課題を明らかにする力(経産省の定義)

「現状(As-Is)とあるべき姿(To-Be)との間にあるギャップを見出し、曖昧であったあるべき姿そのものや、あるべき姿に向かうことを阻んでいる課題を、明確に言語化(可視化)していく」ということですが、〝問題〟発見ではなく、〝課題〟発見であること、そして、課題〝解決〟ではなく、課題〝発見〟であることが、まさに今の時代を映し出しているのかもしれません。

まず〝問題〟と〝課題〟の違いを明確にしていきましょう(図)。

 

エストレリータ

〝問題〟は「今要求されているレベル」より「現状」の方が下回っていることを指し、原因の除去に当たらなければならないものです。原因は過去に存在しているので、【過去志向】であり、定量的な計測も可能なことが多いものです。企業では、非管理職がこれに対応していくのが普通です。

 

一方、〝課題〟は「あるべき姿」と「現状」の間にあるもので、【未来志向】であり、その「あるべき姿」に近づけるための方途・方策を検討していくことが必要です。計測に必要なモノサシ自体も新たに創造しなければならないことが多く、企業では、管理職がこれに対応していきます。

【過去志向】の〝問題〟であれば経験・体験の蓄積が武器となりますが、【未来志向】の〝課題〟には、過去の経験や前例主義だけでは対応できません。

 

さらに、課題〝解決〟と課題〝発見〟の違いも考えていきましょう。

第1回の主体性でも述べましたが、これまでの日本の教育は、「課題解決型の人材を育成する教育」だったので、高度成長期のような〝課題が明確な時代〟には、この人材が最適な解法を見つけ出し、スピード感を持った発展を築いていきました。

しかし、低成長・無成長時代に入った今、変化が著しく速く、先行きが不透明な世の中では、課題そのものも明確ではありません。簡単には「あるべき姿」「進むべき方向性」が浮かんではこないのです。〝昨年まで〟の方程式が全く当てはまらない〝今年〟が繰り返されるのです。この時代にチカラを発揮するのが課題発見型の人材なのです。

 

では、課題発見型の人材に必要な要件とは何でしょうか? 私が考えているものは5つあります。

 

1つ目は「ゼロベース思考(=常識・前例に囚われない自由な思考)」。

前例、当たり前、これまでの常識などは、本当の〝課題〟を発見する際、目を曇らせてしまうことがあります。すでに決まっている〝所与の条件〟と信じ込んでいるものすら疑い、いかに「ゼロベース」で物事を捉えられるかが重要なのです。

 

2つ目は「興味や好奇心」。

〝課題〟を発見するためには、〝課題〟が存在する社会そのものへの興味・関心・好奇心が必要不可欠です。飽食の時代、モノが溢れるにつれ、興味や好奇心のチカラが弱くなってきているとも言われていますが、興味・好奇心がなければ、〝あるべき姿〟を見つけ出したいというモチベーションは生まれません。

 

3つ目は「視野(スコープ)の広さ」。

異質のモノの中で、また、それが〝ある〟世界と〝ない〟世界を比較することで、〝あるべき姿〟が浮き彫りになってくることがあります。これまで国産の情報と国産の手段のみで捉えてきたモノに対して、地球的な視野で見直すことによって、全く姿を変えて私たちの前に現れることもあります。1つ目のゼロベースにも繋がることですが、〝あるべき姿〟を考える過程で、視野のバリエーションという〝在庫〟が大きく役立つのは間違いないと思います。

 

4つ目は「歴史観」。

【未来志向】と定義した〝課題〟ですが、全く過去を切り離して考えられるかというと、それもまた違います。ゼロベースで組み立てた〝あるべき姿〟を、過去の歴史観、そこに培われた価値観や文化で検証しなければなりません。〝課題〟を発見するのも人ならば、〝課題〟に取り組んでいくのも人だからです。人は(またその集合体としての民族は)持っている価値観や背負っている文化、脈々と流れているDNAにより行動を選択するものです。その視点が欠けている〝あるべき姿〟は決して達成されることのない〝絵に描いた餅〟でしかないのです。

 

最後の5つ目は「危機感」。

2011年アメリカ・デューク大学の経済学者キャシー・デビッドソン氏によると、「2011年にアメリカの小学校に入学した子供たちが就職する時、子供たちの65%は今この世に存在していない職業に就く」そうです。同様のレポートはオックスフォード大学からも、グーグル創業者のラリー・ペイジからも出されています。そしてこれは日本にも当てはまると言われています。

今やっている仕事の多くは、近い将来、人に代わってコンピューターやロボットが受け持つことになり、雇用の受け皿として、全く新しいビジネスを創造していかなければなりません。〝今まで通り〟は、もはや過去のモノなのです。

その危機感の中で、それでも人間様がやっていくべき仕事とは? 創っていくべき世の中とは? 今携わっていることの〝あるべき姿〟とは? …と考えていく必要があるのだと思います。

 

では、問題発見力の育成を進めていくためにはどうしたら良いのでしょうか? 私は次の3つが大切と考えます。

1つは「前例に囚われないユニークな発想を受け容れる」新しい企業文化です。高度成長期を支えてきて下さった先達たちを否定する訳ではありません。そこに蓄積された経験と、年齢や社歴や経験とは無関係のユニークな発想とを掛け合わせることで、素晴らしいケミストリー(化学変化)が起こってくるはずなのです。

ユニークな発想の〝発信者〟には過去の経験の中で検証することが、そして、成功体験と前例を強く持つ〝受信者〟にとっては敢えてその体験・前例からモノを決めつけない忍耐力・受容力が必要なのです。

 

そしてもう1つは、二者択一からの脱却です。課題に直面すると人はそれを、トレードオフの関係(どちらか一方を取ると他方を諦めなければならないという関係)と決めつけてしまうことが多々あります。「コストの抑制を重視するとスピードは期待できず、スピードを重視するならコストの増大は避けられない」というようなものです。

この時、どちらも同時に達成できる方途・方策が本当に存在しないのか?と考え続けることで、〝止揚(アウフヘーベン)〟が生まれ、真の〝あるべき姿〟に辿りつくことが出来るのです。

 

最後の1つは、皆が〝課題〟と考えていることが、本当に〝真の課題〟なのか今一度疑ってみること。〝真の課題〟は〝課題〟という顔をして現われてくれないことがほとんどです。健全的な〝批判的思考〟が真犯人に辿りつくことを助けてくれるかもしれません。

 

企業人事としては、今ここに無い〝様々な視点〟を世界中から仕入れてきている海外生活経験者たちを、社内で培われた常識・前例から抜け出してイノベーションを起こしていく素晴らしい〝触媒〟として採り入れることを考えてみてはいかがでしょうか。

そして1人の親としては、コンピューターやロボットが人間の〝課題解決力〟のほとんどを代行してしまう前に、彼らでは出来ない〝課題発見力〟を身に付けさせるため、〝健全に常識を壊す旅〟〝当たり前から抜け出せる旅〟を、ご子息・ご令嬢に贈ってあげてはいかがでしょうか? 〝新しい世界(時代)の住人〟となるために。

 

 

◉超訳『社会人基礎力』その4:課題発見力

〝今まで通り〟がほとんど通用しない社会に強い好奇心を持ちながら 【ゼロベースな思考】と【グローバルな視野】で〝あるべき姿〟を描き その〝姿〟と現状とのギャップを埋めるものを言語化・可視化し共有していくこと

 

〈Information〉

株式会社エストレリータでは、海外生活経験者だけが登録できる【Est Navi】という採用サイトを運営しています。利用できるのは、“超・採用難時代”に大きな不利益を被りながらも果敢に挑み続ける中小ベンチャー企業のみ。

ご興味のある方は ml@estrellita.co.jp または、☎03-5348-1720 までお問い合わせ下さい。

 

オビ コラム

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代表取締役社長 鈴木 信之(すずき・のぶゆき)

1972年9月6日生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。中学受験の老舗企業「四谷大塚」で講師人事・企画を担当。次に当時〝世界のBig5〟と言われたデロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。HRコンサルタントとして、吸収合併した会社の事業再生や子会社の人事部長として実績をあげる。その後、パソナグループの子会社パソナテックに入社。人事統括や企画責任者を歴任。大手企業の採用コンサルティングや大学でのキャリアセミナー講師を担当。2007年7月に人事コンサルティング企業エストレリータ設立。企業での研修・セミナーや大学などでの講演は年間200本超。日本に99名しかいない国家資格・一級キャリアコンサルティング技能士の1人(2015年5月現在)。

株式会社エストレリータ

〒164-0003 東京都中野区東中野3-8-2 矢島ビル4F

TEL 03-5348-1720

http://www.estrellita.co.jp

https://www.est-navi.jp/

 

2015年9月号の記事より
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